#75 誰かがやったことなら、自分にもできる(物作り日本の原点)
ペリーが浦賀に来航した1853年。日本中は大騒ぎになります。見たこともないような大きな船が来たのですから!日本の船とは比べ物になりません。「あんな黒船がやってきて、大砲ぶっ放したらどうなるんだ・・・」しかし、当時の日本人が黒船を見て「コワイ」と思ったことは現代人の私たちにも大体想像つくと思いますが、それだけではなかったのです。そこが私たち日本人の先祖の凄かったところです。
コワイ」だけでなく、『自分たちにもにもできる・・・』と思ったのです。異国人にできたのなら、私たち日本人にも作れるはずだ」と考えたのです。
私たち、日本人の先祖の考え方に大きな背骨が二つあると言われています。
「誰かの利益のために一生懸命やらなければならい」
もう一つは、「誰かがやったことなら、自分にもできる」という考え方です。
日本人は、いつでも「誰かがやったことなら自分にもできるはずだ」と考えていました。それは、歴史上の事実がはっきり証明しています。
たとえば、ポルトガルから鉄砲が種子島に漂着すると、その鉄砲を分解してつぶさに観察して、2年後には鉄砲を作ってしまい、7年後にはそれを大量生産し、1580年代には日本は当時世界一の鉄砲大国になっているのです。
日本は黒船の来航を契機に、開国へ舵を切りましたが、その3年後には蒸気船を作っているのです。図面もないのに。でもその1年前に、薩摩藩がすでに作っていました。でも、これはあまり走りませんでした。1ノットぐらいでヨタヨタって走って、蒸気機関がボッ~!って爆発してすぐに壊れてしまいました。その少しあとに、鍋島藩(佐賀)が自分たちの技術だけで作ってしまったのです。しかも、鍋島藩のお殿様が「あれ作れ」って言っただけで家来が作ってしまったといわれています。
しかし、その3年後に四国の宇和島藩も作りました。宇和島藩のはもっと劇的でした。宇和島藩の当時の大名は伊達家でした。たまたま、伊達の殿様が参勤交代で品川を通りかかった時、みんなが騒いでいるので「何の騒ぎじゃ・・・」と見に行ったら、黒船がボ~ンってと停まっていました。それで、この殿様はそばにいた側近に「余(予)もあれがほしいのぉ・・・」と言ったそうです。そして、その側近が「ははぁ~」って言って、宇和島に帰り、家老と話し合ったそうです。
「殿が黒船を欲しいそうじゃ・・・」
「なるほど・・・」
「誰ができる?」
「当藩には器用なものがおります・・・嘉蔵(かぞう)という者がいます」
「なにをしている者だ・・・?」
「ちょうちん張りの職人でございます。これが中々器用ですので、多分できると思います」って。これ本当の話です。そしてわずか4ヶ月か5ヶ月で、嘉蔵は蒸気機関を作ってしまうのです。要するに「車輪をつけて走る箱」を作ってしまったのです。「お前は大したもんだ!」って褒められて、「では、次は黒船を作れ!」って言われて、それから2年半で黒船を作ってしまうわけです。もちろん、ひとりではなく、大村益次郎という長州藩士と一緒にです。大村益次郎が理論的なことを教えて、嘉蔵がそれを実現していったようです。
しかし、唯一どうしてもできないものがありました。それは、「タービン」です。蒸気機関のタービンです。なぜか何回やっても蒸気が漏れてしまうのでした。「どうしたもんだ・・・」って、悩みに悩みました。それでもそこで、嘉蔵らはあきらめなかったのです。
その根底にあったのが、
「だって、異国の人が作ることができたのだから、自分たちにも作れるはず。」
という心の背骨だったのです。
そんな時、たまたま長崎に黒船が入ってきたという情報を耳にしました。そこで、大村益次郎と嘉蔵は二人で長崎に行きました。そして、黒船に乗せてもらっています。
嘉蔵はどうしたか・・・自分が作っても作れなかったタービンに直接触って、そこで気づきました。
「鋳物(いもの)じゃダメだ・・・」
「鋼(はがね)だ・・・」
そして、戻ってきて、鋼でタービンを完成させて、船に乗せて、ついに黒船が完成しました。それを見た殿様がまた言いました。
「ほんとに走ってる・・・」
嘉蔵は一言。「あたりまえです」って言ったかどうかは分かりません。(笑)
当時、黒船はアジア中に来航していました。アジアの人々はそれを見てみんなおびえました。でも、日本人だけが「自分たちにもできる」って思ったのです。その「日本人の魂」が今の日本の物作りの原点なのです。
「自分にもできる」と思っている人は、諦めなければ、きっとできるようになっていくのだと思います。逆に、「どうせ、自分なんてできるわけがない・・・」と思っている人も、やっぱり思った通りになってしまいます。そういう思いが心の底にあれば、いつまでたっても、どんなことをしてもできません。
今までに自分が経験したことのないことに出会った時に、「自分にもできるはずだ!」と思うか、「どうせ自分になんてできない…」と思うか。…この違いは大きいと思います。
この日本人の魂、きっとあなたにも備わっているはずです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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