ふと気になったことがあったので、日本では年間どのくらいの人が自殺しているのか調べてみました。一番多かったのが平成15年(2003年)の34427人でした。令和になってからは3万人は割っても2万人台をキープしたまま今年に入っています。(厚生労働省自殺対策推進室調べより)統計を見る限り、自殺者は減少していますが、これが限りなく0になって欲しいと願ってやみません。
私たちは生きる時代を選べません。人の歴史を振り返ってみると、出自(家柄)で人生が決まっていた人権なき時代、生きたくても生きられなかった戦争の時代、食べることさえ困難だった貧しい時代、そんな時代をくぐり抜けてやっと自由と平和と豊かさを手に入れることができる時代になったのに、ここで自ら命を絶ってしまってどうしたものかと私は思います。少し見方を変えれば苦しい現実を乗り越えるすべはいくらでもあるのではないでしょうか。
もし、この話を自殺する人が読んでいたらという短編小説を今日は紹介します。作者は朱川湊人「蒼い岸辺にて」という作品です。この話の主人公は、生きていくことがつらくて自分の部屋で睡眠薬を大量に飲み、自殺を図った20歳のさおりと言う女性です。以下要約です。
未来をゴミにしてしまうか、かけがえのない宝にするかは、どんなにつらくても生きていくことが大事なのですね。どんな未来が待っているか分からないけど、そこに希望を持ち生きていく方が断然おもしろいわけです。
自殺は人間だけがするものです。牛やぶたが自殺したなんてことは聞いたことがありません。なぜなら牛やぶたは生きることの意味や希望を持っていないからだと思います。人間だけが自分が生きることの意味を考え、希望を持つことができるから、逆に絶望することもあるのです。だから自殺をしてしまうのかもしれません。自ら命を絶つということは、自分にとっての未来がすべてゴミになってしまうということを心の片隅にしまっておきたいものです。
最後に男がさおりに言った言葉です。
「でも忘れちゃなんねぇのは、勝手にうまい話が、向こうから転がりこんで来てくれるわけじゃねぇってことだ…どれもこれも、しょせんは卵に過ぎねぇんだからな。育てないと孵らねぇんだよ。」
最後までお読みいただき、ありがとうございました。