「直虎」は「ベルばら」である! 政次アンドレ一生の、直虎オスカルへの報われない愛 切ない片思いにキュン死続出

 NHK大河「おんな城主 直虎」は、胸キュン満載のドラマだ。6月25日放送の第25話では、病に倒れた主・直虎(柴咲コウ)の頬に、家老政次(高橋一生)が触れた場面でキュン死する女子が続出。女心をつかむ理由の一つは、「ベルばら」に通じる構図ゆえ。政次=アンドレの、直虎=オスカルへの、一方通行の切ない恋物語にキュンキュンするのだ。気付いていました?

 設定もベルばらに通じる。直虎もオスカルも男装の麗人で、自由で奔放。アンドレ政次は、そんな彼女に子供の頃から遊び相手として仕えてきた。密かに思いを寄せ、影のように付き従う。だが直虎オスカルの心は直親(三浦春馬)フェルゼンのもの。身分差もあり、政次の愛は決して報われることはない(はずだ)。

 それでも、永遠の愛と服従を誓う政次は、敵を欺き直虎を守るために嫌われ役すら買ってきた。敵対と見せて実は味方だったことは第18話で直虎に気付かれる。「政次は誰よりも井伊を思っている」と。いやいや、思っているのは、本当は、井伊ではなく直虎なのだが。自分へ向けられた深い愛に鈍感なところも、直虎=オスカルっぽい。

 その後、盗賊の頭領(柳楽優弥)なぞに現を抜かす直虎に、やきもきする政次。領民の手前や、他の領主や今川との関係などと様々な理由を持ち出し、理路整然と頭領を遠ざけるべく直虎を諭す。いや、それって嫉妬でしょ。かわいいぞ、政次。

 直虎が無茶をするたび心配し、仕方なさそうにため息をついて受け入れる政次(このため息がまたカワイイ!)。彼はいつも受け身だ。どんな直虎だろうと無条件で受け入れ、支える。「井伊のため」と言い訳しながら。時に窮地を救い、時に施策の実現を側面支援する。誰にも知られずとも陰になり日向になって、忠臣の衣の下に思慕をひた隠して。

 その政次が、ついに直虎に触れたのが25話だ。狭い寝所に二人きり。高熱で倒れた直虎の枕元、手を伸ばせば届くところに想い人がいる。この設定だけで十分エロチックだ。政次ファンとしては、今だ、チャンスだ、キスでもハグでもしてしまえ!と言いたくなる。

 だが冷静沈着、酷薄を装う政次は、ほとばしりそうな想いを押し殺す。それでも、目を閉じている直虎には表情を見られないと油断してか、つい頬に触れてしまった。普段は感情を読み取らせない男の目に、愛情があふれる。切ない。つらい。政次、頑張れ。

 ここで直虎が安心しきってリラックスしているのもまた、政次ファンには憎い。気づけよ!安心するなよ!報いてやれよ!いや、両想いなんてあり得ないし、そんなことは政次も望んでいないのだが。

 ただ、直虎はこの時、ひっそりと影のように自らを守ってくれる政次の存在の大きさを実感したに違いない。家来とはいえ、信頼する相手にすべてを委ね、包まれていられる安心感。この関係性もまた、オスカルとアンドレに似ている。信頼でき、守ってくれる男がいるからこそ、女は死力を尽くして戦えるのだ。

 オスカルは最後の最後に、自分を支え、大きな愛で包み込んでくれるアンドレの存在の大きさに気付いた。そして知らず知らずに彼を愛していたことにも。二人は結ばれるが、その後すぐアンドレが、そしてオスカルも戦場に散った。

 直虎と政次はどうなるのだろう。おそらく、ベルばらとは異なり、政次の思いは報われないまま終わるに違いない。それでも、プラトニックに思い合う二人の精神的な絆は、より深まるのではないか。

 政次ファンとしては、政次アンドレ高橋一生がちょっとだけ報われる場面を、これからも時々、入れてほしいものだ。切ないキュンキュンを味わいたいです。

(2017・6・29、元沢賀南子執筆)

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