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保育園の働き方を考えるうえでどうしても伝えたいこと

社会保険労務士法人ワーク・イノベーション代表の菊地加奈子です。これまで大学生のインターン生が更新してくれていたnoteを引継ぐこととなりました。ということで、初回は私自身の自己紹介と、保育園の労務管理を行っている私たちの法人の思いを綴ってみたいと思います。

私自身についてです。横浜で社会保険労務士法人ワーク・イノベーションを運営しています。メンバーは18名(うち社労士有資格者が10名)、いろんな業種の労務顧問をしている中で、最も多いのが保育園。北海道から沖縄まで、たくさんの保育園・こども園と関わっています。そしてグループ会社として保育園の運営にも携わっています。プライべとでは子どもが6人。高校2年生から2歳になったばかりの子まで、1男5女を育てる母親でもあります。
 10年近く前でしょうか。社労士として開業しながら4人目を妊娠したことを機に、自分自身のキャリアや女性としての心身の健康、そして何より子どもたちの成長を考えたとき、保育園をつくってみたいという衝動に駆られました。そこからは保育園の経営者としての立場、そして保育園を利用する親たちの働き方をデザインする社労士という立場、さらに一人の親としての立場で奔走してきたわけですが、いろんな視点、いろんな角度で保育園と向き合う中で、私の原点であり専門分野でもある労務の部分、「保育士の働き方」こそがすべての突破口だな、と思うに至りました。この「働き方」は、単に業務改善をするとか休みやすくするとか、残業させないとか、そういう形式的なことだけではありません。

保育士の働き方と向き合ってみて見えたこと

いま、「保育士の働き方」というものに関心が高まってきています。保育士が元気でなければいい保育なんてできるわけがない、私も心からそう思います。好事例集もたくさん目にするようになりましたし、採用アピールでも働き方を第一に掲げる施設がとても増えてきました。
 ただ一方で、私たちのもとには未だにとても根深いご相談が絶えません。しかもその内容は、世の中でよく耳にするような問題とは少し異なってるのも特徴です。
 

残業代を払ってもらえない、人間関係がひどすぎる、休憩も休みも取れない、園の方針が保護者ファーストすぎて子ども主体の保育とは程遠い・・・

まず、こちらはよく耳にする問題。保育士さんたちの面談の中でもよく相談されます。国民全体の共通認識であると言っても過言ではないでしょう。
次に、私たちの事務所に寄せられる相談というのが、

・保育士さんたちの給料を上げても上げても「ほかの園はもっと高い」「なんでこれしかもらえないんだ」と言われてしまう。ここ数年で人件費率が上がり続けて経営にも影響が出てきた
・子どもへの不適切保育を指導したらパワハラだと言われ、メンタル不調を理由に休職してしまった
・何度指導しても不注意が続いて、このままだと危険。それでも雇い続けて育てなければいけないのですか?

見ても分かる通り、経営者側からのご相談になりますが、こうした問題はなかなか表に出にくいなと感じます。個人の経営者が「うちの園はこんな問題がある」なんて言った途端にマイナスイメージになりますし、保育士という職業そのものを否定するような言動はなるべくしたくないという気持ちもはたらくからだと思われます。

問題に向き合わなければ保育はいつまでも良くならない

こんなにひどいブラック保育士がいる、ということを訴えたいのではなく、いわゆる保育士の問題行動は労務管理と表裏一体であることを知ってほしいのです。
 そもそもなぜこのような問題が生じるのかというと、目先の保育士不足解消にばかり意識が向いてしまって世間相場だけを参考に給与を決めてしまったり、労務に関する法律や制度の知識があやふやで誤った対応をしてしまったり、ということがほとんどです。ブラック保育園もブラック保育士も、労務管理の基盤ができていない中で生じることがほとんどで、その普遍的なところに目を向けず、業務改善やICT化、休憩休日の付与を強行しようとすると、大切な保育の質にも手をつけなければならなくなってしまいます(もちろん、日々の保育や行事の見直しが根本的に必要な園もあるようですが)。
 労基やユニオンに行けば未払い賃金の請求ができるようになるかもしれません。私も、保育士さん側からご相談を受けることも多いので、あまりにひどいケースはこうした機関をご紹介もしますし、争うご支援をすることもあります。でも、それによって当面の問題が解決するかもしれませんが、そうした手段を選ぶということは、歩み寄りや信頼関係の回復は見込めず、訣別の覚悟が必要であって、あくまでも最終手段であるということを肝に銘じてもらいます。そして、その施設とは決着がついたとしても、「何かあれば戦えばいい」という意識が染みついてしまって、なかなか内省したり前向きにキャリアを考えなくなってしまう「思考の偏りが生じるリスク」についても丁寧にお伝えしてします。この争いは、ブラック経営者を懲らしめるための争いではなく、あなたのこれからのキャリアを前向きに切り拓いていくための区切りであることを理解してもらう必要がある、そんな風に考えています。

私たちが伝えていきたいこと

これまでも、現に問題に直面された保育園からはご相談をたくさん受けてきていますが、潜在リスクを抱えている保育園にこの重要性をどう届けていくか、それが私たちの課題感としてつねにありました。

保育園経営者の方々は「働き方改革」という言葉は響くけれど「労務問題」「労務トラブル」という言葉は好きではないようだ。

当然ですね。私も経営者の一人として、問題が生じる前の前向きな環境において職員が反旗を翻すなんて想像もしたくないですし、あまりにも後ろ向きすぎる議論に感じます。
 でも、安全衛生に関するリスクマネジメントを考えてみてください。保育の価値を最大化するために、価値とリスクを天秤にかけながら対策を考えているかと思います。労務リスクもまさにこの視点が大切なのです。

〇子どもたちに木登りの経験をさせてあげたい。一方で木登りには落下のリスクが伴う。
〇夏祭りを開催したい。一方でコロナ感染リスクが伴う。

〇保育士に就業時間後や休日にもっと自主的に学んでもらいたい。一方で未払い賃金請求のリスクを伴う。
〇子どもに対する言動が気になる保育士を強く指導したい。一方でパワハラと言われるリスクを伴う。

このように、保育をより良くしていくためには、労務リスクと保育の質を天秤にかけて考えていくことがとても重要です。
 そして、そもそもどんなリスクがあるのかをもっと多くの保育園が知っていく必要があると思っています。

私たちの提供している保育イノベーションは、まさにこうした思いから生まれました。これまで正面から議論されてこなかった労務問題について、偏りなく解説していきます。

自園のリスクを知るために。

加奈子先生_セミナーバナー保育園の労務トラブル20210928

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