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今年も私たちの事務所は変化に富んだ1年でした。私たちの振り返りとともに私たちのことを少しでも知ってもらえたら幸いです。

1.私たちが今年取り組んだもの
2.事務所の体制の変化
3.「効率化」の先にあったもの
4.私たちがワークイノベーションを

1.私たちが今年取り組んだもの

保育分野においては全国各地の多くの認定こども園や保育所の労務管理に携わることができました。子どもの育ちと真摯に向き合う中で、「保育の質をより良くしていくには、単にマンパワー(労働力)に力技で頼るのには限界があり、職員のスキルや意識を上げていかなければならない。そのためには現状の働き方を見直していかなければ前進は難しい。」そんな声に真摯に応えてきました。
 保育を取り巻く環境も変わり、地域の医療・介護・障がいといった医療福祉の総合支援を担う法人や、事業承継の問題と向き合う法人、これまでの慣習の中で看過されてきた処遇改善等加算や労務管理の運用に対して内外からメスが入った法人など、事業の役割・体制・コンプライアンス、さまざまな課題が寄せられました。

保育分野以外では、顧問先様の上場企業同士の吸収分割という、とても大きなプロジェクトにも携わりました。それぞれの企業の賃金体系や福利厚生、退職金制度、社会保険や労働保険の統合、海外出向者の処遇、早期退職者の離職手続きなど、事務所メンバーとも何度も何度も議論を重ねながら時に大きな視点で時に地道に作業を行うことができました。
 また、1,000人規模の給与計算では、アナログだった作業を担当メンバーたちが工程を一から見直し、さまざまな労務相談を受けながら効率的な体制を構築しました。年末の共有発表で知りましたが、Excelをフル活用したミスを限りなくゼロにしつつ、これ以上ないほど効率性を追求した給与計算システムはただただ感嘆!手前みそですが、この人数では普通、ここまでのクオリティはなかなか出せないと思います。

2.事務所の体制の変化

職員数が15名程度であれば、何とか一人一人としっかり関係性を築くことのできる人数かと思いますが、今年は業務が次から次へと増え、さらに産休者が3名出たこともあり、思い切って人数を増やしました。コロナ禍から本格化したリモートワークメンバーもいるので信頼関係をいかに築くかが課題となり、コミュニケーションの取り方、ファイルの共有、育成、セキュリティなどの見直しが行われていきました。偉そうに書いていますが、こうしたことを提案してくれたのはほぼほぼマネージャーをはじめとする事務所メンバーたちで、本当に頼もしかったのですが、なぜか私はこの頃から無駄に眠れない日々が始まりました。
私がやるより何百倍も精度が高くて効率的なのでしょうけど、見えないからこその不安があったのだと思います。何百、何千名の社員を抱える社長さんから見たら鼻で笑われるかもしれませんが、地味な実務から事務所の看板を背負っての講演や執筆、事務所の大きな意思決定など、次から次へとやってくる中で任せることがどんどん増えていくということは、私にとってとてもとても大きな壁でした。成長段階でいうと、幼稚園児から小学生になるくらいなのでしょうけど、急に世界が広がる不安がありますからね。
 そんな中で、夏に忘れられない出来事がありました。上場企業の顧問先様の株主総会に出席させて頂いたのですが、何千名も社員を抱える社長が前に立ち、見知らぬ株主の質問に一つ一つ丁寧に答えていく・・・その背中に私はただただ半泣きになりながら、そして終わった後、社長が滝のような汗をかいてびしょびしょになったシャツを目の当たりにして、本当に本当に大きな衝撃を受けました。
 私たちの仕事は1人だろうと数千人だろうと、全社員のあらゆる状況(収入、家族構成、病気の有無、結婚や離婚や出産介護といったライフイベント…)を把握する立場にあるので、その人たちの人生に思いを馳せることができます。だからこそ、その背中がとても偉大なものに感じたのでした。今の私はそんな域に少しも達していないけれども、社員一人一人の人生をより豊かにすべき責任があるのは同じ。そうであれば、私がすべきことは何なのかをもう一度考えよう、そんな風に感じた瞬間でもありました。まだまだ模索中ですが、地道に形にしていきたいと思っています。

3.「効率化」の先にあったもの

コロナ禍をきっかけに「生産性向上」というキーワードを目にするようになりました。私たちもこれまでの丁寧な対面での支援の在り方を見直す第一歩として「保育イノベーション」のサイトをオープンしました。このサイトの目的としては、今の人数でより多くの保育園と関わり、より効率的に支援をしていく体制を構築するというところにありました。
 先に書いたように給与計算やメンバー間の連携というものについては相当効率化が図れている事務所なので、この保育イノベーションもきっとよいスキームができて量産体制が図れるかな、と期待をしていたのですが、どうも私の中でいつになっても腹落ちせず、メンバーとの話し合いも二転三転…方向性がなかなか出せずにいました。時間が経過する中で少しずつ見えてきたことは、結局私たちは地道に真摯に、誠実に対応することで実績や信頼を積み重ねてきたのだということ。
給与計算や事務的なことはどんどん効率化すべきですが、効率化すべきでない大切なものもたくさんあって、そのすみ分けを決して誤ってはならないのだということに気づかされました。事務所のメンバーが「この顧問先、なんて素晴らしいのだろう」と思ったら業務を飛び越えてインタビューに走るとか、ひとつの顧問先について4人5人で何時間もディスカッションするとか、気になる顧問先では必ず職員一人一人と面談をするとか、一見するととても非効率なように見えて、私たちのこの丁寧さが別の形の価値を生んでいるのだということを実感しました。
 1年以上かけて、本当に丁寧に丁寧に作り上げてきた保育イノベーション。真の目的を来年はより明確にして育てていきたいと思っています。


4.私たちがワークイノベーションを


さまざまなところでアピールしていますが、私たちは皆、育児や介護をしながら働く仲間たちです。はじめはもっともっと短時間で働く「主婦の集まり」という組織でしたが、今ではほぼ全員が常勤で、資格を存分に生かして(19名中11名が社労士有資格者です)仕事をしています。そのギアチェンジのきっかけは「子どもが大きくなったから」、ではなく「この事務所なら正職員として働くことができるかもしれない」という働き方の柔軟性と思い切りチャレンジできる風土にあったと思っています。私一人が働きかけたことではなく、皆が助け合い、協力し合える関係性を築いたことも大きいです。本人の意識を突き動かすには、子どもの成長とか、配偶者の支えとか、両親・義両親等の恵まれたサポート体制とか、そういったライフラインの充実よりも、「働く環境」というものがずっと大きな影響力があると思います。
 これからは、まさにこの「働く環境」が組織の成長を左右することなる時代です。自分たちが実践者として、新たな世界を切り拓いていきたいと思っています。

本年関わってくださった皆様、本当にありがとうございました。
来年もコツコツ誠実に努力してまいりますのでどうぞよろしくお願いいたします。

社会保険労務士法人ワーク・イノベーション
代表 菊地加奈子

 

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