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鎖国は国際法違反か否か

江戸時代、日本は鎖国していた。
その理由がキリスト教追放と関係がある、というようなことを義務教育の日本史の授業で習ったというのを思い出した。
現代日本では鎖国することはほぼ不可能だろう。
もっとも、現代国際社会のなかで鎖国をして他国との関わり合いをなくすということは現実的ではない。
資源のない国なので自給自足することができず、一週間と持たずに貧困と飢餓で堪え難い苦痛に見舞われるのは火を見るよりも明らかである。
では、資源の豊かな、自給自足の十分に可能な国ならば鎖国することは可能だろうか。
また、鎖国できたとして、それは国際法違反にならないのだろうか。
ある国をX国とする。
X国は、資源が豊富で外国への輸出を一大産業としているが、それを切断してもなお経済的に余裕があるとする。
また、農作物も一年を通して豊かに実り、大飢饉に見舞われたことは一度もなく、土地柄この先もそのような事態に陥らないものと考えられる。
ゆえに、鎖国に至っても自給自足は可能であり、国民は従来通りの生活水準を保つことができる。
一見、ただ完成した世界に自国民のみが住んでいてなんら問題はないように見える。
しかし、国際関係はX国と相手方の国との間で外交関係を築いてゆくものである。
相手方の経済的損失を考えてみれば、X国から一方的に関係を断つのは、違法でなくとも不当であると言える。
また、鎖国してから最も大きな問題となるのは、渡航者の扱いである。
X国内に居住する他国民が突然に強制退去させられたり、X国内の領事館で働く外交使節団が正当な理由なく自分たちの仕事を取り上げられたりと、鎖国によって他国との関係を断つどころか大きな外交問題に発展してしまう。
また、在外邦人の取り扱いも同様に問題となる。
X国が鎖国した影響で、自国に帰還することがかなわないX国民は、やがて難民となるだろう。
そして、現にX国内に居住するX国民も、従来の生活水準を維持できていても渡航の自由が奪われてしまうことになる。
日本の場合は憲法22条に違反するだろう。
国籍離脱とまでいわなくても、海外旅行も自由にできないのは、やはりX国民の自由が奪われている。
国際司法裁判所がどのような判断を下すかはわからないが、X国に鎖国をいち早く辞めるように求めるだろう。

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