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2018年第82回野村狂言座

facebookからの転載です。↓

開演前の解説コーナーに万作先生が登場! 横浜狂言座以外でお話を伺うのは初めてだったのでびっくりしましたが、人間国宝の先生が「初めて解説を務めます」というご挨拶から、すでに面白い予感。

他の方が解説されるときは、演者としての作品の見どころが中心なのですが
万作先生はもっと大きく、狂言や能の楽しみ方をスパッと切れよく、軽妙にお話くださるのです。この日は小舞2作品、狂言4曲と盛りだくさんでしたが万作先生の解説なんて、贅沢すぎる…。

小舞は、狂言の形を学ぶために必須のもの。能の一部を舞う、キャラクター的なものと歌に、節と振りをつけた言葉先行のものがあるそうです。そんな風に教えていただくと、今まで綺麗だなー、だけでなんとなく見ていた舞が面白くなります。

この日の狂言で「魚説法」と「入間川」は、〝言葉遊び〟がポイント。
「魚説法」のほうは、ある男に、新人のお坊さんが「お堂の落成記念にお経をあげて」と頼まれ、本当はまだお経を読めないんだけど、お布施ほしさに
「浜育ちだから、魚の名前はたくさん知っている。それっぽく魚の名前を言えばバレないだろう」と調子に乗ってしまうお話。

お経っぽい節まわしのなか、鯛、平目、さざえ、鮒などなど、お魚三昧。
魚の名前が出るたびに、ちょっと得意そうにする新人坊主が可愛くて…。
万作先生は、5歳くらいの時におじいさまから習ったそう。子どもが演じたらよけい可愛いだろうな、と想像してしまいました。

「入間川」はなんとなんと、万作先生、萬斎さん、そして息子の裕基さんの3人で上演! 大名(萬斎さん)が部下の太郎冠者(裕基さん)を連れて京都から故郷に帰る途中、入間川に差し掛かり、地元の何某(万作先生)に、
「ここはどこじゃ」と話しかけるところから始まります。
偉そうに声をかけられた何某は、気に入らなくて同じく偉そうに返答。
びっくりした大名は太郎冠者に「あんな物言いをされた、どうしよう」と相談すると「あなたの言い方が悪いんだから、もうちょっと丁寧に尋ねなされ」とナイスアドバイス。大名=偉い、のではなく、彼を軸に人間関係のバランスがふわふわ動くのが面白いんです。

そして本題の言葉遊び。この地が入間川であると知った大名が、入間様(いるまよう)という反対言葉の遊びを思い出すのです。何某に太刀を与えてみて、「嬉しいか?」と尋ねると「こんな見事じゃない太刀をもらわず、嬉しくござらん」。それが面白くなってしまった大名が持ち物をじゃんじゃん与え始め、ついに下着だけになるのですが、荒技をくり出し、見事に取り返すのでした。

言葉ともののやりとりの間の、万作先生と萬斎さんの楽しそうなこと。その2人を裕基さんが眺めてる。お芝居はもちろんのこと、親子三代の共演としても拝見できて本当に幸せでした。

解説で万作先生が「こういう機会がこれから増えていくと思います」と。
楽しみ、楽しみ。言葉遊びって、こういう人間らしい知性とユーモアのあるものをいうのだなあと感心しました。 

畑主と藪主が、畑に生えた竹の子の所有権を争う「竹の子」は、のどかな春の風景に、人間くさーい欲が入り混じりこういう人っているなー、としみじみ。

神様から授かった釣り針で嫁を釣る、という「釣針」は、「釣ろよ、釣ろよ🎶 若くてきれいな嫁を釣ろよ🎶」とか歌いながら巨大な釣針を振り回すと、本当に嫁が釣れちゃって、ついでに嫁につける女中さん5名、主人に代わって釣りを代行する太郎冠者の嫁まで釣れて。大漁にホクホクしてると、実は太郎冠者の嫁がブスで…というお話。狂言らしい単純さ、荒唐無稽な笑い、
大勢の女性が釣れたぞーっていう賑やかさ。あっけらかんとして、とても楽しかったです。「釣針」は女性を見た目だけで判断するからセクハラ?
…とは感じないんですよね。なんでだろ?


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