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ゲノムが拓く癌医療

抗癌剤には「細胞傷害性抗癌剤」と「分子標的治療薬」がある。

細胞傷害性抗癌剤

細胞傷害性抗癌剤は癌細胞だけに作用するわけではない。

分子標的薬

癌細胞特異性が高く長期投与が可能。患者が標的分子を持っているかを調べることで投与の効果を予め予想することが可能になる。

融合遺伝子

突然変異により染色体の一部が断裂して他の遺伝子の部位と再結合する「染色体転座」が起こると2つの遺伝子がつながった異常な融合遺伝子が生まれる。慢性骨髄性白血病で認められる。血液癌で数多くの融合遺伝子が見つかっている。

遺伝子解析

肺癌患者の10%は正常遺伝子と塩基配列が1文字違いで生じる。現在では肺腺癌の原因遺伝子は4分の3まで解明されてきた。原因遺伝子が特定されれば、その働きを抑制する分子標的薬を開発する。

癌の分類

かつては癌の発生した臓器の名前で分類したが、同じ肺腺癌でも原因遺伝子は同一ではない。原因遺伝子で分類すると異なる様相を示す。

癌ゲノム医療

遺伝子検査を前提に行う癌の診断や治療。癌の組織からDNAを取り癌にかかわる遺伝子に的を絞って変異を見つけ、それに対応する分子標的薬を処置する医療システムのこと。日本においても2017年「第三期癌対策推進基本計画」でゲノム医療推進の方針が盛り込まれた。

核酸医療

核酸医薬として2015年から「TDM-812」を開発し治験が開始されている。他の臓器に転移がある乳癌に投与して効かなくなった抗癌剤が再び効果を発揮することが期待されている。化学療法を行うが薬剤耐性が生じると核酸医薬による救済の道がひらけてきた。

抗癌剤治療が難しい理由

癌は多様な遺伝子の変異が組み合わさった細胞が混在する不均一な集団である。遺伝的に多様なレパートリーを持つため一種類の治療法で根治させることは難しい。

癌ゲノム医療

次世代シーケンサー、スパコン、バイオ、AIなどを結集して癌ゲノム医療に取り組み始めた。厚生労働省は「癌ゲノム医療中核拠点病院」と「連携病院」を選定した。2019年春から公的医療保険が適用されるゲノム治療が始まる。11箇所の拠点病院と100箇所の連携病院が参加する。

2018年に、国は国立がん研究センターに「がんゲノム情報管理センター」を設置しゲノム解析を集約して管理することにした。

公的保険の対象となったことで大量のゲノム情報が蓄積されてくると新しい治療法の開発につながることが期待されている。

いままでは欧米の検査会社に依頼していたため貴重な情報が海外に蓄積されてきたが、やっと国内で網羅的にデータの解析ができるようになる。

公的医療保険が整っている日本だからこそ国家的なビッグデータを構築できる。

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