キリオオカミの

 キリオオカミの狩りの仕方は、まさにその名をあらわしていた。進めば濡れる夜霧に紛れ、牙を突き立てるそのときにだけはっきりと姿を見せる。ただし、彼らは実体をもつことがないゆえに肉をくらうことは決してなかった。

 キリオオカミの出生については諸説論じられている。ひとつはオオカミの霊魂が夜霧の中で形を持つことを許されたこと。ひとつは酔いどれの夢。ひとつは与えられた概念が環境適応に成功したこと。

 いずれの説にも大家がいるが、彼らは自分の説に自信がなく、バカバカしいと鼻で笑いそびれただけだった。

 しかし大家は、任ぜられたならとキリオオカミの研究に向かう。霧深い夜に導かれ、キリオオカミ今宵もふっと姿を見せる。

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