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むかし書いた韓国コラム #334

 ソウルのサクラの名所といえば汝矣島・輪中路。この週末も多くの人で賑わったようだが、この道の正式名称は汝矣西路という。輪中路という名前は実は日本語に由来する。輪中とは洪水から集落などを守るため堤防で囲まれた構造の地域のことだ。小学校の社会科で習った覚えがあるが、日本では濃尾平野のそれが有名だ。汝矣島が開発され始めた1968年に汝矣島の周囲に堤防が作られたが、これが輪中路の名前の由来となった。しかしこれを輪中と呼ぶのは日本式であるとして韓国語団体などの反対が強まったことから、ソウル市は1986年にこの道の正式名称を汝矣西路、汝矣東路などに変更した。いまでも通称として輪中路の名前は普通に使われているが、最近では汝矣島で開かれるサクラ祭りの正式名称からも「輪中路」の文字は消えてしまった。

 しかし汝矣島の開発は日本統治時代のことではない。なぜ汝矣島に作られた堤防に日本語に由来する輪中路の名が付けられたのかは定かでない。

【解説】
 ちなみに調べてみても韓国における輪中は「汝矣島が代表的」という記述は見つかるが、それ以外にどこにあるのかは明確ではない。汝矣島には輪中小学校と輪中中学校があるが、輪中路が日本由来の名称で気に入らないというのなら、輪中の名を持つ学校の名前も変えるべきなのではないかだろうか。

(初出:The Daily Korea News 2015年4月13日号 note掲載に当たり解説を加筆しました。記事の内容は初出掲載当時のもので現在の状況とは異なる場合があります)

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