むかし書いた韓国コラム #502
チベット仏教の修行のひとつに「砂曼荼羅」というのがある。仏教の世界観などを図にしたものを砂絵で描くもので、完成までには数時間からものによっては数日がかかるという大変な作業だ。完成品は実に立派なものだが、これだけ時間をかけて完成させても保存することはなく、一定の儀式を経てすべてを混ぜ合わせ川に流してしまう。刹那的だ。
この砂曼荼羅はビビンバと共通点が多い。ビビンバを作るのに数日はかからないが、色とりどりの多くの具材を用意するのはそれなりに手間がかかる。そして曼荼羅のようにきれいに盛りつけるが、その姿をとどめるのは一瞬で、次の瞬間にはスプーンで渾然一体となるまでかき混ぜることになる。川には流さないが胃袋に収められ、その姿をいつまでも現世には残さない。
こうしてみるとビビンバはまさに砂曼荼羅だ。適当に思いついたことを書いてみただけだが、これからビビンバを食べるときにはなにか崇高な気持ちになりそうだ。
【解説】
日本のちらし寿司だと混ぜずに食べるからあまり崇高な気持ちにはならないな…。
(初出:The Daily Korea News 2011年6月10日号 note掲載に当たり解説を加筆しました。記事の内容は初出掲載当時のもので現在の状況とは異なる場合があります)
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