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木箱記者の韓国事件簿 第35回 空港鉄道試乗会


 今月で空港鉄道が開業10周年という。10年前に空港鉄道の試乗会に参加し、一般よりも一足先に空港鉄道を体験したこともあり少々感慨深い。当時たまたま新聞で空港鉄道の試乗会の情報を得たので専用サイトから申し込んでみたのだ。試乗会は、運営会社としては通常のダイヤ通りの試運転に試乗客を乗せることで本営業に向けた予行演習的な意味合いもあるのだろう。試乗会は1週間から2週間にわたり行われ、申し込み時に希望する日付と希望する時間帯の列車を指定するだけで、応募資格や試乗料金などはないので外国人でも参加が可能だ。

 10年前の空港鉄道開業時は金浦空港~仁川空港間のみだったため、試乗会は金浦空港駅が集合場所となった。開業前でシャッターが下りている空港鉄道側のコンコースに入り身分証を提示して受け付けを済ませるとパンフレットと記念品としてロゴ入りのタオルをもらえた。駅のコンコースで簡単な説明を聞いた後にホームに向かうとそこには仁川空港行きの普通列車が待っていた。列車も駅もできたばかりのピカピカだった。リムジンバスで仁川空港に行く時に試運転中の空港鉄道と併走することがあったが、試乗した列車も途中からリムジンと併走した。それまではバスの車窓から空港鉄道を見ていたものだが、立場が逆になり、リムジンを追い越して行くのは新鮮な体験だった。普通列車は40分ほどで仁川空港駅に到着し、ここでしばし駅舎内を見学した後に折り返しの列車に乗り込んだ。帰りの列車は金浦空港までノンストップで走る直通列車だった。

 試乗させてもらいながら申し訳ないが当時はソウル市内中心部まで乗り入れていないという中途半端な存在だったため、その後空港鉄道に乗る機会はなかった。

 その空港鉄道の試乗会に再度参加したのは3年後の2010年。待望のソウル駅までの延伸開業に合わせたものだ。前回同様に申し込み、当日に集合場所のソウル駅で手続きを済ませるとまたパンフレットとロゴ入りのタオルをもらい、さらに記念乗車券ももらえた。まずは普通列車に乗りソウル駅から仁川空港駅に向かう。金浦空港駅からは通常の営業列車になるが、金浦空港駅で待っていた一般客は客を乗せて未開業区間からやってきた列車に驚いたようすだった。仁川空港駅からの帰りは直通列車に乗った。本来ならソウル駅までノンストップだが、営業列車の一部を試乗客に開放している関係から当時の終点だった金浦空港駅にも停車した。試乗客が乗っているためソウル駅まで行けると勘違いした一般客がいたのか、車内放送で試乗列車である旨が繰り返し案内された。その後列車は無事にソウル駅に到着した。今回の試乗ではソウル市内と仁川空港をダイレクトに結ぶ空港鉄道の真価が発揮されており、開業後は空港鉄道を利用する機会が多く、いまもよく利用している。

 空港鉄道に限らず、韓国の鉄道では新規路線が開業する際に一般向けに試乗会を行うことが多い。あのKTXも2004年4月の開業前に大規模な試乗会を行った。ソウルから釜山まで無料で行けるが、帰りは有料かつ自己手配というものだった。ありがたく参加させてもらったが、釜山からの帰りは有料うんぬん以前に時間がかかるのを苦痛に感じたものだ。最近では水西高速鉄道(SRT)の試乗会があるという情報だけはチェックしていたが時間が合わず参加は断念した。仁川の月尾銀河レールも試乗会の情報は知っており、自宅から遠いので申し込まなかったのだが、結局開業することなく廃止になってしまったので乗っていれば貴重な体験になったのにと残念な思いだ。韓国では近年新規路線の開業が相次いでおり、首都圏では京江線、仁川都市鉄道2号線、新盆唐線、仁川空港リニア、水仁線などが、地方では大邱都市鉄道3号線、釜山4号線などが誕生している。いずれのケースも試乗会が開催されており、事前申し込みが必要なケースもあれば、申し込み不要でだれでも利用できる無料開放形式のケースもあった。開業してしまえばいつでも乗れるものだが、新しもの好きなら人より早く利用してみたいもの。空港鉄道も年内に仁川空港第2旅客ターミナルまで延伸開業する予定で、1区間の延長だがこれも試乗会の開催が期待できそうだ。開業が近づいたらニュースをしっかりチェックしておかなければならないだろう。

初出:The Daily Korea News 2017年3月27日号 note掲載に当たり加筆・修正しました。

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