Automne Malade


私は、息子(焦茶)の同人誌の中でNo1を選ぶとすれば、「AutumnMalade」にします。

 第一の理由は、本人お気に入りの美麗な蛾をモチーフとしたトータルコンセプトイラスト集であることです。
明確なコンセプトを中心に据えることにより、作者が何を描きたいか/表現したいかを画集を手に持つ人に容易に伝えることができます。

 第二に、創作の姿勢に芸術への志向性が見受けられる点です。私達の先人は例えば富士山などの雄大な自然や、身近なものでは夕暮れ空
などそれらの美しさに接した感動を絵画や詩歌等に表現してきました。このような行為の中には意図的にせよ無意識にせよ芸術への志向性が含まれているものと思います。
 息子は、蝶や蛾の造形美について常日頃から「神デザイン」と評し、よく頭部から翅の先までそのデザインをじっくりと丁寧に観察していました。
それらの自然(神)の造形美に触れることで、沸き上がったインスピレーションを女性のキャラクターとその衣装デザインに表現してこの画集に収載しました。
私はこの画集のイラストを見ると、ワイルドの小説「ドリアングレイの肖像」の登場人物であるヘンリー卿の言葉である「芸術とは、物事をありのままに捉えてそれを大胆に表現することである。」が頭を過ります。
溢れ出てくる自分の思いを自分の持てる技巧を尽くして表現することが芸術であり、その点で私はこの画集のイラストに魅力を感じています。

 第三に、これは個人的な理由ですが、私達家族と共に過ごした様々な思い出を呼び起こすことです。題材に取り上げたシンジュサンとオオミズアオ、オオスカシバは、よく家族と共に野山で採取しました。時には卵や幼虫から成虫にするまで一緒に育てて観察したものです。
その時の写真を掲載します。

オオミズアオ


シンジュサン


オオスカシバ

 これらの成虫の体や翅はモフモフとした細かい毛で覆われているので、私は息子と「ゴージャスな毛皮のコートを纏って夜の舞踏会に現れた綺麗な貴婦人みたいだね!」とよく語り合ったものです。オオスカシバについては、昼行性であるためか快活でアクティブな女の子のイラストにしていますが。

 このイラスト集の売れ行きは今一つと本人は落胆していましたが、上記の理由から私にとって息子の作品の中で一番の出来であり、且つ焦茶の本来(inncent)の持ち味を発揮していると思います。

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