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エビデンスと統計的な考え方

EBPMということばを聞くことがあります。内閣府のウェブサイトを見ると、Evidence-based Policy Makingの略で、日本語だと「証拠に基づく政策立案」だそうです。政策を決めるときに、感覚ではなく、統計的なデータなどを使い、判断するということです。似たようなことばで、EBM(Evidence-based Medicine, 根拠に基づく医療)もあります。Evidenceは、証拠や根拠などと訳されますが、そのままカタカナでエビデンスと言われることも多いです。

私は技術者ということもあり、エビデンスに基づいて説明や判断することを、普段から意識しています。技術的な判断をする際は、実験データを根拠にしたり、これまでの履歴データを分析したりして、検討します。

業種に限らず、エビデンスに基づいた意思決定が重視されるようになってきています。

しかし、ネットの記事や、普段の会話では、一見、エビデンスに基づいているようで、基づいていないものも散見されます。

例えば、「ワクチン接種をしていた知人が新型コロナウィルスに感染した。自分はワクチン接種していないが、感染しなかった。だから、ワクチン接種はしない方が良い。」といった記事です。

ワクチンを接種したかどうか、感染したかどうかは事実なので、個人的な体験としては否定できません。問題はそれを一般化している点です。一般化するためには、ノイズを排除できる状況下で実験をするか、十分なデータ数で統計的に判断する必要があります。上の例だと、ワクチン接種した人と接種しなかった人が何人で、それぞれの感染率はどれだけかを把握し、それを統計的に判断する必要があります。

あたりまえと思われる方もいるかと思いますが、特にネットでは、意外とそうでない記事が多い印象を受けます。統計的なデータを並べても、あまり面白くないせいかもしれません。体験談で、感情に訴える方が、人の心には届きやすいのだと思います。

エビデンスに基づいている、あるいは基づいていそうな記事でも、根拠となるデータや計算はとばして「効果が90%」といった見出しで訴える記事が多いです。データが記されていても、読み飛ばす人が多いと思います。100人がワクチン接種して感染しなかった人が90人だったとしても、効果は90%ではありません。悪意があるかどうかはともかく、元となるデータは正しくても結果が間違っていることは、多々あります。統計的なウソや間違いについては、挙げだすと多数あります。(古い本ですが、参考文献を挙げておきます。)

細かい計算方法を覚える必要はありませんが、統計的な考え方を学んでおくと、怪しい情報に惑わされず、自分で考えて、賢明な判断ができるようになります。

なお、私は何でもかんでもエビデンスで判断しなければならないと言うつもりはありません。理屈では説明できない自分の内なる感情というのも大切にすべきです。客観的なデータで判断するとAでも、自分の心がどうしてもやりたいと感じるのでBを選択することも、時には必要だと思います。そうだとしても感覚だけで判断するのと、統計的な考え方も理解した上で判断することには違いがあります。

怪しい情報に惑わされず、適切な判断をするために統計的な考え方を学んでみてはいかがでしょうか?

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