世界はなんて素晴らしいんだ

What A Wonderful World (この素晴らしき世界) は、ルイ・アームストロングの歌唱で1967年に録音された。当時アメリカが直面していた人種対立やベトナム戦争など深刻な社会混乱の渦中で、平和と調和を訴えた曲として知られる。

ベトナム戦争を描いた映画『グッドモーニング・ベトナム』(1987) でも、戦時下のデモや暴力、爆撃や殺戮をドキュメンタリー風に映し出す場面に、この全曲が流れて観客に強烈な印象を与えた。 https://youtu.be/FzFIDTs3WtI

歌詞の内容は、何でもない日常の風景を淡々と描写しただけだ。だがそこがいい。

ぼくはこの曲に、谷川俊太郎さんの『生きる』(1971) という詩を思い出す。

 生きているということ
 いま生きているということ
 それはのどがかわくということ
 木もれ陽がまぶしいということ
 ふっと或るメロディを思い出すということ
 くしゃみすること
 あなたと手をつなぐこと
 http://www.nanarokusha.com/ikiru_zenbun.htm

ふつうに、何でもない時間が何でもなく過ぎていくことが、どんなに素晴らしいことか。

大きな病気や事故に遭ったり、災害や動乱に巻き込まれたり、大切な人を喪なったりした時、あらためて人はその貴重さに気づく。

この素晴らしい世界を味わい尽くすには、人生はあまりにも短い。まして憎しみ合ったり、争ったりしている時間などないのだ。

つくづく、そう思う。

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