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光画小説集

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2014年6月の記事一覧

光画小説集 - 蜜柑



しかし汽車はその時分には、もう安々と隧道を辷べりぬけて、枯草の山と山との間に挟はさまれた、或貧しい町はずれの踏切りに通りかかっていた。踏切りの近くには、いずれも見すぼらしい藁屋根や瓦屋根がごみごみと狭苦しく建てこんで、踏切り番が振るのであろう、唯一旒のうす白い旗がものうげに暮色を揺すっていた。やっと隧道を出たと思う――その時その蕭索とした踏切りの柵の向うに、私は頬の赤い三人の男の子が、目白押し

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