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レオン、ニキータ、オーシャンズ-レオン-

毎朝、銀座駅で地下鉄を乗り換える。
銀座線から日比谷線まで階段を上って階段を下りるのだが、そのちょっとした移動距離の間に大きなポスターが連なっている。

今はちょうどニュージーランド航空の広告で、雄大さをこれでもかと見せつける、南半球の大自然の写真。
そこは空気がこの街の30倍は澄んでいそうだ。

駅のポスター群は2週間で入れ替わる。
ニュージーランドの前は新しく創刊したらしい雑誌の広告だった。

その名は「OCEANS(オーシャンズ)」、テーマは「Love is Luxury」なのだそうだ。

最初、ラルフローレンの広告かと思った。
なんかそんな感じなのだ。
ポスターの中には、メキシンカンリゾートを彷彿とさせるような陽光に照らされ、
育ちの良さそうなアメリカントラッドを身にまとった男性、それだけじゃなくて女性もいて、子どもまでいる3ショット。

よくよく見ると雑誌だというので、なるほどねとピンと来た。
だから、「OCEANS」か。

数年前、同じく銀座駅の同じ場所で、ショーン・コネリーみたいに渋く禿げ上がった白人の中年男性とちょっとロリータが入った金髪の女の子がゆるく抱き合ったポスターを見た。
それが雑誌「LEON」の創刊告知だった。

「OCEANS」は明らかに「LEON」を意識している。
流行語にもなった「ちょい不良(ワル)」オヤジへのアンチテーゼとして、「家族を大事にする(家族みんなにお金を遣う)のがかっこいいのさ」というメッセージなんだろう。

ちょっと調べてみたら、案の定、「LEON」編集部の人々が移籍して作った雑誌なんだとか。
やっぱり。

なぜ「OCEANS」と来てすぐに「LEON」をイメージしたかというと、そのネーミング。
「LEON」の女性版である「NIKITA」も含め、これら全て映画のタイトルだからだ。

「LEON」が創刊されたとき、誰もがリュック・ベッソン監督、ジャン・レノ主演の「レオン」をイメージしただろう。
それは、ワイルドで哀愁漂う孤独なイタリア系アメリカ人の殺し屋レオンと、少女マチルダの不器用に触れ合う心と哀しい宿命を描く作品。

そして「ニキータ」は、同じくリュック・べッソン監督で、パリを舞台に本人の意思に反して殺し屋に仕立てられていく少女ニキータの物語。
女性版「レオン」とも呼ばれている。

いずれも激しいバイオレンス・アクションと、スタイリッシュなテイスト。
色気を匂わせ、くるおしく切ない。

これらの作品が二つの雑誌が目指すところの、大人のラテン系セクシーの源になっているとしても、的外れではない。
雑誌の方はいささか悪ふざけがすぎている気もするが・・・。

一方、これへのアンチテーゼ「OCEANS」。
もちろん、ジョージ・クルーニー主演の「オーシャンズ11」から名づけられたに違いない。

ジョージ・クルーニーというのは、ラテンの匂いとは無縁の人間である。
セクシーではあるが、清潔感が強すぎる。
「ER緊急救命室」では大病院の医師、「パーフェクト・ストーム」では船長、「オーシャンズ11」では窃盗団のリーダー。
いずれも集団をまとめていくような役回りで、周囲に頼りにされ、使命感が強く、ちょっとした愛嬌もある人気者である。
つまりは、家族という集団のリーダーとして「セクシーだけど頼れるパパ」な「OCEANS」のイメージにぴったり当てはまるキャラクターと言えそうだ。

ジョージ・クルーニーは胸のはだけたシャツを着て、金のネックレスをつけて雑誌の表紙に載ったりはしない。
彼は白いコットンのシャツを二つ目のボタンまでだけ外し、ベージュのチノパンを履いて白い歯の笑顔を見せるだろう。
決して、孤独な殺し屋の役などやらない。

雑誌「OCEANS」が「LEON」並に話題を作れるのかどうかは知らないが(正直、少し疑わしいと思う)、幾分イタイ「ちょい不良オヤジ」よりはジョージ・クルーニーみたいな大人の男性が増えてくれた方が、随分素敵な世の中だと思う。


レオン Leon The Proffesional(1994年・米)
監督:リュック・べッソン
出演:ジャン・レノ、ゲイリー・オールドマン、ナタリー・ポートマン他


ニキータ Nikita(1990年・仏)
監督:リュック・べッソン
出演:アンヌ・パリロー、ジャン・ユーグ・アングラード、チェッキー・カリョ他

■2006/3/21投稿の記事
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