45分

マーマレードができた。
鍋の中でつややかに光る。
かけていた火を消して、
隣に置いた鍋に水と、
瓶を入れて火にかける。

瓶を先に煮沸して、冷やして、
さめたところに、
できたてのジャムを入れて、
それでわたしは、
瓶を割ったことがある。

ガラスの瓶はそのとき、
切ない小さな悲鳴をあげた。

そのことを思い出すと、
わたしは決まって、
何年か前にわたしの一番だった男を、
思い出してしまう。

わたしは子どもを作れなかった。
彼はそのせいで、
冷えてしまった。

わたしがいくら愛しても、
それを伝えようとしても、
冷めてしまった彼の器には熱すぎた。

ぴしり、
と、
切ない小さな悲鳴をあげて、
わたしと彼の関係は壊れた。

ぼこぼこと沸く透明な水と、
かたかたとその中で揺れるガラス瓶。

ゆっくりとぬるくなっていく、
きらきらのマーマレード。

#小説

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