まるまま生き残り、
まな板の上でころりと呑気な、
オレンジの果肉を手に取った。
ころり、ころり、と乾いた鍋に。
ヘラでつぶしながら、
水の湧いてくるのを待つ。
人間の70パーセントは水分だという。
ジャムにするには少し足りない。
きっと神様は気に入らなかった。
ジャムにしたって美味しくない。
どうやったって食べられない。
誰にも好かれず、
残骸なんて捨てるしかない。
きっとその程度のつもりだった。
神様にも研修があるんだろう。
ほかの生命を上手く生かすための、
そのためだけの素材として、
きっと人間があるんだろう。
じゅう、
と、オレンジから染み出した水が、
熱された鍋に触れて笑う。
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