口を縛った茶漉しの中に、
オレンジのタネと、
白い甘皮を入れたもの。
鍋の中では、
それがすこしずつ、
なにかよくわからないけれど
オレンジをマーマレードにするものを、
ぐつぐつという音に合わせて出している。
生産性。
わたしの大嫌いな言葉。
わたしは何も生み出せない。
わたしは何も作れない。
こうして見ている鍋の中、
ぶつぶつと飴のようなマーマレード。
それだって、
わたしより上等な命の使い捨て。
わたしに何ができるんだろう。
ぼんやりと、沸き立つ湖面を見つめる。
なんでまだ、
わたしは死んでいないんだろう。
#小説