38分

口を縛った茶漉しの中に、
オレンジのタネと、
白い甘皮を入れたもの。

鍋の中では、
それがすこしずつ、
なにかよくわからないけれど
オレンジをマーマレードにするものを、
ぐつぐつという音に合わせて出している。

生産性。

わたしの大嫌いな言葉。

わたしは何も生み出せない。
わたしは何も作れない。
こうして見ている鍋の中、
ぶつぶつと飴のようなマーマレード。
それだって、
わたしより上等な命の使い捨て。

わたしに何ができるんだろう。

ぼんやりと、沸き立つ湖面を見つめる。

なんでまだ、
わたしは死んでいないんだろう。

#小説

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?