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「女の子はどう生きるか」 第4章 その2

上野千鶴子著、「女の子はどう生きるか(岩波ジュニア新書)」の要旨。女子高生の質問に、日本の女性学のパイオニアである、上野千鶴子氏(東大名誉教授)が答えるという、Q&Aの形式で綴られた書。

Q.38 女子の就活戦線にはトラップがいっぱい?!

Q.就活中にセクハラ。どう対処すればいいの?

A. 就活生は弱い立場だ。そこに付け込む「権力の濫用による、望まない性的接近」であるセクハラは、はっきりとした人権侵害。応じないと、もしかして採用されないのかもしれない、と誘いにのると、下心が混じった誘いだった、ということがある。

「一対一で会った貴女が悪い」という人がいるが、そうではない。間違いなく悪いのはセクハラをする側だ。それに、個人的に会おうといってくるオジサンは、基本的に常習者だ。

では、どうしたらいいのか。まずは大学の就職課学生も加盟できるローカルユニオン地方の労働局、などに相談することだ(note筆者:公的な第三者に相談できる、ということを心に留めておこう。証拠は、準備しておくと話しやすい。法律の専門家に相談する端緒にもなりうる↓)。

また、証拠が残るように録音し、ノートにメモ(note筆者加筆:5W1Hを明確に)をしておいたりするのもいい。

ただ、このような不当なセクハラを女子学生の「自衛」に任せるのはあまりにもひどい。大人の世界の不当行為は、大人に対処してもらうべき。通報したら、採用の芽がなくなっちゃう?それより、嫌な上司に仕えるほど苦痛なことはない。心身も美容も蝕むことになる。

就職面接は、自分が選ばれるだけではなく、自分から職場を選びに行く対等な関係の場として捉えよう。

本文中に、参考文献の紹介あり↓

伊藤詩織著、「ブラック・ボックス(文藝春秋社)」

「私たちの就職手帖」

「SAY (Safe Campus Youth Network)の声明」

Q.39 差別は続く

Q.就職するまで女性差別なんてないと思っていた。どうしたら女性差別をなくすことができるのか?

A.貴女が今まで女性差別に気づかなかったのは、学校に差別がなかったから?校長先生は女性ですか?生徒会長は男の方が多かったんじゃない?家の中で、お父さんとお母さんは対等な関係?家事や育児は分担されていますか?

ちょっと考えて観察してみれば、女性差別の現実は山のように存在する。でも実際に直面するまでわからない、というのが人間の限界。貴女は、いま就職してその現実に直面している。セクハラがあっても周囲は止めないし、女性の上司はほとんどいない。

その会社がいい会社かどうか見極める方法に、女性の在職年数を見るという方法がある。10年・20年・30年、と在職している女性がいるか?30年後にこうなりたい、と思える女性がいるか。

女性差別をいきなり無くすのは難しい。もっとひどい昔は、企業は女性を雇いすらしなかったのを、少しずつ少しずつ女性たちが闘って変えてきた歴史がある。

貴女ができることは二つ (+ 追加でもう一つ)。

➀ まず一つ目に、女性差別ができるだけ少ない会社を選ぶこと。長く勤めている女性社員がいて、管理職や役員に女性が存在するのか調べる。

➁ 二つ目に、自分が入った場所の環境を自分から少しずつ変えていくこと。それか自分でフリーランスとして働くのもいい。自分の手で環境を変革していくのにはやりがいがあるだろう。

➂ 追加でもう一つは、「会社に入ろう」なんて思わないこと。実力やスキルをつけて、会社に入らずに能力を活かすこともできる。

Q.40 総合職か、一般職か?

Q.総合職か一般職どっちがいいの?

A.総合職か一般職という区切りで採用する「コース別人事管理制度」。この人事管理制度できたのは1985年施行の男女雇用機会均等法から。それまでは、募集や採用の男女差別がまかり通っていて「男子のみ」の応募は多かったが、それが「表向き」は禁止された。

ただ、企業もいきなりは変われない。そこで、生み出されたのが「一般職(non-career track、または補助業務)」というキャリアの積めない女性向けのコース。「総合職(career track)」に対して、男女雇用機会均等法の影響を最小限にして逃げ切るために作られたのが、この「一般職」を含む「コース別人事管理制度」だ。

経営者のオッサンたちはずるくて、悪がしこくて、したたかだ。2016年時点で、従業員5000人超の日本の大企業の50.1%が、このコース別人事管理制度を採用している。そもそも職が違うから、給料が低くてもしょうがない、自己責任だとという考えが反映されている。

1985年の男女雇用機会均等法施行後、少数生まれた総合職の女性が社会に出てから35年。そのキャリアウーマンの女性たちから、今は管理職や役員が次々に生まれている。もちろん、総合職を選んだ女性すべてが幸せだったとは言えない。一般職のほうが長く勤務できるという現実もある。ただ、一般職は最初から最後まで補助業務でキャリアアップの機会はない。

貴女が迷っているならば、早いうちから自分の目標を小さくするのはやめて、まずは挑戦してみることだ。就活前にやること2つ。以下をチェック。

男女雇用機会均等法や労働基準法などを知っておく(note筆者:判例もこの20年で随分増えた)。

厚労省の「女性活躍推進法「見える化」サイト」

(note筆者:自身が社会人になった1990年代よりも、2021年現在の方が、文献も知識吸収の機会も飛躍的に増加した。被雇用者は、男女を問わず、いつでも相談できる「法テラス(有料だが価値あり)」「労働基準監督局(公的相談窓口あり)」などの連絡先を携帯に登録しておこう。無知な知人や、会社の法務部・人事部窓口より、頼りになる。)

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