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「女の子はどう生きるか」 第2章 その3

上野千鶴子著、岩波ジュニア新書、要旨

第2章 家の中でモヤモヤするのはなぜ?

世間の常識・非常識

Q.私の家はダブルインカムだが、母のほうが稼ぎがいい。一般的にはそれだと夫婦関係はうまくいかないといわれる。学歴も背の高さも女性が男性より低いほうがいいのか?

A.学歴格差、学校間格差、収入格差、身長格差、どれもこれも女性が男性よりちょっと劣っているほうがいい、という価値観である。ただ、考えてみると、たいがいの家庭で夫のほうが収入はいいが、その家の夫婦関係は良好だろうか?夫婦仲と収入の大小は関係ないし、一般的に夫の収入が多いのは、男性の地位が女性よりも「上げ底」されているおかげであって、男性が女性より優れているからではない。

男性が自己効力感(オレサマ意識)を持つのは、「稼ぎが高いとき」という研究結果がある。しかし、そのアイデンティティが、例えばリストラ等によって覆されたとき、暴力で相手に優位に立とうとすると、これがDVの原因になる。しかも、多くの場合は「妻は(経済的に弱い立場なので)家から逃げられない」と知って暴力を振るう。でもそうなった時に、さっさと夫婦関係をキャンセルできるように、女性も経済力を持つのが良い。

もし、あなたの両親の場合、お母さんの稼ぎが多くても夫婦仲がよいのならば、お父さんはそのようなみみっちい男じゃないということだ。両親を誇りに思いましょう。

パートナーの呼び名について

Q.夫を「ご主人」、妻を「奥さん」。夫婦は対等なはずなのに、もっといい呼び方はないの?

A. 実は「主人」という言葉がいつから流通したかというと、わりあい歴史が浅くて明治時代ころ(note筆者:昭和初期には少数派だったという2017年の調査結果もある:水本光美氏、北九州市立大学名誉教授)。江戸時代以前は、「主人」は、臣下が君主を呼ぶコトバだった。現代では臣下も奉公人もいないのに「主人」も「旦那」も呼び名としてはヘン。家にずっと閉じこもっているわけではないのに「奥さん」とか「家内」と呼ぶのもヘン

言葉は生き物で、生まれていって廃れていく。「夫」の語源は「良人(オット)」だった。よくない「オット」とは離縁した方が良い。それに、夫のことを「主人」と呼ぶと、あんたは奴隷か、とザラッとする。

なら、もっといい呼び名を作ればいい。日本語では、身内を呼ぶのにへりくだって「宿六(やどろく)」とか「愚妻」と呼ぶこともあるが、家族を謙遜や卑下ではなく、尊重して褒める表現にしてほしい。

女がつく言葉

Q.姦(かしま)しいなど、「女」がつく言葉は明るくない気がする。言葉による女性差別だろうか。

A.「奴」「嫉妬」など、確かにあまりうれしくない意味の漢字が多そう。漢字を作ったのはおよそ3500年前の古代の中国人で、婦人の婦は女が座った姿の横に箒がついたものだ。各方面から抗議を受けて、今では婦人という漢字は、ほとんど使われなくなった。言葉は生ものだし、魔物でもある。

日本語の敬語表現は独特だ。昔は妻が夫に敬語を使っていたらしいが、2000年頃のアンケートでは、それは皆無となっていた。言葉の呪力によって、人は支配されたりしたりする。「主人」とか「嫁」、にも呪力がある。言葉は道具として、人の関係をも表す。

(note筆者の感想:当用漢字を決定する場にいるのは、ほぼ男性。女性の意見は反映されず、当用漢字決定者自身の娘たちの地位も貶(おとし)めつつ。女偏の漢字は、学ぶほどに不愉快なものが多く、「日本で女性は軽視されているのだな、この国に貢献する意味ねーなー」というのが、小学生の頃の個人的な感想。例えば男性並みに働くも、たっぷり納税したって、例えば男性が過半を占める公務員の給料になる。世界では女性を積極的に公的業務に採用して、良い結果(←リンクあり)を出しているという統計もあるのに。)

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