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「女の子はどう生きるか」 第3章 その3

上野千鶴子著、岩波ジュニア新書、要旨

第3章 リア充になるってけっこうたいへん?

Q31. これって逆差別では?

Q.女性専用車両は、男性への逆差別ではないのか?

A. 男性だけ満員電車で女性だけずるい?でも、実際首都圏のラッシュ時には女性専用車両もぎっしり満員だ。そもそも女性専用車両ができた理由は、男性による痴漢問題が原因。

もし痴漢をしない男性がばっちりを受けて、女性専用車両を逆差別だと怒っているのならば、その怒りは痴漢男性に向けるべき男性の敵は男性だ、女性ではない。痴漢男性を野放しにするから、男性全体の評判が落ちる。

(note筆者:本当に、学生時代は痴漢被害にあってばかりで心から、本当に心から「日本死ね」と思っていた。何十年経っても、日本の電車は危険だと身構える。一生の心の傷なのだと今更気付く。このままの社会でよしとするのか。次の被害者は、例えばnote読者自身の娘たちなのだ。)

Q32. 痴漢にあうのは私が悪い?

Q.通学途中に痴漢によくあう。親や先生に相談したら、「あなたにスキがあるからだ」といわれてしまった。私が悪いのか?

A.最近の痴漢研究によると、痴漢被害者はスキがあろうとなかろうと、どんな女性でもなる可能性があることがわかっている。首都圏で電車通学している女子学生で痴漢を経験していない女子はほとんどいない。そして痴漢はリピーターであり、再犯率が44.7%(←法務省リンク)。痴漢被害者は体が密接する車内で避けるすべなどない。痴漢に遭っても勇気を出して声を上げるのは大変。悪いのは被害者ではなくて加害者である。女性を道具のように見なしている中毒者だ。

「痴漢は犯罪です」というポスターが1990年代に貼られた。犯罪なのだ。犯罪は取り締まらなければいけない。できることは2つある。

・1つ目は、「この人痴漢です!」と女性自身が声を上げること。でも女性にとっては、とてつもなく勇気がいることだ。

・2つ目は、周囲の(特に男の)乗客が「お前なにやっているんだ!」と取り押さえること。

痴漢被害者にならないことは、無理。あなたにスキがある、という大人の言葉はサイテー。

また、痴漢の話をすると出てくる痴漢冤罪説。まれ〜に痴漢冤罪で人生が破滅した男性がいた事実もある。ただそれ以上に、たくさんの痴漢加害者が罰されず、野放しになっている。男性雑誌の中には痴漢をしやすい路線、などとあおる記事がある。日本には痴漢に対し寛容な風潮が蔓延している。

冤罪はあってはならないことだが、冤罪を作るのは女性ではなく、ずさんな犯罪捜査と司法のせいだ。警察と司法の欠陥を、女性に転嫁してはいけない。そして、冤罪がおきるほど、男性が潜在痴漢だと思われている痴漢文化に、批判の矛先を向けるべきだ。その痴漢文化を作り上げてきたのは、男性たちである。

Q33. JKだけができるアルバイト

Q.オタクの聖地で、JKだけができるバイトに勧誘された。今しかできないバイトをすることは悪いこと?

A.女性の性的サービスを商品にする市場は18歳以上、という制約がある。禁止されているから若年女性に「萌える」という、ヘンタイなオッサンを相手にするのがJKビジネス。それは、男の男による男のためのビジネス。女子高生に渡るのは、ほんの少しのアルバイト料だけ。散歩するだけといわれても、手をつなぎたいとか、胸を触っていいか、とかパンツを脱いでほしい、とかエスカレートしていくのが実情。

AV女優の勧誘のしかたを知っていますか。最初は、「モデルデビューしませんか」と自尊心をくすぐって、連れて行く。契約書にサインしたから、と連れて行かれた先で撮影に応じさせられることになる。

(note筆者:AV女優の勧誘のほか、風俗店などでは、知的障害のある若年女性が被害に合うケースが多い、との新聞記事(←リンク、有料記事)を読んだことがある。卑怯。)

確かにJKには商品価値があるし、その期間限定の価値を使って何が悪いの?と思うかもしれない。ただ、想像しよう。もし自分のお父さんが、ほかの女の子をJKサービスの提供者にしていたら、どう思うだろうか?

都会でさすらっている、行き場のない若い女性がJKビジネスの対象になりやすい。そんな女性に安全な場所と食事を提供している一般社団法人Colaboがある。なぜ若い女性は街を彷徨うか。それは、多くの場合、父母による家庭内暴力から逃げるため(note筆者:上述の新聞記事によれば、若年女性自身の知的障害が原因で家庭内暴力を受けていることが多く、結果、街を彷徨うことになるという負の連鎖がある。)。Colaboが2016年に「私たちは『買われた』展」をしたら、怒る男性がいたとか。はした金で女性の窮状に漬け込んで、自分の性欲を満足させるキモい(しかも、展示に怒って居直る)男が存在する。

JKサービスを提供して、確かにお金(はした金)は得られるかもしれないが、それであなたが得るものは何なのか。キモさを我慢して得たお金を得ても、キモイ男に買われる自分が嫌になって、自分をリスペクトできない結果にはならないだろうか。

自分の人生の中で、将来あの頃はこんなことをして頑張った、と誇りをもって思い出せないような経験は、しないほうがいい

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