映画を観に行った1日

少し古めいた住宅街に商業施設が点在する街。

平日の昼間でコロナウイルスの影響もあるだろうか、車通りは多いが歩いている人がほとんど見当たらない。

薄雲り汚れた乳白色の空の下に、俺の足音がいつもより大きく響いている。まるでミニチュアの世界に迷い込んだような錯覚を覚えた。






日は沈み、薄暗い空を朧な月がぼんやりと照らす18時過ぎ。

本当なら長い夜に向けせっせと支度しているはずの街は、数時間前と同じように静まり返っている。

車通りは変わらずあるが人がいない。いや、声が聞こえない。街から話し声が消えていた。強烈な違和感の正体に気付いた俺はゾワゾワと恐怖を感じ足を早めた。

俺一人だけ映画のスクリーンに閉じ込められたのだろうか?

暮らしの中で意識せずとも絶えず耳に入っていたはずの「生」は消えて、跡形だけが不気味にあちこちから生えていた。

電車に乗って人が疎らに視界に入っても気持ち悪い感覚は続き、大きな刺激は秩父鉄道の耳を劈くような発射音だけだった。



帰宅して家族の会話に混ざって、今は平常心を取り戻しました。不思議な一日でした。疲れた………

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?