元オタクが語る『千年のシンデレラ-Love in the Moonlight-』2018
作品情報
主演:
宋茜(ビクトリア)
黄景瑜(ホアン・ジンユー) 他
原題:『結愛・千歳大人的初恋』/中国現代ドラマ(全25集)
配信メディア:Amazonプライム+U-NEXT
キーワード:ファンタジー+狐+生まれ変わり
中国語学習に気軽に観られる短い現代劇を、と思って何気なく選んだ作品。
百年ごとに出会いと別れを繰り返しながら千年かけて同じ女性を愛し続ける狐族の男の話で、ファンタジー要素を取り入れた現代劇だ。
唐代に戴孚によって編纂された実在する伝奇集『広異記』をモチーフに描かれている。
本作で描かれる狐族は、太古の昔に他の惑星から移住してきた宇宙人であり、人間社会に紛れて現代までの時代を経てきたという設定で、女主人公ピピの相手役ホーランがその狐族だ。
最初は突拍子もない設定だなと思ったけれど、ストーリーが進むにつれて登場人物それぞれの難しい立場が活きてきて、それなりに面白い。
中国の伝承話中では日本と同様、狐は賢く妖しい生き物であり、永く生きる狐や人間の気を吸った狐は仙術を会得して妖怪化すると言われている。
しかし、本作での狐族は愛にかけて、みんな一途だ。
中国の伝承では一種の媚薬のようなものとして語られる狐の定番アイテム“媚珠”も、このドラマでは狐族が生涯の愛を誓う人に贈る求愛アイテムとなっている。
神話や伝奇を元にした物語は興味深い。
中国は日本から近くて遠い国で、文化的には母なる国でもあるから、我々には共通点も相違点もたくさんある。
毎話、エピソードの冒頭は数百年前の主人公ピピと相手役ホーランの物語をたどり、そこから現代の二人の物語に移行する形を取る。
過去と未来が同時進行するわけだ。
何代にも渡って愛する人の生まれ変わり(今世ではピピ)を探し続けるホーラン、過去世のことなど忘れて今世での恋人を想うピピ、そして彼らを巡るいくつもの三角関係。
前半は、彼らをコミカルに描く軽いタッチの恋愛ドラマだ。
そこへ、保守派と親人間派とに分断された狐族のいざこざが絡んでくる。
17話くらいから数百年前の悲しいいきさつがひも解かれ、それぞれの抱える痛みが見えてくる。
ピピとホーランの、何度生まれ変わっても結ばれない輪廻も悲しい。
物語が少しずつ切ないトーンに変化していくのだ。
一途だからこそ嫉妬に駆られ、大事な人さえ見えなくなった男がいる。
どんなに策略を巡らせても結局欲しいものを手に入れられない敵役の彼は、憎いというより哀れだ。
人と人が互いに心が通じて想い合うとは、実はなんと難しいことか。
手が届くほど近くにいても想いは伝わらず、ようやく言葉にできた頃にはあの人はもう、声の届かない場所にいる。
元オタクが思うこと
それほど期待せずに観始めたし、最初のうちは主人公のキャラクターが好きになれなくていまいち入り込めなかったけど、回が進むうちにそれなりに引き込まれた。
作り込みは甘いドラマだけど、粗探しさえしなければ楽しめるドラマだ。
話数が少ないから無駄なくまとめられていて、スムーズに展開していくのでストレスがない。
最後はみんなが大きな犠牲を払って終わるのだけど、あれは一応ハッピーエンドなんだろうか?
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