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真っ赤なはじまり

20XX年、人生で初めての感覚に出会った。
ガンガン音が耳と頭を独占して、真っ赤な色が視界を支配している中、電気が走ったようだったの。心臓の動きがやけに生々しく感じるくらい大きくて、少し気持ち悪かった。お酒に酔っていたからかもしれない。
いつもは言葉なんて出ない私が
「今を逃したら未来の自分に怒られちゃうかも!」と少しの焦燥感と圧力を感じながら、その前にもう言葉が出てた。言葉が頭を経由しなかった。
人生で初めての出会が始まった。
小さくて控えめで、よく見ると綺麗な生き物だった。少し戸惑いながら笑ってた。
あの時の情景はずっと覚えている。きっとこれからも忘れない。いや、忘れてなんかやらないのだ。
思い出すと目頭が熱くなる位、大切で切なくて、時に縋りつきたくなる程の、宝物。
きっと、人生で一回きり。とっても幸せな出来事だ。
愛とか恋とか運命とか、そんなロマンチックなものを本気で書けそうなほどの幸福が私に押し寄せてきて、人生が広がったのがわかった。
これからの私に、どれほどの広がりを見せてくれるのか、この頃は思いもしなかったけど、これを書いている今も、吸った息が飲み込めない。
苦しい幸福が、存在することを初めて知った。

一緒に煙草を買いに行った。
ドンキ前を足並み揃えて早足に歩いた。そのリズムが心地よくて、歩いている私たちが俯瞰して見えた。
無敵になったみたいな気持ちだった。
何が好き?好きな数字は?
当たり障りない会話さえ、他の人たちと違うの、一言一句、私の中に取り込みたかった。
会ったばかりで、過去まで欲しいと思ったから。
こんなにヘヴィな女なんて、その時は思わなかったでしょう。
後々、ヘヴィで面倒臭い、頭の悪い女ってバレてしまうのだけれど。
今だけは、忘れられない女になりたかったのよ。馬鹿げているけれどね。


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