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ホームズの世界と貨幣

 難解である。いろいろと調べてみたが、あまりに難解すぎる。
 ビクトリア朝時代はイギリス国内で貧富の差が激しかったため、必要となる金銭単位にも大きな差があったのだろうか。
 それにしても細分化しすぎである。

1.単位

 ビクトリア朝で流通していたお金の単位は以下。

・ファージング
 通貨の最小単位。1ファージングは1/4ペンスと呼ぶことも多かったようで、お金の単位というよりは通貨の単位に止まっていたようである。

・ペニー(d) 4ファージング=1ペニー
 ローマ帝国の小額貨幣であったデナリウスから、dで表記。複数形は「ペンス」。聖兄でユダが油の単位に使っていたように、聖書には1デナリが労働者の日当と記されていた。

・シリング(s) 12ペンス=1シリング
 ローマ帝国の金貨であったソリドゥスから、sで表記。シャーロック・ホームズの物語ではほとんど出てこないが、「ボブ」とも呼称された。

・ポンド(£) 240ペンス=20シリング=1ポンド
 ローマ帝国の重量の基本単位であったリブラから、£で表記。最大単位であるほか、ヤード・ポンド法における重さの単位としても用いられた。

 この他の金銭的表現として
・ギニー   1ギニー=1ポンド1シリング
 ギニア産の金で鋳造された金貨であったことに由来し、gで表記。複数形は「3gns」等と表記。慣習的な単位として残っていたらしい。商人への支払いはポンドが利用されたが、芸術家や法廷弁護士、医師など紳士と認められる職のものは「ギニー」単位で支払いを受けたというから、ワトソン医師も同様だっただろう。「ボヘミアの醜聞」では、弁護士の男性がチップとして「半ギニー」と表現している。


2.硬貨

 当時、お金の流通単位と貨幣はイコールではなく、貨幣は以下の種類が存在した。

半ファージング銅貨=1/8ペンス
ファージング銅貨 =1/4ペンス
半ペンス銅貨   =1/2ペンス(ハペニー、ごく短期間生産された)
ペニー銅貨    =1ペンス(銀貨から銅へ)
2ペンス銅貨   =2ペンス
3ペンス銀貨   =3ペンス
4ペンス銀貨   =4ペンス(3ペンス銀貨と同サイズ、やや重い)
6ペンス銀貨   =6ペンス=半シリング
シリング銀貨   =12ペンス=1シリング(スラップペンスとも)
フローリン銀貨  =24ペンス=2シリング=1/10ポンド
半クラウン銀貨  =30ペンス=2シリング6ペンス=1/8ポンド
クラウン銀貨   =60ペンス=5シリング=1/4ポンド
半ソブリン金貨  =120ペンス=10シリング=1/2ポンド
ソブリン金貨   =240ペンス=20シリング=1ポンド
 このほか、1887~1890年のみに鋳造された「ダブルフローリン」もあった。これは、48ペンス=4シリング=1/5ポンドの価値があるとされたが、ほとんど流通しなかったようで、現在ではコイン蒐集家のあいだで高値で取引されているという。また、銅で作られていた硬貨は、1860年以降は青銅に変更された。
 硬貨にはこれだけたくさんの種類があるが、基本的には最小単位のペンスでカウントされることが多かったらしい。
「唇のねじれた男」で、たくさんのコインがポケットに入っていた描写がなされる。コインの種類がここまであると、乱雑に入っているコインの総額をカウントするのはかなり大変だったのではなかろうか。
 紙幣は5ポンドのものが発行された。


3.その他

 ビクトリア時代のお金の単位は非常に難解で、これは当時の社会においても風刺に使われるほど理解しがたいものとして定着していた。騙されないためには数学が得意であることとまで言われたが、子供も労働力としてあてにされており、国民皆教育がいきわたっていたとは言い難い。
 現代の金銭感覚に当てはめる試みも様々なサイトで行われているが、当人が生活していた身分階層によって金銭価値もかなり異なり、「〇ポンドはいくら」という換算も難しい。この点については、またしっかり勉強して挑みたい。

https://logicmgmt.com/1876/living/money.htm
http://www.katetattersall.com/british-currency-during-the-victorian-era-knowing-your-farthings-from-your-florins/
http://www.web40571.clarahost.co.uk/currency/PreDecimal/predecimal.htm
https://www.oldbaileyonline.org/static/Coinage.jsphttp://www.katetattersall.com/british-currency-during-the-victorian-era-knowing-your-farthings-from-your-florins/