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終末期医療における医師の役割

がん告知について、世論は急速に変化しており、平成元年では15%程度だった告知率は16年では94%に達している。
これは治療技術の進歩により治る確率が高くなったことも背景にあるが、
02年に行われた訴訟において、最高裁が「医師は患者家族への告知を検討する義務がある」とする判断を下したことが、
実質的な判例変更となり、以来世論の要請が高まったことが影響している。
法律には従うべきだが、告知に関して判例に従えば役割を果たしたと言えるのだろうか?

終末期医療においては、医師は病気を治す存在ではなく、
治らない病気について、その痛みや苦しみを取り除くことはできるが
優先順位は、その病気の治癒や延命から、あくまで病を含んだそのQOLの向上のお手伝いとなる。

がん告知についてはそれ自体議論を巻き起こすテーマだが、告知はあくまで医業の一部である。
ここでは、課題文の中で実際に医師がどういう役割であったかを整理したい。

例えば課題文はある具体的な若い末期癌患者について、その告知を行った医師の視点によって語られるエッセイだ。
医師によれば、がんはたとえ治らないとしても、失うのは命のみであり、
告知によって少なくともコミュニケーションの可能性がより豊かになり、違う世界を持てるとしている。

医師は、医業の専門家としての病状の評価を超えて、
告知の前後における、若い患者の終末期のあり方についての心からの気遣いを見せている。

課題文はあくまでエッセイであり、これをもって終末期医療における医師のガイドラインとするということまでは言えないが、
医療は、その技術のみならず、患者との医療的コミュニケーションを含んだものであることは確かだ。
例えば、精神的なケアのために、コメディカルとの連携も重要であるが、
患者にとっては職域はそれほど明瞭ではなく、医師自身が行わなくてはならない対話も存在する。
医師自身がある程度傾聴する役割を果たすことは不可欠だ。


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