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考えるな、感じろ〜横尾忠則の世界〜 (後半)

このコラムは、6月17日に訪れた横尾忠則現代美術館の「原郷の森展」について、大学生の視点から感じたことを自由に書いている。


これから始まるのは後半のコラム2.3である。

まだ読んでいない方は、前半から読んでいただきたい。


それぞれ違う学生が書いているため毎度前置きがあるが、ショート小説みたいに読んでいただけたら嬉しい。


それでは後半。


どうぞお楽しみあれ‼︎

INFORMATION

横尾忠則現代美術館

〒657-0837 神戸市灘区原田通3-8-30

開館時間:10:00~18:00(入場は17:30まで)

休館日:月曜日(祝日の場合は翌平日)、年末年始、メンテナンス休館(不定期)

観覧料:一般 700円/大学生 550円/70歳以上 350円/高校生以下 無料

各種割引のご案内:団体割引、障害者割引、コープこうべ会員割引、JAF会員割引など

その他のサービス:車椅子の貸出(無料)、コインロッカー(100円硬貨が必要、使用後に返却)、無料Wi-Fiサービス(1Fオープンスタジオで利用可能)

01.もう一度確認!ちょこっと基本情報

◆横尾忠則現代美術館

横尾忠則現代美術館は、兵庫県西脇市生まれの美術家・横尾忠則から兵庫県に寄贈・寄託された作品を収蔵している。それらの作品や横尾忠則と関わりのある作家の作品を提示することを目的とし、2012年11月に開館した美術館だ。

通常の展示はもちろんのこと、アーカイブルームや様々なイベントを行うオープンスタジオなど、ユニークな設備を備えている。

コレクションを軸に横尾作品に関連するテーマ展など、多彩な展覧会の開催を実施。国際的に高く評価されている横尾忠則芸術の魅力を兵庫県から、国内外にアピールしている。


◆横尾忠則

横尾忠則(1936年6月27日-)は日本のグラフィックデザイナー、イラストレーター、版画家、画家である。国際的に成功した日本人アーティストの一人であり、街中の「Y字路」を描いたシリーズ、文学者などの著名人のポートレートなど多様な作品を手がけることでも知られている。


◆「横尾忠則 原郷の森」展

【会期】2023年5月27日(土)〜8月27日(日)

2022年3月に出版された『原郷の森』(文藝春秋)に関連する横尾の作品を、小説から抽出した文言とともに展示することで、言葉のみで表された世界をイメージを加え展覧会として構築しようと試みるものである。

 『原郷の森』は、主人公Yが美術、小説、映画など様々な分野で名を残した著名人たちと時空を超えて語り合うものだ。

 横尾がつづる言葉と横尾が描く絵が織りなす森のような展示室に分け入り、半世紀以上の歳月をかけて形作られた横尾の芸術観を身体的に感じ取る機会にする。

https://ytmoca.jp



それでは本題‼︎

01.あんまり美術に関する造詣が深くないけど横尾忠則現代美術館に行ってきたレポ

先日、ヒョーゴ・ミュージアム・サポーターズの取材の一環で横尾忠則現代美術館に訪問してきました。現在実施されているのは「原郷の森」展です。横尾忠則氏が書き上げた「原郷の森」という小説をモチーフとした展示になっています。

ダンテ、三島由紀夫、ダ・ビンチ、ミケランジェロ…横尾忠則氏が影響を受けたといわれる人々に関する絵画が多く展示されています。

その時私が度肝を抜かれたのは、これ。

横尾忠則 「A.W.Mandala」2019

初めてこの絵を見た時の感想は「これ美術館に飾って大丈夫?」。そう感じざるを得ない衝撃的なものが描かれています。でかでかと描かれた自死を彷彿させるような形の縄。そして、縄の輪の中を通過するように描かれた“SOUL”の文字。かなりセンセーショナルな作品です。
私はあまり美術に造詣が深くないので「もしかしてワンチャン首つり用の縄じゃなくてそういう芸術的なモチーフだったりする?」と思っていたのですが…
学芸員さんがこの展覧会について解説をしてくださるキュレーターズトークで、がっつり「首つり縄」と説明されていました。嘘やん…

ですが、この首つり縄に隠されているのは、横尾忠則氏の大きな決意でした。

https://www.fashion-press.net/news/22177

こちらは横尾忠則氏の実質的なデビュー作となった「TADANORI YOKOO」です。横尾忠則氏は首つり縄をこの作品以降、トレードマークとして使用し始めたと言われています。当時横尾忠則氏は29歳。ここで一度自分のエゴを殺し、未来の自分を再生しようと決心したのです。
(私は某○曜日のダウンタウンのオープニングデザインに似てる~!という感想が出てきました笑オープニングデザインには横尾忠則氏は携わっている訳ではないようですが、影響を受けていそうですね。)

それ以降も自分のエゴを殺したい、という欲求を持ち続けたのでしょうか。その後の作品にも首つり縄は現れ続けます。今回の展覧会の「原郷の森」に展示されていた作品で私が特に注目したものはこちらです。

横尾忠則「経典と箒」2019

こちらは横尾忠則氏が手がけている寒山拾得シリーズのうちの一つです。寒山と拾得という中国の唐という時代の時代の僧・詩人をテーマにした作品です。こちらでも絵の上部の中央部分に首つり縄があるのが見て取れます。

この絵の下部分に注目してみましょう。

筆記体で“Ego is dead”と描かれています。日本語に訳すと「自我は死んだ」でしょうか。横尾忠則氏の作品の特徴として、同じテーマを何度も反復的に繰り返すのも特徴とされています。同じテーマを繰り返し描くことで自我、自分のエゴを殺そうともがいているように感じます。

どうでしょうか。サイケデリックな世界観に隠された横尾忠則氏の人間性が表れているように感じませんか?この不思議な横尾忠則ワールドにあなたも入ってみませんか?

原郷の森展は横尾忠則現代美術館にて5/27~8/27の期間で実施中です。ぜひご覧あれ~!

02.横尾忠則現代美術館
キュレーターズトークと5つのキーワード

始めに

横尾忠則さんの作品には、共通している点が数々ある。横尾忠則現代美術館で現在開催されている『原郷の森』の小説には、名前だけの人物(約501名)、そのうち言葉を発言する人物(約283名)が作品内に登場している。この中には、芸術家・動物・宇宙人・神様まで登場しており、この世にいない「亡くなった人」が登場しているという。学芸員さんは、「この登場人物は横尾さんの視点。だから自分の知識を捨てて読むべきである。」という言葉の通り横尾さんの世界観が満載の作品なのである。
 その『原郷の森』の作品には、「首吊り縄・ピンクガール・滝・Y字路・寒山拾得」というキーワードがある。作品の特徴として「反復」して様々な作品に使われている。

キーワードについて

○首吊り縄
 首吊り縄は、様々な作品に登場しています。この首吊り縄には、横尾忠則さんの思いがあるそうです。「エゴを消して様々なスタイルに挑む」という思いがあります。
 首吊り縄自体は、巻かれている部分がとてもリアルに描かれています。

最初の晩餐

○ピンクガール
 肌がピンクで目が大きく開かれていてグロテスクなのが特徴です。(この作品の特徴はとても横尾さんらしい作品である)

2枚目の画像は、絵の左下にはサインや日付が書かれているが制作年とは関係のない日付が書かれている。これは、横尾さんが好きな作家でもある「デ・キリコ」が作品に同じような方法を使っていたからだそうです。

モナリザとタトゥー



https://www.kobe-np.co.jp/news/odekake-plus/news/detail.shtml?news/odekake-plus/news/pickup/202006/13387362


○滝
横尾忠則の3つ目のキーワードは「滝」です。
横尾忠則は滝の飛沫を浴びると瞑想状態に入る、と語っています。その瞑想状態は異界に触れるようなもので、筆を握る時と同じ状態であるそうです。
今回の展覧会で見られる作品では《ミケランジェロと北斎の因果関係》に滝が描かれています。中央にはミケランジェロのダビデ像が描かれ、ダビデ像の中身にまで滝が入り込んでいます。ダビデ像の前後に滝が流れ、不思議な空間が広がっている作品です。

《ミケランジェロと北斎の因果関係》1990年、横尾忠現代美術館

○Y字路
横尾忠則は故郷である兵庫県西脇市のY字路を描いた作品を150点以上制作しており、彼にとって大きなテーマの1つと言えます。今回の展覧会でもいくつものY字路を主題とした作品が展示されています。同じ「Y字路」をテーマにしていても、描き方や作品全体の雰囲気が異なるのでぜひ見比べてみてください!

《YとRの交差点》2002年、作家蔵

○寒山拾得
このテーマは横尾忠則がコロナ禍でアトリエに籠もり作品制作をした際に精力的に描いたものの1つです。
寒山拾得、とは中国唐時代の伝説上の2人の僧のことです。文殊菩薩の生まれ変わりとも言われ、世俗から離れた暮らしをしており、後世の禅僧が彼らの振る舞いや生活スタイルに憧れ絵画として何度も描かれました。中国絵画では寒山は巻物、拾得は箒を持った姿で描かれます。しかし、横尾忠則が描いた寒山拾得は異なるものを手にしています。(是非展示室で探してみてください👀!)
昨年にはこの寒山拾得を描いた作品を中心に展覧会がつくられています。YouTubeでギャラリートークを聞くこともできます!


以上で、横尾忠則現代美術館訪問レポートは終わりである。


タイトルの「考えるな、感じろ」は横尾さんがよく言っているメッセージである。

色使いや、同じ絵を繰り返し描くことで何か意味があると考えてしまう。

知っている人物がいれば、なんでこの人の絵はこんな風に描かれているんだろう。

知りたくなってしまうのが横尾作品の魅力だと思う。

しかし横尾さんは何も考えないで作品を見て欲しいと言う。


展覧会を終えたあと、
なんで今まで行かなかったのか後悔があったが、このタイミングで行けてよかったと思えた。

帰り道、お互いこの作品が好きだという話をした。

横尾作品の圧倒さによって、言葉が出ず、
「なんかよかったね」
そんな語彙のない感想を少し。

でもそれがよかったのかもしれない。

(次回のヒョーゴ美術チーム取材記事もお楽しみに‼︎)

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