漆週目 ヒノエ “進”

カッコいい男が何故カッコいいか?それは常にカッコよくあろうとするから。

旅の途中で出会った少年。ヒノエ。飄々とした態度で望美に対して愛想と甘い言葉を振りまき、軽薄な調子で周囲を引っ掻き回す。一方で自分のことを語りたがらず煙に巻いた態度を崩さない。軽薄ではあるが軽率ではなく、頭脳と胆力に優れ合理的で策謀を張り巡らす。そんなヒノエは旅を続けるにつれて神子としての望美ではなく、一人の人間として望美を見つめ、護るようになる。そして次第に明らかになる、ヒノエの正体とは……。
語る前に、謝らなければなりません。個別ルートではヒノエのことなんか絶対に好きにならない、と息巻いていた僕ですが、無事ヒノエのオ\トコとなりました。悔しい!でもときめいちゃう……!というのも、ヒノエという男は常にカッコいいのです。元々ビジュアルは僕好みなビジュアルをしており、人を食ったようなニヒルな笑顔に丁寧に結われた三つ編み、見返り美人図のような立ち絵、甘い台詞と声。それで女性への気遣いや優しい声掛け。僕が女性だったら確実に惚れて拗らせていたでしょう。年齢が年齢ならヒノエ君に相応しい女にならないと、と勉強していたかもしれませんね。そもそも僕は軽薄で女好きのキャラに堕ちがちな傾向があります。うたプリの神宮寺レン、ワンピースのサンジ、アイドルマスターSide Mの伊集院北斗、仮面ライダーキバの紅音也、鳥人戦隊ジェットマンのブラックコンドル結城凱。しかし、ヒノエはただ女好きなだけではない。おそらく血筋もあるのでしょうが、煙に巻きながら好感度を上げる合理的な方法として望美ちゃんを祭り上げていたのでしょう。しかし旅を続けるにつれて頭のいい望美の姿に惹かれ、一人の女性として対等に向き合うようになります。これは体感的に熊野前後で頭の悪そうな選択肢を選ぶと今までだったら全肯定してくれていたヒノエが難色を示すような表情をして好感度が下がることがありました。ただ盲目的に女を尊敬しているわけではなく、頭のいい人に対しての経緯と礼儀を忘れない、頭のいいからこそ、知略の大事さを分かっているからこそ、好いた女にそういう”知”を求めるのかな、と感じました。僕は、最終決戦時にヒノエと望美ちゃんが背中合わせに戦うスチルがとても好きです。これは、護られる立場ではなく、共に肩を並べて戦う”友”となったことを証明しているように見え、やっとヒノエに追いついたんだな、とうれしくなったことを覚えています。
また、ヒノエの好きなところの一つに、男からも好かれる人間性があります。ネタバレになるのですが、ヒノエの正体は熊野水軍の頭であり熊野別当(別当とは神職であり熊野一帯の神社の長という意味)本名藤原湛増であることがわかります。実際藤原湛増は歴史上に弁慶の父として実在しており、熊野水軍を率いて壇ノ浦の合戦において源氏の勝利に貢献した人物として語られている。女性が相手の時に比べて粗野で乱雑、されど決して軽く見ているわけではなく、その乱雑さは「何かあってもこいつらなら期待以上の働きをしてくれる」という対等に見てくれてるからだと思います。だからこそ、乱暴で粗野な男共であってもヒノエのことを別当と慕い、彼の言葉に耳を傾けるのでしょう。これは強いだけの男でも、カリスマのある男だけでもなしえない、力と地位と人間が完成している男だからこそ成しえるものだと思います。そして、そんな男がすべてが終わった後に「お前を奪っていく」と告げるあの展開。ベタと言われたとしても、あの瞬間にヒノエが望美ちゃんを選んだことがとてもうれしかったです。「僕の元に来てほしい」と懇願する弁慶と対になる関係性ですね。
そして、これは僕の解釈なのですが、ヒノエには英雄と呼ばれた藤原湛快という父がいます(ヒノエ√を終えた後、別キャラのルートでイベントがあった際、息を吐くように望美ちゃんを口説いていたのでヒノエのナンパ癖は血筋だと思います)。ヒノエは父、湛快から今の地位を受け継ぎ、熊野水軍を率いていますが、ヒノエはそのことについて「英雄まで行ったのに隠居を決め込みやがった」と表現していますが、これはヒノエの中で偉大な父に追いつくことが一つの目標になっていたのかな、と感じています。そんなヒノエは天下分け目の海戦にて金星を挙げ、父にも負けず劣らぬ戦績を挙げました。これについて、ヒノエ√のテーマの一つとして、父を超えるというテーマがあるのかなと思い、そしてあの最後の決戦を通して、父を超えるという男として一つのハードルを越えたということなのかな、と私は解釈しています。
最後に、何故僕がヒノエのことが嫌い(と言い続けなければいけなくなった)かを説明しましょう。それはかっこよくて強くて女の子に優しくて一番言ってほしい言葉を言ってほしいタイミングで言ってほしい言葉以上の言葉を言ってくれる、知識も地位も力量も高い、あまりにもできすぎたスーパーヒーローだからです。そう、始めからヒノエに落ちていたんです。僕は。

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