【第5回】なぜ国策研究会は早稲田大学唯一の保守サークルなのか

こんにちは。
早稲田大学国策研究会75期副幹事長の橘です。

春学期の間、新型コロナウイルスの影響で早稲田大学のサークルは活動休止を余儀なくされていましたが、8月1日より学生会館の利用が段階的に許可され、徐々に活動再開するサークルが増えているところです。我々国策研究会も、10月までを第2新歓期と位置づけ、新入生を歓迎する準備を整えております。

さて、私たち国策研究会は、早稲田大学唯一の保守サークルを謳っています。早稲田大学には3000ものサークルがある中で、他に保守サークルは存在しないということになります。このことについて、今回は私の見解を示した上で、国策研究会の今後の展望について皆さんと一緒に考えていきたいと思います。

それにあたって、早稲田大学国策研究会の綱領をご紹介したいと思います。最初の綱領が定められたのは昭和19年(1944)3月10日、今から76年前です。なお、この日を創部記念日としており、2021年3月10日には創部77周年記念式典を予定しております。OBの方々におかれましては、ぜひご出席をお願いいたします。

 「国策研究会は、国体至上の顕現である天皇陛下を護持し奉り、もって四海に皇威を光被し、八紘を一宇に安泰ならしむるが、会是である。我が会の淵源は、肇国(ちょうこく)以来2600年、ようやく王政復古の御世に至り、明治15年大隈老侯興国の大志、ここに早稲田大学創設せらる、而して小野梓の主する所の「義務あらざるところ、権利あるべからず」に始まる。
 臣民と祖国との紐帯に鑑み、昭和不朽の聖戦たる今大東亜戦争を完遂し、もって東亜千年の安寧を樹立するに、学徒たる我ら、本朝のとこしえの御盾となりて、国運興隆に寄与せんとす。しかるに我ら、学は(北条)実時に遠く及ばず、機略は楠(正成)公に遠し。よりて、東亜の干城神州日本の最高学府たる早稲田大学に集ひ、帝国智嚢の竿頭たるべく、蛍火に巻を開き、雪光に筆をめぐらす。意を遠く馳せれば、本朝には英雄豪傑、雲霞のごとく、尊王輔弼の臣あまたなり。その伝統に則り、ここに学の綱領を樹て、学の指針とす。諸学以て良知に銘じ、励むべし。」

要するに、「将来、国際社会における日本の影響力を高める人材になるために、よく学に励もう」というのが国策研究会の趣旨です。簡潔で素晴らしいミッション・ステートメントだと思います。

そして時は昭和45年(1970年)。学生運動真っ盛りの混乱期において、早稲田大学国策研究会は反共産主義陣営の先鋒を担うことになります。

 「今共産主義の脅威日に隆く、暴徒日に狂いたり。世に心あるの士、密に抗するあるも、勢及びがたく、宰相の営為、江月に空し。忸怩たるは我が早稲田、暴徒の拠と化し、之が巣となる。ここに我ら再び一層奮励努力すべく、いよいよ以て起つべし。しかるに先人の綱領見るべきあるも、時宜に適うべからず。幾は変じ参伍考量を要す。拠りてこれを改変し、諸学に披瀝す。ようよう銘じて学に励み、国運回天の大事に参画すべし。」

超訳すると、「早稲田が共産主義の暴徒たちの巣窟になってしまっている。我々が決起するしかない」ということです。そして時は流れ、2006年…

「国策研究会も開会60余年を経て、新たな時代に対応すべく、新たなスタートを切るときが参りました。既に東西冷戦も終わり、イデオロギーも過去の産物となった今、われわれは、早稲田大学という今も変わらぬ最高学府で学ぶ身として、国に対する責任があると考えております。そこで、今時綱領というわけではありませんが、学問には指針が必要なので、その方向性というべきものを示そうと思い、再びこれを制定します。これは、日本が進むべき方向ともリンクするものと考えていただいて結構です。部員の皆さんにおいては、これを軸に勉強会を進めてください。」

これが、国策研究会の現在の綱領の前文です。(全文はこちら
このあと、憲法改正、新しい教育、国益重視の外交、EU的アジア経済圏の確立、国土環境の保全、非核三原則の再検討、自衛隊の国軍化、伝統的道徳の復興、と8項目にわたって詳述が続きます。反軍演説のパロディも入っていて、読み物としても楽しい内容です。

連綿とした歴史の流れを感じます。私たちは、この歴史の積層の上に立ちます。まさにこの歴史の重みこそが、国策研究会と他のサークルとを区別しているといっても過言ではありません。活動内容はどの政治サークルもそんなに差はなくて、日頃はディベートやディスカッション、勉強会、講演会の開催、合宿といった活動を通じて、切磋琢磨しながら一生の友だちを得るというのが大学のサークルの一般的な醍醐味です。国策研究会は、これに加えて、日本の歴史を自分ごととして捉え、日本全体を議論する広い視野の獲得を目指します。ここで得られる志は、一生の宝物となるでしょう。この境地が保守思想の真髄であって、国策研究会が早稲田大学唯一の保守サークルたる所以なのです。私たちは、後世の人々からすれば偉人であって、私たちの子孫が日本の繁栄を享受できるかどうかは、ひとえに私たちがどんな未来を描くかにかかっています。輝かしい未来は、待っていたら向こうからやってくるものではありません。むしろ、少子高齢化による内需の減少、GAFAMなど超巨大テック企業による市場独占といった社会の潮流の変化による日本の国際的プレゼンスの低下は目前に迫った未来です。もし私たちが指を加えてただ一人の一般国民として眺めて、残すに値しないような未来を子孫に残したならば、将来世代からの誹りは免れないでしょう。しかし、もし私たちが意を決して、必死で勉強して日本の発展に貢献しようともがいたならば、日本の八百万の神々は必ずや見守ってくださるでしょう。

国策研究会では様々な領域が議論の対象になりますが、大きく「思想と政策」と分類できるでしょう。日本の保守思想家の分析に興味のある人もいれば、日本が今後取るべき政策を考えるのが好きな人もいます。それぞれが自分の強みを発揮して相互に知見を共有することで、みんなの視野が広がるのです。政策を議論するにあたっては、イシューの重要度が高いものから議論していくことが重要です。現代日本には議題の数が多すぎて、手当たりしだいに議論していたら大学生活が重要度の低い議題だけで終わってしまうからです。将来、国際社会における日本の影響力を高める人材になるためには、重要度の高いイシューを見極めることが非常に重要です。

今後の国策研究会は、在りし日の松下村塾のような偉人輩出サークルへと、30年以上かけて脱皮していくことになるでしょう。そして、国策研OBが世界の安全保障や経済を動かしていることを夢見ています。

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