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ロータスコンボ解体新書 ~構築考察編~

■前書き

所見の方は初めまして、お馴染みの方はお久しぶり。
自己紹介すると、その昔に晴れる屋で神だったりパイオニア王だったりしたプレイヤーで、長らく「ロータスコンボ」を回している人である。

今回はデッキに入っているカード75枚を、その採用理由から背景まで全て語り尽くす。
内容的にはガチ勢向けなので、基本的にはデッキの動きを理解している前提となる。

別の記事にて動きやプレイング等を解説しているので、興味がある場合はまずこちらをどうぞ。

記事の大部分は無料だが、有料部分には「サイドチェンジについての考え方・インアウト」を追記している。
記事を評価して下さった方や、現環境での「ロータスコンボ」に興味があるプレイヤーは是非購入して欲しい。

■サンプルレシピ

今回参考にするのは、先週のパイオニアチャレンジで準優勝したレシピ。

コメント 2021-10-31 114518


メインボード(60)
土地(22)
1《樹皮路の小道》
1《爆発域》
4《植物の聖域》
4《睡蓮の原野》
1《冠雪の森》
3《神秘の神殿》
4《演劇の舞台》
4《ヤヴィマヤの沿岸》
クリーチャー(12)
4《樹上の草食獣》
1《遵法長、バラル》
3《願いのフェイ》
4《砂時計の侍臣》
呪文(26)
3《バーラ・ゲドの復活》
2《出現の根本原理》
4《見えざる糸》
2《深淵への覗き込み》
4《熟読》
4《可能性の揺らぎ》
4《森の占術》
1《時を越えた探索》
1《感電の反復》
1《全知》
サイドボード(15)
1《深淵への覗き込み》
2《神々の憤怒》
1《副陽の接近》
1《一瞬》
1《記憶の氾濫》
2《神秘の論争》
1《九つの命》
1《至高の評決》
2《思考のひずみ》
2《精霊龍、ウギン》
1《萎れ》


■メインデッキ考察

検討する要素
①役割分類
②必須パーツとフリースロットの確認
③環境との付き合い方
④根本原理の意味

①役割分類

「ロータスコンボ」のメインボードは以下に分類される。
・土地
・コンボに寄与するマナ加速
・その他マナ加速
・フィニッシュ手段
・その他

大まかに分類することで、採用理由の基礎になる部分を把握する。

・土地
《睡蓮の原野》と、それに捧げる生贄。
ただし《森の占術》はここに含むとする。(土地以外のスペルにならないため。)
土地2+《睡蓮の原野》が初手に必須であり、メインデッキの29〜30枚を占めるにも関わらず、引きすぎるとマナフラッドする。
《バーラ・ゲドの復活》の存在が、どれだけこのデッキに貢献しているかよく分かる。

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・コンボに寄与するマナ加速
《見えざる糸》、《熟読》、《砂時計の寺臣》のこと。
説明不要のコンボパーツであり、始動役。

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・その他マナ加速
《樹上の草食獣》、《狼柳の安息所》、《不連続性》、《遵法長、バラル》などが該当。
4キルするには必須だが、増やせばマナフラッドの要因になる。
《睡蓮の原野》で生贄にも出来ないこの枠は、枚数調整に大きなジレンマを抱えている。

・フィニッシュ手段
《深淵への覗き込み》《願いのフェイ》《出現の根本原理》など。
ロータスコンボは必ず《深淵への覗き込み》を唱えて勝つデッキなので、その枠は多い方が良くて、3〜4枚あるべき。
最初から持っていれば余計なドロースペルにマナを使わずに済み、多めに入れておけば《熟読》のみで掘り当てることも出来るため。

・その他
《時を越えた探索》や《感電の反復》などのユーティリティスペル。


この分類から一番に把握して欲しいのが、
デッキを掘れるカードがどれだけあるのかということ。

このデッキのことを「チェインコンボ」という人も居るが、そんな事は全くない。
そのような声が絶えないのは、ひとえに《熟読》がマナを増やしながらカードを引く点や、《死の国からの脱出》があった頃のイメージからだと推測する。
しかしながらこのデッキの本質はむしろ「トロン」であり「ポスト」に近い
デッキの大部分はマナを出すためだけにあり、用意したマナで勝ち手段を唱えているのである。

実際に数えてみる。
土地が25枚。《樹上の草食獣》、《森の占術》、《見えざる糸》が12枚。その他カードを引けないカードが3枚(特に《願いのフェイ》等)もあれば、合計で40枚。
実にデッキの⅔が、いわゆる「チェイン」とやらには貢献しないのだ。

《深淵への覗き込み》の枚数を絞ってはいけないという主張の根源はそこにある。
《死の国からの脱出》亡き今、コンボターンにマナ加速出来る回数というのは決まっていて、《見えざる糸》、《熟読》、《砂時計の寺臣》の総数が限度なのだ。
コンボ始動する際に《深淵への覗き込み》が無ければ、ドローソースを使って探しに行く必要がある。
ところが勝つためには《深淵》の7マナ+《糸》の2マナで計9マナ必要で、安定して辿り着くにはそもそも最初から手札に持っていた方が楽なのは一目瞭然だろう。

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更に言えば、ドローソースを使用すること自体に、マナの消費以上のリスクがある。
デッキの大部分がカードを引けない「行き止まり」である以上、《熟読》で引いた3枚や《時を越えた探索》の7枚が「全て土地・マナである」可能性は決して無視出来ない。
構造上、大掛かりなチェインを狙うアクション自体にリスクがあるのだ。

土地を優先してマリガンする都合上、スペル次第でどうしても仕掛けが5ターン目になりがちである。
そのため、《睡蓮の原野》が揃って動けるようになったタイミングでそのまま勝利出来る構築をすべきだ。
撃てば勝てる《深淵への覗き込み》(及び直接《深淵》をサーチ出来る《出現の根本原理》)の枚数こそが、コンボの安定性に直接寄与するのだ。

②必須パーツとフリースロット

必須パーツとは何だろうか。
・土地25枚
・《樹上の草食獣》4枚
・《森の占術》、《巧みな軍略》or《可能性の揺らぎ》各4枚
・《見えざる糸》、《熟読》、《砂時計の寺臣》各4枚
・《深淵への覗き込み》1枚以上
この50枚に間違いは無いだろう。

それではサンプルレシピにおけるフリースロット、即ち残りの10枚程度について確認しよう。
今現在は必要と判断してデッキに入れているが、下記のカードらは環境や考え方の変化で入れ替わる枠と認識して欲しい。


・《願いのフェイ》3枚、《首謀者の取得》0枚
何らかの勝ち手段が必要なこのデッキにおいて、《願いのフェイ》は対アグロのブロッカーになるという点が最も優れている

例えば《神秘の探求者、ジェイス》などをメインボードに入れることで、ウィッシュボードを利用せず構築することは理論上可能だが、結局勝利するためだけのカードには《願いのフェイ》のような柔軟性が無いのだ。
ブロッカーを起用せずに「ウィノータ」「ボロスバーン」の蔓延るパイオニアを勝ち抜く事は難しいのではないだろうか。

《首謀者の取得》は「五色ニヴ」の《殺戮遊戯》を意識したカードで、勢力を弱めている現環境においては必須とは言えない。

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・《遵法長、バラル》1枚
マナ加速については各種死屍累々になるまで試した結果、《バラル》こそが必要不可欠な1枚という結論に至った。
候補は3種あって、《狼柳の安息所》、《不連続性》、《遵法長、バラル》だ。
(《成長のらせん》は2ターン目にキャスト出来るマナベースではなく、断念。)

《遵法長、バラル》
マナを加速し過ぎるカード。
あまりにも加速し過ぎて《演劇の舞台》でのコピーが不要になるほど。
単なるクリーチャーなので「行き止まり」になる恐れはあるものの、追加のブロッカーでもあり除去を誘えるので、相手を遅らせる効果も見込める。
こちらに干渉して来ない対戦相手には最強。「スパイ」亡き今、主にミラーや「ウィノータ」。

《不連続性》
《睡蓮の原野》の2枚目を有効活用出来るのが固有の強み。
フラッドしている状況で引いた場合にも、相手のターンを飛ばすことで実質的なキャントリップとなり、「行き止まり」にも強い。
加速した結果は土地2枚を温存するだけなので、《時を越えた探索》との相性も悪い上に、コンボ自体への寄与度はやや微妙か。

《狼柳の安息所》
中途半端で、優先順位は低い。
《バラル》のように《演劇の舞台》が要らないという程には加速出来ないものの、《不連続性》よりはマシ。
しかし単なるマナであってブロッカーにもならず、「行き止まり」の1枚になってしまうのが厳しい。

以上、オプション的なマナ加速としては《樹上の草食獣》+1〜3枚程度であり、環境の速度によって枚数は変わる。
枚数を増やせば4キルは増えるが、マナフラッドも増える。
現在の「イゼフェニ」と「ラクドス」を中心としたメタゲームでは1枚で良いと判断している。
2枚目以降を追加する場合には《不連続性》を入れるだろう。

・《時を越えた探索》1枚
デッキ半分以上を土地系不純物で埋めているため、最強のドローソースであることは間違いない。
しかし唱えるのに1ターンを費やすのならともかく、「探査6」を支払うことが出来るのは普通なら1ゲームに1回だろう。
《巧みな軍略》とは非常に相性が良く、《出現の根本原理》を入れていなければ複数枚採用可能だ。

・《根本原理》パッケージ
後述。

・《感電する反復》1枚
呪文のコピーになるというのは、コンボパーツの枚数が限られるため非常に優秀。
実質的に5枚目以降の《見えざる糸》、《熟読》である。
しかも恐るべきことにフラッシュバックまで付いており、打ち消しを構えるデッキに対して余りにも強力。

問題になるのはあくまで《睡蓮の原野》が準備出来た後のカードということ。
色マナの都合もあって、4キルには貢献しない。
複数枚積むのであれば、その分何を抜くのかよく検討すべきだと思う。


フリースロットについての検討で、「ロータスコンボ はトロン」という主張の意味を多少は伝えられたのではないだろうか。

土地を揃え、それからフィニッシュを決める。
どちらに偏ってもいけない。バランスが重要であり、その意味では間違いなくコンボデッキらしい構造だと思う。

③環境との付き合い方

「ロータスコンボ」は(コンボにしては)比較的環境から受ける影響が薄い。
パイオニアでは除去する側のデッキが常にそれなりの立ち位置をキープしており、中々アグロデッキが全盛にならないからだ。
(前期の「スパイ」を除く。アレは本当に天敵だった。)

加えて《減衰球》以外に致命的と言えるカードが非常に少なく、
(最近はメインボードから《エメリアのアルコン》を搭載したデッキもあって、これには流石に勝てない。)
遅いデッキが汎用的な対抗手段を持たないことも相性の固定化に拍車をかけている。

7マナ呪文をフィニッシュに据えた現在の「ロータスコンボ」はおよそ4.5キルデッキ。
勿論、無妨害が前提である。それを踏まえて相性を見てみる。

・遅いデッキにはとにかく強い
《演劇の舞台》、《見えざる糸》、《思考のひずみ》、《感電する反復》。相手が除去を重ね引いてしまう、相手が中々フィニッシャーを引かない。
勝ち筋はいくらでもあって、こちらは呪文を1つ通せれば勝ちだ。
「イゼットフェニックス」「青白コントロール」「五色ニヴ」等

・速いデッキにも案外戦える
《樹上の草食獣》、《願いのフェイ》がとにかく優秀。
クリーチャーで殴るアグロの天敵と言えるこのブロッカーらは、《稲妻》が無いパイオニアでは2マナ級火力が無いと場を離れない。
この鉄壁を超えて4キルを決められるアグロは中々いない。
「ボロスバーン」「ウィノータ」等

・撹乱的アグロに弱い
コンボデッキとして当然ではある。
高速クロック+ヘイトベアorハンデスor打ち消しの構えは、デッキのほぼ全てをコンボに費やすこちらの動きに対し、あまりにも致命的だ。
「スピリット」「アーティファクトの魂込め」「ラクドスアルカニスト」等

「ラクドス」については超物量のハンデスから繰り出される《クロクサ》のクロックが速過ぎるため、ここに含む。

速いデッキに対して「全速力でコンボする」ことや、遅いデッキに対して「余裕を持って妨害を乗り越える」ことは可能でも、
撹乱的アグロに対して「妨害を乗り越えつつ最速でコンボする」ことは出来ないということだ。

・速やかに《睡蓮の原野》を揃えてコンボ可能な状態に持ち込む
・コンボ可能な状態から《深淵への覗き込み》の解決に辿り着く

この両者は全くの別物であり、如何にして高水準に両立させるかが構築の見せ所である。

④《出現の根本原理》について

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メリット
・7マナで勝てる。(=《見えざる糸》が無くても勝てる。)
・《深淵への覗き込み》の水増しになる。
・ナーセットに影響されない。

《根本原理》パッケージを採用して強く実感したのが5キルの安定感向上である。

《深淵への覗き込み》は、ドローの後にマナを出すための2マナ、つまり計9マナ必要とする勝ち手段だった。

ところが《出現の根本原理》に浮きマナは必要無い。
何故なら《全知》を直接場に出してしまうか、《熟読》を唱えられるからだ。

これならコンボ始動の際に《見えざる糸》が無くてマナが足りない、などのケースは激減する。
《睡蓮の原野》2枚と《砂時計の寺臣》があれば良いのだから。

更にフィニッシュスペルの枚数を増やすことは、チェインに潜むリスク(マナ消費・「行き止まり」)を回避することに繋がる。
それらを総合した結果、コンボ成立の安定度が上がったのだ。

また、《覆いを裂く者、ナーセット》への対抗策としての一面もある。
ほぼ全てのパイオニア低速デッキが、ミラーおよびコンボデッキに対する強烈なアンチとアドバンテージ源を兼ねて、《覆いを裂く者、ナーセット》を採用している。
当然「ロータスコンボ」としてはその存在を意識して構築すべきである。《熟読》や《深淵への覗き込み》が封じられる中でも、《出現の根本原理》は問題無く使用可能だ。

具体的には《全知》を見せ札にしたパイルが有効で、残りの手札やマナ状況に大きく左右されるものの、下記のパイルが有力候補。
・《全知》、《熟読》、《願いのフェイ》
→2マナ浮き前提だが、《熟読》をスタックに積んだ状態で《成就》から《一瞬》を《ナーセット》に撃つ。
・《全知》、《見えざる糸》、《願いのフェイ》
→浮きマナが無ければこちら。同じく《一瞬》や《ウギン》を加えて対処する。
・《全知》、《見えざる糸》、《熟読》
→手札に《精霊龍、ウギン》がある場合。

勿論、《全知》が場に出た場合に無茶苦茶出来る残りの手札が前提となる。

《深淵への覗き込み》はウィッシュボードとの兼ね合いでメインに3枚までしか入れられない以上、《出現の根本原理》を採用することは必然なのだ。

■サイドボード

検討事項
①ウィッシュボード
②フィニッシャー
③ウギンの意味
④その他の採用理由

①ウィッシュボード

前提として、メイン戦におけるウィッシュボードというのは、勝ち確定の状況でフィニッシャーを連れて来るために使うものである。
例外として、下記のような場合には頼れるウィッシュボードを使用することになる。

メインからメタカードを出される
→《一瞬》、《萎れ》、《ウギン》等

殴り殺されそう
→《九つの命》

手札が枯れた
→《深淵への覗き込み》、《記憶の氾濫》

相手がコントロール・コンボ
→《思考のひずみ》

流れ自体はサイド後も大きく変わらないが、必要となることが目に見えている場合はサイドインすべきである。
アグロ相手に《成就》を唱えるにはマナとターンが足りず、コントロール相手は常に《神秘の論争》が立ち塞がるからだ。

常時サイドに固定すべきなのは《九つの命》と《深淵への覗き込み》くらいのもので、それ以外はサイドインの機会があり得る。

②フィニッシャー

・《神秘を操る者、ジェイス》の不採用

このカードは「ロータスコンボ」におけるフィニッシャーの要件を満たしていない。

メリット
・《全知》不採用が可能
・アドバンテージソースとして運用することがギリギリ考えられなくもない

・《全知》不採用
《遵法長、バラル》や《狼柳の安息所》、《感電する反復》などでデッキ全体から生み出せるマナ量を増やすことにより、《全知》を使うことなくライブラリを掘り切ってエクストラウィンすることが可能だ。
これでサイド枠を1枠空けることが出来る。

しかし、《全知》の代わりに上記マナ加速を入れるためメインの枠を使っており、《発生の根本原理》型の場合は《全知》が抜けることは無い。
手札破壊や消耗戦などでデッキからマナ加速の余力が失われる事態も想定していない。

総じて上手くいっている場合は良いが、《全知》採用型と比較してリスクを孕むことは覚えておきたい。

最近見る《感電する反復》を複数採用したタイプでは、《苦悩火》がセットで採用されて構築を見るが、これもあまりよく分からない。
《苦悩火》X=20が撃てるのであれば《副陽の接近》を2回唱えられるので、
《ジェイス》もろとも不要ではないかと思うのだが……有識者求む。

・アドバンテージ源
確かにカードは引けるが、《ジェイス》が唯一の勝ち手段である場合、除去されれば一巻の終わりである。普通やらない。

デメリット
・カードを引かないと勝てない
・ライブラリを掘り切らないと勝てない
・除去されると勝てない

全てが勝利条件としての信頼性の低さについてだ。

・カードを引かないと勝てない
テキストに書いてある通り、場に《ナーセット》や《概念泥棒》が居ると勝てない。
これは案外馬鹿に出来ない話で、《副陽の接近》なら2ターンに分けて勝ちに行く盤面でも無防備を晒さなければならないということだ。

・ライブラリを掘り切らないと勝てない
《殺戮遊戯》で《熟読》を抜かれた場合や、消耗した後で《深淵への覗き込み》を撃つと、ライブラリを削り切れないことがある。

・除去されると勝てない
これに関しては余剰マナでインスタントのドローを構えれば回避出来るため、上2点よりも比較的問題としては小さい。
とはいえデメリットはデメリットであり、マナ的・カード的な余裕を要求していることに変わりは無い。

③ウギンの意味

《精霊龍、ウギン》は最強のサイドボードだ。

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6マナまでの有色パーマネントを一方的に、7マナすら相打ち可能で、全体除去出来る。
その後はミシュラ・速攻持ち以外の後続クリーチャーを除去し続け、奥義にたどり着けば勝ち。
そうでなくとも稼いだ忠誠値で再度の小マイナスによる盤面整理くらいはやってのける。
ヘイトパーマネントを退けた上で時間まで稼いでもらっては、コンボを決められないはずもない。

「ウィノータ」「ラクドス」「イゼフェニ」「スピリット」など、最古の龍は幾度となく対戦相手を打ち砕いて来た。

断言するが、《精霊龍、ウギン》は2枚必須である。


vs《弁論の幻霊》

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1ターンに1回しか呪文を唱えられない状況では、当然勝つことは出来ない。
しかしながら《ウギン》なら盤面を更地にした上、単体で勝ててしまうのだ。

ヘイトベアに対してバウンス等の単体除去を使えばいいかと言うと、「ウィノータ」や「スピリット」等の横に展開するデッキ相手にはやや難しい。
メインで退ける場合はマナを余計に使った上でコンボを決めなければならず、相手ターンに除去するのであればそのターンはフリーに殴られることとなる。

そこで全体除去だ。
しかも単なるクリーチャー向け除去では《無私の霊魂》にカバーされたり《エシカの戦車》に殴り切られる恐れもあるところ、
《精霊龍、ウギン》なら撃ち漏らし無く、後続もシャットダウン出来るので最高である。
土地を揃えた上で「単体除去」+「コンボパーツ」が必要となれば非常に要求量は厳しいが、
《ウギン》であればゴールを兼ねているため、これだけあれば良い。

ここで重要なのは、呪文を唱えずに8マナ用意出来るかどうか

《樹上の草食獣》、《砂時計の寺臣》によるマナ加速があれば十分可能だ。
特に相手からの除去を考慮する必要が無い以上、《砂時計の寺臣》は実質的に3マナ加速を果たす。
除去されるリスクよりも《精鋭呪文縛り》に落とされるリスクを考慮して、《砂時計の寺臣》は積極的に戦場へと繰り出そう。

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ヘイトベアとのスピード勝負という観点から、《精霊龍、ウギン》をウィッシュする余裕は無い。
デッキに1枚ではドローソースすら満足に撃てない状況で見つけられる確率は低い。
《ウギン》2枚をサイドに用意すべきである。


vs《覆いを割く者、ナーセット》

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コントロールとの戦いではマナ差を広げつつコンボの構えを崩さないことが重要だ。
「ロータスコンボ」側の方がマナを伸ばすスピードが速いため、常に圧をかけ続けて相手のソーサリーアクションを縛る。
逆にこちらはインスタントアクションや多重仕掛けでマナを寝かせたり、《思考のひずみ》などで打ち消しを乗り越えるのだ。
そのためには土地を揃えつつ始動パーツを探す必要がある。

しかしながら《覆いを割く者、ナーセット》が出てくると話は異なる。
何故なら、彼女が戦場に居る限り《熟読》と《深淵への覗き込み》は沈黙する
これはコントロール側にとっては「死なない」と言い換えても良い。
《ナーセット》はフルタップの危険を犯してでも場に出すべきカードであり、対コントロールの焦点なのだ。

ここで重要な考え方は、相手のアクションにリスクを付けることである。

例:「青白コントロール」の5ターン目、《睡蓮の原野》と《演劇の舞台》を揃えた「ロータスコンボ」に《ドミナリアの英雄、テフェリー》を出して2マナ構えるべきか。
A.《見えざる糸》や《感電する反復》で突破される危険がある。

この場合、コントロール側としては「相手は打ち消しを乗り越えてコンボ可能な体勢が整っているかもしれない」と判断すべきである。
ロータス側としては、仮にフルタップで《テフェリー》が出てきたなら、《神秘の論争》でぶっ潰すなり2マナ構えを乗り越えるなりすべきなのだ。

それでは《ナーセット》の場合はどうだろうか。

例:5ターン目に《ナーセット》が出てきた。
A.《精霊龍、ウギン》や《出現の根本原理》を通すチャンスである。

《覆いを割く者、ナーセット》に対する最大の回答は《精霊龍、ウギン》だ
プラスで《ナーセット》を落とせる上、奥義まで非常に速いため攻防が一瞬で逆転する。
仮に《テフェリー》のマイナス等で無理やり触りに来たとしても、その隙にコンボを決めてしまえばよい。アクティブになった《熟読》の出番だ。
かかるマナを考慮すると、これも直接手札にあることが望ましい。

別解としては《出現の根本原理》から《全知》を持ってくる事だろう。
その場合でも《成就》から《精霊龍、ウギン》やバウンスなどを使うことになる。
よって、メインとサイドそれぞれで《ウギン》を使うために2枚必要なのだ。

相手へのリスクを付けるという考え方をすれば、バウンスや単体除去だけでは不足している。
「《ナーセット》への干渉手段」+「勝ち手段」+「打ち消しを乗り越える手段」が必要となれば、デッキへの要求量は跳ね上がってしまうのだ。
《弁論の幻霊》と同じく、《ナーセット》への干渉手段とゴールを兼ね備えた《ウギン》こそが最高の回答手段となる。


④その他の採用理由

コンボパーツを除くと、サイドボードで真に必須と言えるのは《神秘の論争》、《思考のひずみ》程度。
それ以外は全て似た役割のカードで代用可能だったり、環境を見て入れ替える場合があるだろう。
大まかな役割分類毎に確認しよう。

・全体除去枠 3〜6枚程度
現在:《神々の憤怒》2枚、《至高の評決》1枚、《精霊龍、ウギン》2枚
候補:《影の評決》等

多ければ多いほどアグロデッキに強い。
重ね引いてフラッド死しては意味がないので、理想は1枚目で盤面を抑えて《精霊龍、ウギン》を間に合わせること。
《エメリアのアルコン》から《弁論の幻霊》への移行が進んだ関係で、現環境では《至高の評決》を採用している。

・置物干渉枠 1〜3枚程度
現在:《萎れ》1枚、《一瞬》1枚
候補:《虚空の罠》

《減衰球》に触るため、ある程度は必須。
しかしハッキリ言って《減衰球》が流行るようであれば、このデッキを使うことを諦めた方がマシだろう。
《萎れ》で触りたいカードとしては、直近だと《大歓楽の幻霊》、《弁論の幻霊》、《ボーラスの城塞》、《ジェスカイの隆盛》あたりか。

・ドローソース 0〜2枚程度
現在:《記憶の氾濫》1枚
候補:《覆いを裂く者、ナーセット》、《精神迷わせの秘本》、《時を越えた探索》

環境次第で必要性が大きく変わる枠。
「ラクドスアルカニスト」や「青白コントロール」を意識して採用。
インスタント・フラッシュバックに比重を置き、《記憶の氾濫》を選択した。
特に「ラクドス」には、墓地からインスタントで複数枚のカードを引けば対応されないのが強み

・打ち消し 2〜3枚程度
現在:《神秘の論争》3枚
候補:なし

打ち消しを多く取ることは推奨されない。
土地を重んじる都合上、カウンターを複数枚引いてしまうとコンボ始動のためのカードが足りなくなる恐れがあるし、そもそも《ドビンの拒否権》はカウンター出来ない。
《神秘の論争》の役割はこちらのカードを通す「攻め」ではなく、相手のカードを通さない「守り」なのだ。

唯一、「スピリット」にのみ序盤中盤終盤全てにおいて複数枚欲しい。
クリーチャーをカウンター出来るため、常に腐らないからである。
そのため余りに環境に多い場合は3枚目を投入するが、専用サイドになる点に注意。

・対コントロール、コンボ 1〜2枚
現在:《思考のひずみ》2枚

オンリーワンの性能を持つため、特にコメントは無い。
非クリーチャーコンボであるミラーや「ジェスカイ隆盛」にも効果的。
現在は「青白コントロール」が非常に強力なので、枚数は減らさない方が良いだろう。

・対バーン 1〜2枚
現在:《九つの命》1枚

これまたオンリーワン。
「ボロスバーン」が環境から消滅すれば不要になるかも。逆に、バーンが多い場合は2枚目を検討しよう。

■終わりに

以上で75枚について確認し終わった。
デッキが何を必要としているかを考え、環境に存在するカードと向き合って構築するというのは奥が深く、終わりのない行為だ。
様々な考え方が存在するからこそ、自分の考え方を言語化することに意味があると思う。

今週末の「The Last Sun2020」が非常に楽しみだ。

ここまでお読みいただいた方に感謝を。また次の記事でお会いしたい。

本稿は結構な文量になったこともあり、内容を評価していただけた方や、次回を期待していただける方からのご支援をいただけると幸甚である。
記事の購入者様には御礼として、ボーナストラックの「サイドチェンジ」を贈呈する。
直近のメタデッキ5つとのサイドチェンジと意識すべきポイントを述べる。

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