令和５年初場所 幕下５枚目以内全力士回顧 德勝龍（西２枚目）
本当に上がれて良かった・・・最近のケースを踏まえるとまったく安心できない情勢でしたからね。。
ってことで、今回は無事に関取返り咲きを遂げ地元へ帰ってくるベテラン德勝龍の初場所を振り返っていきましょう。
２日目 vs友風 押し出し 白星（１－０）
互いに頭で当たり、德勝龍当たり勝って左差し。右で抱えながら赤房へ出て、友風が右から突き落とさんとするのにも左を突きつけて対応、寄り倒しかに見えたが、德勝龍が土俵の外に右手を着くのも早く、友風が体が飛ぶのと同体と見て取り直しとなった。
二度目は友風が右を固めて德勝龍の左差しを許さず、左ハズにかかって出ようとしたが、德勝龍も上体を前傾させて前に圧力をかけてからパッと引いて、友風がついてくるところ、左へ廻りながら左で外ハズ気味に突き落として泳がせた。追撃も早く、友風が右で首下を叩く常套の動きにも対応、低く小気味よく押し上げて、強引に叩く友風を向正面に押し出した。
引き落とす前に一つ押し上げて、友風の腰を立たせたことがその後の展開に結びついた。サラリとこういうひと手間をかけられるのが歴戦の強者。１０年ぶりとなる幕下の土俵で「德勝龍未だ死せず」の証を好角家に広く知らしめた。
３日目 vs石崎 叩き込み 白星（２－０）
先に両手を着いて待つ石崎、德勝龍が前に体重を乗せていくところで突っ掛けてしまった。
二度目は德勝龍自分の呼吸で立ち、石崎はわずかに立ち損じたか。それでも右で引っ張り込み左差しを狙う德勝龍に対し、右おっつけ左ハズで対処する。德勝龍ならばと右で突き放して間隔を空けてから、両手でさっと前に引き、左に傾いてのめる石崎の右肩を両手で押さえつけ、石崎右で腹を押しながらなおも懸命に持ち堪えんとするところ、右手で叩き込んだ。
軍配は石崎に上がるも、争点になった德勝龍の左かかとは出ておらず、石崎の手（左肘）が早いと見て軍配覆った。
最後は両手と右足を高く上げて、左足一本爪先立ち。德勝龍の相撲で幾度も視てきた光景だが、改めて感慨深い思いがするもの。落ちた石崎含め完全に勝敗を認識していたのに、思いがけず軍配が石崎に上がり、安堵の表情から一転、「えっ？」と口が動いた姿にもベテランらしい味があった。
５日目 vs栃神山 上手投げ ３－０（白星）
栃神山かましながら左へずれて左前廻し狙いも、德勝龍よく視て右左と突き起こしながら左を割り込み、栃神山が左下手から振ってくるところで右上手。栃神山左で振りながら腰を振って上手を切ろうと揺さぶり、次いで右でおっつけながら赤房に出て行くも、德勝龍その出足も利用し、左の巻きを合わせつつ右上手投げを放つと、栃神山の巨体が一回転、豪快に決まった。
７日目 vs時疾風 上手投げ ３－１（黒星）
時疾風早すぎて突っ掛け。
二度目も時疾風やや早く自分の呼吸で立って右前廻し。德勝龍左から起こさんとするも、時疾風少し寄りを見せながら、相手の攻め返してくる力も利用し、左で巻きながらの右上手投げ、投げを打ちながら左を抜いてつっかえ棒を外すように下へ打ち付ければ、德勝龍の巨体は行き場を失った右手右肩からゴロンと転がり落ちた。
９日目 vs湘南乃海 押し倒し ３－２（黒星）
德勝龍右に変わり右上手を引いて振りながら向正面を伝い、頭をつけ左を返そうとする矢先、湘南乃海が腰を後ろへ引き気味に振った反動で上手が切れてしまう。湘南乃海右で振ってやや泳がせてから低くかましていくと、德勝龍両手を出して引き間隔を取ろうとするが、湘南乃海右左とリズム良く胸を突いて追い、德勝龍が右の突きを跳ね上げて左を差し、右で首を押さえながら黒房側へ回り込まんとするところ、湘南乃海上体を前傾させながら左ハズで押し上げれば、うまくタイミングが合って、腰を崩した德勝龍は正面土俵下に転げ落ちた。
１１日目 vs玉正鳳 押し出し ４－２（白星）
頭で当たり合い、玉正鳳もろ手突きから右左と腕を伸ばせば、德勝龍やや腰が入って正面寄りに下がり、玉正鳳が右で突くところ、德勝龍手繰って右に回ろうとするも、足が流れてつんのめる。玉正鳳突き落とし気味の動きを見せてから左右の手で突き放せば、德勝龍も持ち直しながらあてがい、玉正鳳頭を下げてかましにくるところを左へ回っていなし、玉正鳳なおも休まず左喉輪右ハズで西に攻め立てるが、もう一度かましながら突こうとした右が抜けて、德勝龍の左がずぶりと差さる。
形勢逆転して東へ出ていく德勝龍、玉正鳳少し左へ振ってから、抱え込んだ右で大きく振り回さんとするも、德勝龍左を突きつけて許さず、最後は右で首を捻りながら左で突こうとする玉正鳳の胸を德勝龍右で一押しして勝ち越し決定。勝利を確信するや、気迫の表情で自慢の巨腹をぽーんと叩いた。
千秋楽 vs藤青雲 寄り切り ４－３（黒星）
藤青雲低く入って左下手深い位置を引き、右巻き替え。德勝龍左を差し返そうとするのを厳しくおっつけて抜かせ、正面に進撃。德勝龍は腹を前に出しながらスペースを作って右突き落としを狙いたかったが、藤青雲左下手を引き付け、右は十分に返しながら、德勝龍の腰を持ち上げるように寄り立てたので、德勝龍右に回りきれず、黒房で土俵を割り、その後、藤青雲廻しを離して両手で腹を突く万全の詰めを見せた。
寸評
馬力と気迫あふれる押し＆左四つ寄りの正攻法に加え、土俵際の逆転や立合いの奇襲まで德勝龍らしい相撲を取り切り、見事結果にも繋げることができた。
「どの地位でもやることは同じ（※）」という心境に至るまでには、簡単ではない決断もあったとは思うが、いざ土俵に上がれば言葉通りに少しの気後れもなく、幕下上位の土俵に清新なる風を送り込んでくれた。来場所も変わらず元気な姿を見せてくれるだろう。
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