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聖書タイム

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山形優子フットマンが綴る、楽しく、優しく、そして日々の生活に根ざした聖書のおはなしです。毎月更新いたします。
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#ウィンブルドン

1月の聖書タイム「初・終・初・終・初」

by 山形優子フットマン 「天は巻物が取られるように消え去り、山も島も、みなその場所から移された。」      ーーーヨハネの黙示録6:14 日本をはじめ世界は波乱万丈の年明けを迎えました。冒頭の聖句はローマのドミティアヌス帝によるキリスト教迫害を受けたキリストの愛弟子ヨハネが、流刑地パトモス島(ギリシャ)で見た幻を記録した「ヨハネの黙示録」(推定AD70年~95年)からの引用です。神から掲示されたビジョンは、この世の終末、キリスト再臨など壮大で複雑、視覚に強く訴えるも

2023年10月の聖書タイム「恵は増えに増える」

by 山形優子フットマン 「ここに大麦のパン五つと魚二匹とを持っている少年がいます。けれども、こんなに大勢の人では、何の役にも立たないでしょう。」 ーーーヨハネによる福音書6:9 みなさん、日本で一ヶ月ほどの休暇を過ごしてきた私ですが、英国に戻って何が一番恋しいかというと、季節感のある美しい新鮮な魚が店頭に並ぶ有様です。秋はなんといっても秋刀魚。日本のニュースでは「今年は海流の温度の変化から、秋刀魚が不漁で、形も小さく、その割には値段が高い」というような話題が連日のよう

2023年8月の聖書タイム「はじめまして、聖霊さん」

by 山形優子フットマン 「風は思いのままに吹く。あなたはその音を聞いても、それがどこから来て、どこへ行くかを知らない。霊から生まれた者も皆その通りである。」 ーーーヨハネによる福音書3:8 酷暑の中、みなさん、いかがお過ごしですか?(ここ英国は冷夏で雨ばかりです。)地球の温暖化が加速する折、軒先に風鈴をつけ、涼風の渡りを楽しむ日本独特の風情は、今では昔話?昔人は風の音を聞き、それを浮き彫りにする風鈴の響きを喜び、微風をも楽しんだのでしょうか。 冒頭の聖句は三位一体の一

2023年7月の聖書タイム「一つ星を仰ぐ」

by 山形優子フットマン 天は神の栄光を物語り、大空は御手の業を示す。 昼は昼に語り伝え、夜は夜に知識を送る。 話すことも、語ることもなく、声は聞こえなくても その響きは全地に、その言葉は世界の果てに向かう。 ーー詩篇19:2ー5 7月7日は七夕でした。子供の頃、短冊に願い事を書いて笹につけ、軒下に飾ったのを思い出します。どんな願い事を書いたかは全く覚えていませんが、御用済みになった笹が色とりどりの短冊をつけたまま、裏の焚き火の上に放られていたのは覚えています。まるで、人

2023年6月の聖書タイム「あなたのために天使を送る神」

 by 山形優子フットマン 「恐れることはない。わたしはあなたと共にいる神。たじろぐな、わたしはあなたの神。」ーーーイザヤ41:10 冒頭の旧約聖書の句は、神が預言者イザヤを通して語りかけている言葉で「恐れることはない」が第一声。神は、私たちが本当に臆病で怖がりなのを、ご存知です。人が問題に直面した時、悩む場合、たちまち恐怖は暗雲のように広がり、目先真っ暗となります。同じ問題に直面しても、恐怖心さえなければ異なる対応ができるはずなのに。つまり恐怖こそが、人の足を引っ張る大

2023年5月の聖書タイム「心のゆりかご」

by 山形優子フットマン 「幼児(おさなご)はたくましく育ち、知恵に満ち、神の恵に包まれていた。」 ーーー ルカによる福音書2:40 芽吹きの訪れと共に、小鳥たちの囀りが、いっそう華やぐ5月が到来。森を往けば目に映るのは若葉、まさに森林浴です。 ふと思い出すのは、江戸時代前期に活躍した俳人で松尾芭蕉と交流があった山口素堂の俳句、「目に青葉、山ほととぎす、初鰹」です。残念ながら、英国に初鰹はありませんが、野鳥の囀りをBGMとした森林浴は最高です。最近は「フォーレスト・ベージ

2023年4月の聖書タイム「開かれた門」

by 山形優子フットマン 安息日が終わると、マグダラのマリア、ヤコブの母マリア、サロメは、イエスに油を塗りに行くために香料を買った。そして週の初めの日の朝ごく早く、日が出るとすぐ墓に行った。彼女たちは、「だれが墓の入り口からあの石を転がしてくれるでしょうか」と話し合っていた。ところが、目をあげて見ると、石は既にわきへ転がしてあった。石は非常に大きかったのである。」 ーー マルコによる福音書16:1~4 みなさん、イースターおめでとうございます。冒頭の聖句はキリストの復活の

2023年3月の聖書タイム「待ち望む春」

by 山形優子フットマン その日が来ればエッサイの根(キリストの意味)は、 すべての民の旗印として立てられ 国々はそれを求めて集う。そのとどまるところは栄光に輝く。 ーーー イザヤ書11:10 今年の英国の3月は、例年になく冷たい毎日です。寒風の中、スノードロップの花が頭を垂れて涙のような形の花を咲かせ、野生のクロッカスも見事に群生しています。冬の間、あんなに静かだったキツツキも姿を現し、春の扉をこじ開けるかのような勢いで、嘴のドリル音を森中に響かせています。次の曲がり角

2023年2月の聖書タイム「眠れない夜のための聖句」

by 山形優子フットマン 「どうか、主があなたを助けて 足がよろめかないようにし まどろむことなく見守ってくださるように。 見よ、イスラエルを見守る方は まどろむことなく、眠ることもない」 ーー 詩篇121:3、4 2月、日本では梅の花が咲き始めるころです。毎年この頃になると、百人一首にある有名な菅原道真の歌を思い出します。「東風(こち)吹かば、匂ひおこせよ梅の花、あるじなしとて、春を忘るな」。太宰府に左遷された菅原氏は、都の方角である東から吹く春風を受けて、しんみりと思

2023年1月の聖書タイム「信仰は小さくても・・・」

by 山形優子フットマン 「初めに言葉があった。言葉は神と共にあった。言葉は神であった。」 ーー ヨハネによる福音書1:1 新年、初の言葉は「明けまして おめでとうございます」。新しい日記帳は真っ白で、未知の時間が待っています。今年はどんな年になるのでしょう。 冒頭の聖句は、もちろん新年の挨拶ではありませんが、「新年」という決まりがなかった頃からの「初めにあった言葉」、つまり世が始まる前からの神秘へと、読む人をいざないます。創世記の最初、天地創造のくだりをみましょう。

2022年11月の聖書タイム「暗闇を生き抜く」

by 山形優子フットマン 「青春の日々にこそ、お前の創造主に心を留めよ」 ーーーコヘレトの言葉12:1 秋も深まり、日が短くなりました。夕方4時ともなれば、電気をつけなければなりません。英国でさえそうなのですから、北極圏に住む人たちはどうでしょう。BBCラジオ放送の「越冬の知恵について」という番組で、エスキモーの男性のインタビューを聞いたことがあります。彼は言いました。「とにかく四六時中、真っ暗ですからメリハリをつけた生活をするよう心がけています。活動的に過ごすことが肝心

2022年9月の聖書タイム「さあ、新しいワインを共に飲みましょう」

by 山形優子フットマン 「新しい葡萄酒は新しい革袋に入れなければならない」 ーー ルカによる福音書5:3 人生の節目は、思いがけなくやってきます。しかも、色々な形で。転職、退職、結婚、離婚、引っ越し、肉親の死、病気、等々です。それにつきまとうのが、断捨離でしょう。いらないものを捨て、これまでの自分にキッパリと別れを告げ次へ移る。冒頭の聖句は、古いユダヤの教えにしがみついていた律法学者達に向けイエス・キリストが語った言葉です。律法による裁き、つまり減点法によって自分や他人

2022年8月の聖書タイム「女が水をくみに来た」

by 山形優子フットマン 「この水を飲む者はだれでもまた渇く。しかし、わたしが与える水を飲む者は決して渇かない。わたしが与える水はその人の内で泉となり、永遠の命に至る水がわき出る」 ーー ヨハネによる福音書4:14 夏です。今朝のニュースでは、英国の南部が水不足で、庭の水撒きがしばらく禁止になると報道されました。私の住むウィンブルドンにある自然保護地区内にはいくつか池がありますが、いつもの犬の散歩道にある池はすっかり干上がり、真ん中を歩けるほど。ゴルフ場はスプリンクラーの

2022年7月の聖書タイム「私の中の、知らない『子供』」

by 山形優子フットマン 「子供達を私のところに来させなさい。妨げてはならない。神の国はこのような者達のものである。はっきり言っておく。子供のように神の国を受け入れる人でなければ、決してそこにはいることはできない。」 ーー マルコによる福音書10:14~15 そろそろ夏休みです。英国の子供達の声が海に山に、元気に響き渡る時期です。ヴィクトリア時代の諺に「Children can be seen, but not heard.」、「子供達は目に見えても、(子供達の声は)聞か