レオンハルト・ロード幕開け
〇序章
レオンハルト・オイラー、この異世界で魔王を倒した英雄の名である。
彼の名を聞いただけで国民は頭を下げる。
ただ一人の『最強』だからこそ腕のある実力が認められる。英雄の伝説があるからだ。
しかし彼は知っている。世界には彼よりも実力がある天才も紛れ込んでいると。最強は彼だけではないという事実を。
だからこそ次の世代に繋げる人材を見つけたい。
それが彼の夢である勇者育成。つまり、彼の後継者を探す学校を建てることである。
魔王を倒した勇者役は彼だけ与える。しかし、未来の子供に任せることもまた勇者の本質である。
世界の均衡を守るため子供たちを育てる。一度世界を守っても、次世代に受け継ぐこともまた彼らの役目。国を変えるには、政権を握る指導者が動くべきなのだ。
『世の中は若者の未来に繋げるためにある』
つまり、それが勇者育成プロジェクトの目的だ。俺はそんなレオンハルトに憧れを抱いていた。
魔王を倒した強さだけでなく、国民、そして若者を導くカリスマ性を持っている。実行力と思いっきりの良さは、普通の人間より桁外れと言っていい。
そして、アニメ好きなら一度は憧れる勇者という名誉ある称号。それは特徴もない自分にとっては喉から手が出るほど欲しい肩書きだ。
なんせ魔王を倒した勇者と言われるなら、世界の危機を救ったとかで女の子にもてる。さらにパーティーメンバーの一人が俺のカッコよさに惚れて告白する……なんて設定もあるかもしれない。
世界を救う偉業は、誰かに認められるということ。俺はそんな世界で自分の価値を認めたいし、楽しい生活を送りたかった。
ただし、それは夢物語で勘違いをしていた。異世界でも俺を弱者として扱うのには変わりなかった。
当然のようにカースト制度もあるし、ハーレム、チート、主人公的な要素すらもない。
世界は自分のためにある訳ではない。結局は異世界でも同様、他人からすれば差別することは当たり前。他人に認められることなんて簡単にはいかない。
ただ例外もある。自分にはない強さに気づかない場合、または力を上手く扱えない場合だ。
思春期の俺では分からない性質、特徴、あるいは才能。それはひとえに強みとして挙げられる。
自分の中にある隠れスキル、友人が少なかった俺には理解しがたい考え方だ。
だから、一度きりのチャンスを逃さない。チャンスを手に入れたら俺の生活は変わっていく。
やるか、やらないか。どちらを選ぶ?その人物からの問答に俺は自分の信念に相応しい選択をした。
「やるよ。俺は勇者になりたいって決めたんだから」
信念は貫き通す。自分が正しいと思うならそれをすればいい。
俺は自分の心に誓って、その正しい選択に覚悟を持って進んでいったのだ。
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