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レオンハルト・ロード一章

〇第一話 I want to be like his.

 勇者レオンハルト、その名はベルデン共和国では有名高く、魔王を討った最強の勇者だと言われている。

 そして現在でも、彼の魔王討伐の伝説は語り継がれており、一部では彼を偶像にした宗教的な布教活動を行う者もいる。もはや彼はベルデンの象徴として国中に浸透しているのだ。

 だが、そんな彼の実態についてはベルデンの国民には知られていない。何故なら魔王討伐以降、颯爽と消えた放浪人だからだ。

 そのため、レオンハルトは国民にとっても滅多に姿を見せない高貴な存在である。

 ただ、ベルデン共和国にあるシュタート学院では、勇者候補として有望な上位ランクの生徒のみ許されたレオンハルトによる指導と講義がある。
 その上位ランクに入るには十人の生徒が選ばれるために様々な試験を好成績でクリアしなければならない。

 もちろん厳格で難関なテストに学院の生徒たちは汗を流して、一つ一つの試験を突破しようと努力している。が、当然このテストでは好成績ではない生徒もいる。

 それがシュタート学院の伝統的な掟である勇者ランクの階級制度、学院に入学して試練クリアを継続するゲーム方式なのである。

ただその分、可愛い美少女やイケメンな美男子がいるのも、シュタート学院の魅力の一つである。なので、面食い男子、偏差値100の女子に告白するのも、生徒に刺激を与える教育方針として組み立てている。つまり教育勉学、実技、恋愛、全てが学院の誇る教育面においての根幹であるのだ。

そしてフリードリヒ・ガウス、彼も今年から入学した新入生の一人であり、まさに今この学院の一員として入学式に参列している。
(ようやく俺の学院生活が始まる。ここで両親に勇者候補として選ばれるカッコいい姿を見せるぞっ)

 俺は心が浮いて落ち着けないほどに高揚感で溢れている。子供の頃からの夢だった勇者になるという願いのため、必死に努力を積み重ねた。そして数えられない幾つもの失敗をした結果、ようやく自分の夢が半分だけ叶ったと胸を張れた。

 両親も学院の入学の吉報を聞いた時、同じように喜んでお祝いパーティーまで開いてくれた。諦めずに根気よく支えた両親には感謝の言葉しかない。

 もちろん学院の象徴である勇者レオンハルト・オイラーも、俺の技量や実力を磨くためのモチベーションになっている。理由は簡単。レオンハルトの人間性は尊重できる部分があるからだ。もし彼がいなければきっと俺は勇者になりたいとは思わなかった。だから色々と話はしたが、俺は勇者候補として選ばれるため必死に努力をしているのだ。

 そして今、一世一代のお祭りが始まる。それは『一年に一回のランク発表』である。

 レオンハルトのような勇者になるには、Sに十人、Aに五十人、Bに百人、Cに三百人という階級と分かれている中で成績トップの上位ランクに所属しなければならない。

 加えて、勇者になるには確かな実力を持つ優秀さ、柔軟に対応できる瞬発力と対応力が求められる。何故なら勇者としての素質や身体能力などは当然なければならないためだ。

 全てを兼ね備えた実力を持つ者がいること。それがレオンハルト・オイラーの引き継ぎに相応しい勇者と認められる理由である。それは学院にいる全生徒が理解しているのだ。

 他にも色々と立て込んだ話をしたいが、長々と語るのは疲れるのでここまでにする。何にせよ、俺が勇者になりたいのは間違いない。夢を叶える努力はしてきたと断言できる。

「ではランク発表をしますので各自確認してください」

 ここでAランク以上を取るのは当然、しかしBランクであれば学生生活で苦労する。何としてもS、Aランクを勝ち取らなければならない。

 Cランク?そんなのは眼中にない。俺は自分の実力をBランクより上だと思っている。しかしBランクは飽くまでも最低限の目標なので、実質A、S希望なのだ。

 今年は例年よりも厳しい競争になると聞いている。だから、俺は人の勢いに飲み込まれる訳にはいかない。実力がある者が称号を勝ち取れるのだから、負けてしまえばゲームセットだ。今は積み重ねて試験に対しての結果を待つしかない。

 両足を動かして右往左往、すぐにでも見たい心のモヤ。結果はまだかと待ち望んで、ついにその時が訪れた。

『結果発表です。各自でランクを確認して教室に移動してください』

 生徒たちはぞろぞろと周囲を囲むように、結果が表示されたホ張り紙を見る。
 そして俺の結果はなんと‼

……Cランクだった。

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