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レオンハルト•ロード一章

〇第一話 I want to be like his. -Ⅱ

 今年のシュタート学院の入試は多くの者が受験した。ヘルデン王国の国民は、シュタート学院に入学することで国を救った英雄に近づけるという夢を抱いているからだ。

 どんな時代でも幼い少年少女の憧れであるヒーロー。ヘルデン共和国の民も母国を救う偉業を果たす夢を叶えたい。そんな夢を持つ者は多いのである。

 だが、誰でも簡単に努力すれば、成し遂げられるとは限らないのも現実。なんせシュタート学院は難関校であるから、突き抜けた実力を持つ者のみ試験に合格できるのだ。

 しかも、これはほんの序の口、入学後の学院にも落ちこぼれと勝ち組のランク分けが初日にある。それこそが古のシュタート学院から続いたランク階級制度という事だ。

 そして、俺のランクはC、これは落ちこぼれに属する。死んでもCランクに行きたくないと願っていたのに。

「ではCランクのレクリエーションを始める。まずは今後の予定についてだ」

 先生はそう言って、Cランクの生徒に話をする。まずは入学前のアンケート調査、これは入学から卒業までの抱負や取り組み方を記入するものだ。そして、体力測定と健康診断、生徒一人一人の体の異常や能力を判別する決まりだ。

 この二つの結果は後日に報告をされるが、自分がどの位置にいるのかを判断する材料となっている。

 加えて、重要なのは学院にいる以上、成績や素行で退学になるのも忘れてはならない。学院では、生徒が成績を競い合うのも含めて、各生徒の状況を把握することを常に行っているのだ。

 一度でも悪行を起こした者、カンニングした者は即退学。成績、生活、態度は学院にとって大きな評価基準でもある。なので、Cにいるのは『卒業できない危険なラインにいる』という意味を示しているのだ。
 そんな気の抜けない毎日に、生徒は自由に動けない。 

 日々鍛錬、自習も怠らずに卒業まで努力をするのは当たり前で、俺たちは授業で学んだことを忘れるのは許されない。

「これから様々な課題をお前たちに与えることになるが、もし怠惰な生活をしていた場合はクラスを除籍してもらう。つまりは退学宣告だ」

 そう、Cランクは勇者になるのは地獄のような生活であり、Cのみが高得点の成績を出すのが必須。退学になるということは将来性もないので、見捨てられることは至極全うである。

 しかし、Cランクの連中は納得いかない表情をして、差別だの贔屓だの愚痴を吐いていた。そしてある一人の生徒が立ち上がって、先生に疑問を投げ掛けた。もちろん俺である。

「先生‼Cランクから一人で抜け出すことは可能ですか?」

 突然の発言に周囲は動揺を隠せなかった。質問の意図が読み取れないわけではない、コイツは何を言っているのかと驚いているのだ。

「……どういう意味か教えてもらおうか」「簡単ですよ。俺が愚行な奴らと同レベルなのが納得いかないんです」

 俺は何があっても大丈夫と、威勢をよくCランクの学生を貶す言葉を言い放ち、周囲も額に血管が浮き出るほど苛立っていた。しかし、Cクラスの担任が溜息を吐いて、呆れている様な表情を浮かべてこう言った。

「キミは何か勘違いしているようだ。いいか?このクラス分けは飽くまでも身体、思考、態度が基準となっている。キミがどんな成績だろうと、学院で決められたボーダーラインには達していない。身体能力だけ、勉学だけ優秀なんて評価点には入らないんだよ」

 Cクラスの担任は、自分を過信するなと厳しい叱責を与えた。その解答に俺は納得いかないが反抗することができずに黙り込んでしまう。そしてCランク担任は説明を続ける。

「いいか?お前らはC評価を受けたからこのクラスにいる。たとえ他よりも抜き出ている技術を持っていても、上位の連中はそれを克服することができる。お前らの脳みそにその事実を刻んでおけ」

 抜き出ている技を持っていても、上位ランクには手も足も出ない。それは当たり前だがCの連中は現実味がないから反抗した。この教師はそれが伝えたかったのだろう。

 将来、勇者になるには上を目指す者に勝つことが鉄則。頂点に立ち者はランクを保守して、下々にいる者はトップと競い合う。それは全校生徒に共通する昔からある学院の仕組みなのだ。

 それが分からないのは、学院にいるCランクの者であり、その他はよく理解している。シュタート学院は『条件に見合っているか?あるいは、見合ってないか?』を見る制度なのだ。

「以上だ。他に何かある者は?」
「……」
「……ないな?ならば、今日はこれで終了だ。明日の予定においては学舎に送っている。各自、予定表を確認しておくように」

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