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マヌルネコと子パンダ。
「何だ、また来たのか」
「うんっ」
獣舎の向こうとあちら側。
マヌルネコは、めんどくさそうに子パンダを見た。
「だって、ぼく、マヌルネコさんの事、好きだもん」
「たべちゃうぞ」
「そんなことないもーん」
黒い丸い目が、ぴかぴか光る。
かわってんな、コイツ。
会う度に同じ事を思ってしまう。
それでも、ウザいとか思わなかった。
「で、今日は何が聞きたいんだ?」
ポーンと岩場から降り、遠巻きにウロウロす
きいろとタイヤとフライパンと。
きいろ。
それはね、飼育員さん達がいつもしてくれた
大好きなブラシ。
背中をすーいすーいと、なぞってくれるの。
とっても気持ちがいいのよ。
もっとやって。
ちがうわ、ここよ。って言うでしょ?
ハイハイって言いながら、ブラッシングしてくれるの。
うふっ、わがまま出ちゃうんだもん。ごめんね。
タイヤ。
それはね、おもちゃにしたり、クッションにしたり
時には噛んだり、爪でひっかいたり、いろんな事に使っ
はずかしがりやのあのこ。
笹がたくさん敷かれたお気に入りのベッドの上で、
タンタンは眠っている。
すぅすぅと吐息をたてて。
夢をみているのかな?
あのね、
お庭でウトウトした時の事なんだけど、気配を感じたの。
そう、子パンダの。
じっと、こっちを見てるの。そして、首を少しかしげるの。
「どうしたの?」って聞いても、何にも答えてくれない。
びっくりして、逃げていっちゃうのよ、あの子。
あなたは、だぁれ?
祝祭の日。
母子
おかあちゃまに会いに。
「ヤダヤダ!おかあちゃまに会いたい!!」
薄闇の中で子パンダは、泣きながらコウコウに訴えていた。
「おかあちゃまはね、病気なんだよ」
「おとうちゃまは、おかあちゃまのこと、心配だからって
会いにいったじゃない!!どうして、ぼくはダメなの?!」
丸く黒い目から、涙がぽろぽろとこぼれる。
「そ、それは・・・」
コウコウは言葉に詰まった。
やっと生まれたのに、短い時間しかいれなかった母と子。
それでも、
王子のお山のかみさま。
神戸は山と海に囲まれた街です。
そして、王子動物園のうしろには、山が控えています。
大きな山ではありませんが、そこに住む人びと達を見守っています。
『今日はどうだい?』
『寒くないかい?』
『急がなくても大丈夫だよ』
人びとには聞こえない声で、語りかけています。
そして、動物園に住む動物たちも。
『おはよう』
園舎から出ていた象に、山のかみさまは挨拶をします。
『おはよう、山のかみさま』
返事をす
だいじょうぶ、ここにいるよ。
コウコウ、わたし、おばあちゃんなのよ?
あなたといっしょに神戸に来たのは5歳の時でしょ?今、28歳。
歳も取るわよね。ちまたでは、おばあちゃんパンダなんて言われちゃってるのよ?
やぁね、レディに、おばあちゃんだなんて。
子供達がいなくなっちゃって、あなたもいなくなっちゃって、
ひとりぼっちになっちゃったけれど、
私の事を見に来てくれるお客さんや子供達、
飼育員さん達が、いつもいてくれてたから、さび
KagamiとAsami
「ただいま、戻りました~」
外出先から帰ってきた滝明久が、「ああ~寒かった」と羽織っていたコートを脱ぐ。
「あれっ、浅見さん、もう帰ったんですか?」
「まぁね」
データ入力をしながら、船縁由美は答える。
キーを叩く音がカチカチと響く。
「最近、退勤するの早いですよね。前は、みんなで飲みに行ったりしてたのに。浅見さん、オーバーアルコールになっちゃうから、こっちが大変だったけど」
「あの頃はね」
「え