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日本の虎の絵〜時代順においかけてみた〜(後編)

前編からだいぶ間が空いてしまいました💦
桃山時代までの記事はコチラへ。

虎の絵の変遷を見ていくにあたって、画像の引用条件の塩梅がわかりかねたので紹介する絵画については写生でお送りします。
素人ですのでクオリティはお察しください。


江戸時代

安価で買える浮世絵が登場し庶民レベルでも絵画が親しまれた時代。創作の幅が広がります。

写生:『竹に虎』歌川国芳 1842年

浮世絵有力派閥の歌川派より国芳さん。現代ですと巨大なガシャドクロの絵で有名ですね。
顔は前編の記事で紹介した牧谿の影響かありつつ、体つきは警戒している時の猫ちゃんまんま。

ただ、国芳の虎はデザインが固定化されていない様子。下記の虎絵は円山派の影響を受けているとと思われる。

写生:『禽獣図会 龍虎』歌川国芳 1839〜1841年頃


写生:『竹虎図』尾形光琳 18世紀 京都国立博物館

続いて、京都国立博物館のマスコットキャラクターであるトラりんの元ネタ。体格はがっしりめではありつつもテイストは可愛さ寄り。

『虎嘯生風図』円山応挙 1786年 東京国立博物館

常設展で写真とSNS掲載OKを確認してるのでコチラは写真を掲載。
円山派の祖である応挙の虎。写実性を重視する派閥であるが虎に関しては本物には近くなくとても可愛く仕上がっている。瞳は縦長、体つきはずんぐり、四肢も凹凸が無く、なんとなくだがクマっぽい。

『龍虎図』長沢芦雪 1786年 無量寺

古刹無量寺本堂の襖絵。襖6枚分なので本物の虎と同程度のサイズ感らしい。
芦雪は円山派なので顔つきは円山派に寄せつつ体型はシャープめ。
今まで書いてきた中で一番似てないので是非本物を見てほしいです。。

それにしても縞模様が上の応挙の虎と比べると虎柄というよりかは血管のように見えるような気がする。


『虎に波図屏風』岸駒 1823年 東京国立博物館

コチラも写真とSNS掲載OK。可愛さ成分いっさい無しの迫力ある屏風絵です。
岸駒は虎の毛皮や骨、前足のミイラなどを仕入れて虎の絵を勉強していたらしく、江戸時代において一番本物に近い虎を描いていると思われる。瞳を縦長に描いているあたり現物を見られなかった事が伺える。

かねてより岸駒の絵を見たいと思っていたこともあり、この絵を見たときは本当に感動しました。
長い間まじまじと鑑賞していたので今思うと周りに迷惑かけていなかったがちょっと心配になります。
虎絵の中でも一番お気に入りの作成です。

上記写真の形に収まるまでにデザインを試行錯誤していたようで2.30代の頃の虎と比べると全くの別物でした。気になる方は『猛虎之図』1775〜1784年を調べてほしいです。

明治時代以降

明治になると動物園で現物の虎を観察できるようになります。また、絵画の手法も西洋式が浸透して様式の変化が見られます。

『龍虎図屏風』橋本雅邦 1890年 静嘉堂文庫

まさかの写真OK(スマホオンリーだけど)でした。

雅邦は狩野派の絵師。日本画の革新に努めた人物でもあります。
この時点では全体的に日本の伝統様式が反映されてる。

とはいえ江戸時代の龍虎図と比べると色の塗りに立体感があるので時代の変化が感じられます。
そして、もう片方の屏風には当然龍がいるわけですが筋肉質でとてもカッコいいです。
全部載せるのは勿体ので気になる方は是非美術館へ。
(常設かどうかは分からないのであしからず)


写生:『龍虎図』橋本雅邦 1899年 宮内庁三の丸尚蔵館

同じく橋本雅邦より。
背景は日本画の要素がありつつも、虎は写実的になります。
きっと本物を見る機会も得られたのでしょう。

でも四肢をよく見てみると1890年の時の絵の余韻がやんわり残ってるんです(写生絵だと伝わらなく申し訳ない)

ボールペンも筆ペンもピンと来なかったからクーピーで描いてみました。
そして使い方に慣れていないので色がむらだらけ〜

写生:『巌上雪中猛虎図屏風』大橋翠石 1906年
大垣市教育委員会蔵

虎の絵を得意とすることから「虎の翠石」と讃えられた翠石。

完全にリアル調な上、実際の絵は毛並みの表現まで非常にリアリティがありました。
彼の虎絵は獣臭が漂って来そうなリアルさが感じられます。

なお、彼の虎絵は海外でも評価されており、1900年のパリ万博で出品した『猛虎図』は日本人で唯一金牌を受賞しました。
そのイベントには、先にご紹介した橋本雅邦の他、横山大観、黒田清輝、下山観山、竹内栖鳳、上村松園などの国内でも有力な画家も参加しておりました。その他にもセントルイス万国博覧会や日英博覧会でも金牌を受賞するなど、実績のすごい人だったことがうかがえます。

とはいえ時代を考えますと、欧米の価値観ありきになるとは思いますので、そういう意味でも写実性の高い彼の絵が選定されたのだと思われます。

本当は1944年の大虎図も描きたかったのですが、背景無しで写生するとあまりにも物足りなくなってしまうので諦めました。

まとめ

時代順におってみましたが如何でしたでしょうか。
写生についてはイメージが伝わりづらい問題があると思うので、気になった方は是非とも現物や書籍で見ていただけると嬉しいです。

虎の絵は人気な画題ゆえにどの絵をピックアップするべきが本当に迷いました。いろんなデザインの虎がいるんです実際は。
ただ、特徴を取り上げるとするのであれば、時代をおって写実的になっている過程があるのは事実ですので、変遷が伝わりやすい絵画を選んでみました。

余裕があれば獅子バージョンもやってみたいです(言うのは自由)
ただ、印象の残っている絵に限って図録になかったりで、虎よりも資料集めが大変かもしれません。

今回のように特定の動物の絵についてまとめられている記事があったら是非教えてください。
むしろ見たい側なんです。

それでは、また。




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