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日本の虎の絵〜時代順においかけてみた〜(前編)


動物の絵を見るのが好きで中でも虎は一番好きです。

noteでもそういう記事をまとめられればと思い書いてみました。
ただ、絵画の画像の引用となるとどこまで適用範囲内なのか調べても塩梅が分かりかねたのでいっその事写生する事にしました。
素人なのでクオリティはお察し下さい。

飛鳥時代

日本国内で確認されている最古の虎の絵は高松塚古墳(694年〜710年)とキトラ古墳(推定7世紀末〜8世紀始)の白虎図と思われる。
どちらも近いデザインで壁画が描かれている。
この時代にはすでに大陸から四神が伝わっていたんですね。

写生:キトラ古墳壁画のうち白虎

現実の虎と比べてトピックを上げると
・首、胴体、足、等全体的に細長い
・火焔をまとう
・下腹部側も朱色で塗られている
・長めの体毛がある
・前後共に指が三つ
向かいの方角が青龍なので対になるように意図的にデザインが龍に寄せられている印象。
動物としての虎ではなく、あくまで四神つまり瑞獣なので虎を基とした格別の存在である事は留意した方がいいかも。

実は飛鳥時代作(推定)の虎の絵はもう一つある。
国宝の玉虫厨子です。
その厨子には仏教説話のワンシーンがいくつか描かれており、その中に虎が登場する話もあります。いかんせん絵が小さく法隆寺で現物を見た際にも前知識がなければ気付けないレベルで塗装が経年劣化してました。模写も諦めました。

奈良時代

正倉院の宝物『螺鈿紫檀五絃琵琶』です。
国内で作られたかは不明のため時代はトーハクのブログを参考にした。
武人のポーズは獅子狩文錦を彷彿とさせササン朝ペルシャの影響を受けていると思われる。

玉虫厨子と同じく虎を主としていないので絵も小さく写生は難しい

日本の虎の絵の枠としては少し怪しいかもしれないがその時代のものとして紹介しました。

平安・鎌倉時代

みなさんご存知、鳥獣人物戯画です。
作成された時代は不明のため高山寺を参考とした。書籍やサイトでは平安と鎌倉でぶれがありトーハクは平安時代とみなしているようです

この絵巻物は甲乙丙丁の四部編成となっており、乙巻に虎が出てきます。
また、乙巻はたくさんの動物が描かれており動物好きとしてはたまらない内容てす。気になる方は是非調べてみてください。

写生:鳥獣人物戯画乙巻
母虎と子虎たち
写生:同上
母虎達の目先には父虎と思しき虎

飛鳥時代の白虎と同じく本物とはほど遠い様子。
・全体的に細長い
・前足後ろ脚に長い体毛がある
・子虎は耳が垂れている(犬から着想をえていると思われる)
・指の本数は四つ

キトラ古墳のような虎のデザインが当時の絵師や権力者界隈で普及していたかは分からないが、飛鳥時代の白虎と類似性が認められる。
ただ、龍の要素はなくなったので少し本物の虎に近づいたか。

細長い虎は上記以外にも見つけた。
模写はしんどいので各自セルフで調べて欲しい。
・薬師十二神将像 京都 仁和寺 1168年
・十二神将図像 京都 醍醐寺 1227年
・仏涅槃図 和歌山 浄教寺 鎌倉時代
当時の絵師界隈ではテンプレが出来上がっていたのだろうか。

鎌倉・南北朝時代

禅僧黙庵の「四睡図」です。
制作時代は開府四〇〇年記念名古屋城特別展「武家と玄関 虎の美術」の図録を参考としました。四睡図とは禅宗の画題であり、唐の僧侶豊干・寒山・拾得の三人と虎の一頭が寝ている様子を表してます。
調べた限り国産画の虎を主題とした絵画はこちらが初になるかと。

写生:『四睡図』黙庵

今までの絵画と比べると飛躍的な変化が感じられる。今までは全体の構成の一部に過ぎなかったが
僧侶ありきではありつつも虎も主としている。
また、前足や僅かながらに見える胴体から厚みが感じられるので体つきの細長い成分は払拭されていると思われる。(男性三人寄りかかってますしね)

室町時代

この時代から絵画点数が増えてきます。
ですが、日本画の紹介の前に先に見ておきたいものが宋の画僧である牧谿の虎絵だ。

写生:『龍虎図』牧谿筆 大徳寺 南宋 咸淳五年(一二六九)

日本では明治時代になるまでは大陸から絵画や毛皮を輸入して虎絵の参考としていました。
そのため室町時代以降の虎絵はその影響を色濃く残している。
中でも、牧谿の絵は影響を与えるように思える。

その上で国産一つ目、

写生:『龍虎図屏風』単庵智伝 筆 慈芳院

龍虎は日本の画題でも定番ですね。調べた限りこの時代から描かれ始めたようです。
そして京都国立博物館のブログを読んで驚き、こちらは現存する龍虎図屏風では最古のようです。
それにしてもしっぽはネズミのようにやけに細長い。写生画では伝わりづらいですか耳も外に反っている様子でした。

二つ目、

写生: 『豊干・寒山拾得図』狩野元信 伝 福岡市美術館

またもやこのメンバーです。シリアスめな豊干のと比べて虎は余裕を感じられる表情。
虎の瞳が若干横長で鹿とかヤギのよう。

三つ目、

写生:狩野松栄『涅槃図』1563年 大徳寺(京都)

筆だと進まないのでここからはボールペンで。
四睡図につづく仏教絵画。お釈迦様の入滅の様を描いているわけですが本記事ではメインの人たちでなく周りの動物に注目。
ちなみに涅槃図で動物をあしらうのは日本だけのようです。
参考書籍の画像ではお顔の詳細が確認できなかったのであしからず。
それにしても人間で言うところのかかと部分が黒ずんでいたのは何故だろう。

桃山時代

写生:狩野山楽『龍虎図屏風』17世紀初 妙心寺

松栄に続いてまた狩野派で。
この時代からデザインに個性が出てきました。牧谿の虎顔ではなく、瞳が猫のように縦長くなりました。松信に続いて肩甲骨あたりの盛り上がり具合が筋肉質。
キトラ古墳ぶり、大口開けて牙剥き出し。非常に迫力を感じる。
余談ですが、豹がセットでいるのは虎柄が雄、豹柄が雌と捉えられていたからだそうです。

私の中のイケトラランキングで上位に食い込んでくる迫力とかっこよさ。トーハクのブログでもベタ褒めでした。

写生:長谷川等伯『龍虎図』1606年 ボストン美術館

こちらは牧谿の特徴を受け継いでいる様子。ただそれと比べるとずんぐりしており姿勢もクマに近い印象。本州に居る最大の肉食獣(正しくは雑食)はツキノワグマなのでそれを参考にしたのだろうか。

江戸時代以降は後半で。
出来次第記事を更新したいと思います!

自分でやると決めておいてなんですが模写って大変ですね…
ちゃとしたもの描きあげるプロは本当に凄いです。

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