今週の一首⑥~毎日お題より~

こんにちは。今回も原稿が遅れまして大変申し訳ありません。でも仕方がなかったのです。前回の締め切りオーバーで深水さんに優しく右腕を折られたので、左手一本でこの原稿を書きあげねばならなかったのです。いやぁエンターキーが押しづらいこと押しづらいこと。おそらく次回は左腕も折られるので舌で原稿を書くのではないでしょうか(やんわり予防線を張る作戦)。

体温計わきに挟んで咳をして「こほな」とさわぐコロナのことかよ / 寺平じゅん

十一月十一日のお題「体温計」で投稿された一首。
これは穂村弘の

体温計くわえて窓に額つけ「ゆひら」とさわぐ雪のことかよ

の本歌取りでしょう。罹患しているのが新型コロナである点で、本歌にはなかった「笑えないシリアスさ」がほんのわずかに、ほんのり香る程度に配合されており、しかも当の本人が大してそれを認識していないという一種のおかしみも醸し出されています。さらに、時事的な話題を本歌取りと組み合わせているという点でもユニークであると思います。え?コロナはもう殆ど収束したから時事詠としては疑問符がつく?わかってない、わかってないよあなたは。こっちはね、毎日熱のある患者に対応すrうわなんだだれだおまえはやめろけつをさわるなひっぱるなおれをどこへつれていk、、、

ッアーーーーーーーーーーーーー!

と、ここで、「本歌取りとはどこまでをいうのか」という疑問が生じる方もいらっしゃると思います。辞書的な答えだと「有名な古歌の趣向を取り入れるため、一句もしくは二句を引き抜いて新しく歌を詠む方法」となります。さらに厳密な定義を求める方もいらっしゃると思いますが、そこをしっかり突き詰めるとなるとtwitter(Xなんて言わない)のスペース上で丸一日私と腰を据えて丁々発止のやりとりをしなければならなくなるのでここはぐっとこらえてください。

この歌の場合は「体温計」「とさわぐ○のことかよ」を引き抜いています。さらに、三句目を「咳をして」として「額つけ」のように四句へ繋いでいる点も本歌と同じです。

本歌取りで気を付けなければいけないところは「本歌と趣旨が同じであってはならない」というところであると思います。本歌とは別の味を出さないと意味がない、ということですね。趣旨が(歌のベクトルが)同じだったらその歌の価値は名歌である本歌を越えられないからです。この歌の場合前述した理由から、僅かにではありますが本歌と違う味わいを出すことに成功していると思います。パロディーに近い味わい、と言った方が腑に落ちやすいかもしれません。

寺平じゅんさんの歌は常に力が抜けていて、それでいて少し斜に構えていたり本質を鋭く抉ってきたり、ユニークな味わいを持っているものが多いと思います。私はこの味わいが大好きで、タイムラインに流れてくる寺平さんの歌で何度も笑わせていただいています。なんでしょう、共鳴するんですよ。自分の徳の低さと。かなり大雑把な物言いになりますが、寺平さんの歌の主体は、ゴミ捨て場に土鍋が捨ててあったら持ち帰って夕飯に水炊きをし、さらに「俺ってSDGsの申し子だなあ」と自惚れるような雰囲気を持っています。私もそういうタイプです。

、、、もしかして私、、、どこかで寺平さんに監視されてる??ハッ。だからあの時店員がジロジロ私を、、、ああああ思考盗聴の危険があるので今からアルミホイルを買いに行かねばなりません。今日はこのへんで失礼します。それではまた、、、

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