016 二重給付を受けられる制度の是非
仕事中にケガをした労働者は「労災保険」から給付を受けることができます。同じケガについて「健康保険」から給付を受けることはできません。これは、二重給付の調整では無くて保険事故の種類の問題です。
では、仕事中にケガをして休業し労災保険から休業補償給付を受けている人が、その休業中に別の私傷病にかかって入院したとします。この場合、健康保険から休業中の休業補償給付である「傷病手当金」を受けることができるでしょうか?
答えは、同時に受給できません。
法律には併給調整の規定はありませんが、通達で併給できないようになっているようです。
ではでは、他にもこんな併給が考えられそうな事案で、実際に併給できるものはあるのでしょうか?
はい。あります。
以下2パターン。
①「育児休業給付金」と「出産手当金」
②「育児休業給付金」と「傷病手当金」
まず①から。
第1子の育児休業中で雇用保険から育児休業給付金を受け取っていたAさんが第2子を妊娠して出産予定日の6週間前(産前休業)に入った場合、育休と産休が重複することになります。
育児休業給付金は給与の50%。
産前産後休業中に健康保険から支給される「出産手当金」は約67%。
育児休業給付金+出産手当金=50+67=117%
つまり、休んでいる方が収入が高くなります。しかも保険給付は非課税なので税金がかからず全額もらえます。
育休中の人が続けて産休に入るようなことはそれほど無いとは思いますが、育休も最大2年間延長できることを考えると、まあ~あるでしょうね。
都会に住む賢いキャリアの方々はこういうスキームを外さないでしょうね。
育休延長をするためにわざわざ倍率の高い地区への入園申込をして入園を断られるのを狙う賢い方々がいるそうです。
でも、私は許します。
次に②
こちらは、ちょっとおかしい気もします。
育休中で雇用保険から育児休業給付金を受給中のBさん。育休中にうつ病になってしまい病院へ入院。退院後も体調すぐれず通院する日々。
育休中だけど私傷病によっても労務不能。ということは、健康保険から傷病手当金は受給できるのでしょうか?
はい、受給できます。しかも育児休業給付金と同時に受給できます。
育児休業給付金+傷病手当金=50+67=117%
こちらも①と同じで、非課税扱いです。ただ、①の出産手当金と違い期間が長くなりがちです。下手をすれば(いや、上手くいけば、かな)、育児休業期間中と傷病手当期間がまるまる重なる可能性もあり、そうすれば、休業している方が所得が高くなってしまうということになってしまいます。これは、さすがにモラルハザードでは?
でも、これも私は許します。
これだけ子の出生率が低い日本で、さらには、子一人育て上げるのに数千万円もかかると言われる現代で、ちょっとぐらいいいと思いませんか?たかだか数十万円~です。
いずれ大人になった子供たちは、納税し、保険料を納付し、社会を支える一員になってくれるはずです。
そりゃ、昔はこんなに手厚い制度は子育て世帯にはありませんでした。
でも、時代は変わりました。
趣味や嗜好、考え方、暮らし方、働き方、生き方が多様化し、ある意味生きやすい時代となって、わざわざ結婚して子供を産み育てなくても自由に独身生活を楽しみながら過ごすことが容易になりました。そもそも、お見合い結婚がほとんどなくなった現代で結婚するには恋愛結婚しか無いわけで、そうなると恋愛する人の割合が限られているのに、そのうえ結婚するというのは奇跡に近いような気すらしてきます。
そんな奇跡を乗り越えて出産と育児をしてくれる方々には、相応の報酬が必要です。それが、①と②です(笑)。
だいたい、子育てにはお金で解決できない問題もたくさんあるのです。
どうか、この併給については法律や通達で制限をかけるようなことはせずに、このままそ~っとしておいてほしいものです。
こんなこというのが逆効果ですかね。
というか、子をもつ世帯は消費性向が高いのだから、そういう世帯に現金給付をしたら、そのほとんどが消費に回り、結果、経済効果が出て景気が良くなるのだから、もっとたくさん給付してもいいぐらいだと考えますがいかがなものでしょうか。
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