児虐法7条、8条1項

第7条
市町村、都道府県の設置する福祉事務所又は児童相談所が前条第一項の規定による通告を受けた場合においては、当該通告を受けた市町村、都道府県の設置する福祉事務所又は児童相談所の所長、所員その他の職員及び当該通告を仲介した児童委員は、その職務上知り得た事項であって当該通告をした者を特定させるものを漏らしてはならない。

※本条の主体は限定される。本条違反に対する罰則はないが、一定の場合、他法により処罰される可能性がある。
※同法違反者に関しては、民法上の不法行為責任が課される場合がある。過去においては、児童虐待通告を受けた児童福祉司が被通告者の家庭訪問を行った際に、通告者の氏名等が記載された手書きのメモを過って見られ、そのため被通告者が通告者宅に押し掛け抗議を行ったケースで、県が通告者に示談金を支払った例がある。

(用語)
・「当該通告をした者を特定させるもの」
→通告をした者の氏名や住所のみならず、通告のあった時間や当該虐待を目撃した場所・時間等、児童虐待をしている保護者等がその情報を知った場合に通告した者を特定し得る情報も含まれる。

・不法行為の要件等(民709条)
①被害者に損害が発生していること。
②損害と加害行為との間に相当因果関係がある。
③加害行為が加害者の故意又は過失に基づくものであること。
④加害行為が違法なものであること。
⑤加害者に責任能力があること。
以上の5つをいずれも満たすことで、不法行為責任を追及できる。債務不履行責任とは異なり、損害等の立証責任は被害者が負う。地方公務員等が不法行為責任を負うべき行為をした時は、使用者責任により公共団体も責任を負う場合がある。

(通告又は送致を受けた場合の措置)
第8条 市町村又は都道府県の設置する福祉事務所が第6条第1項の規定による通告を受けたときは、市町村又は福祉事務所の長は、必要に応じ近隣住民、学校の教職員、児童福祉施設の職員その他の者の協力を得つつ、当該児童との面会その他の当該児童の安全の確認を行うための措置を講ずるとともに、必要に応じ次に掲げる措置を採るものとする。
→通告を受けると、速やかに子どもとの面会等安全確認の措置をとる。「子ども虐待対応手引き」では、直接目視することを基本とする。児童相談所運営指針では、48時間以内にこの措置をとることが望ましいとされている。

一 児童福祉法第25条の7第1項第1号若しくは第2項第1号又は第25条の8第1号の規定により当該児童を児童相談所に送致すること。

二 当該児童のうち次条第1項の規定による出頭の求め及び調査若しくは質問、第9条第1項の規定による立入り及び調査若しくは質問又は児童福祉法33条第1項若しくは第2項の規定による一時保護の実施が適当であると認めるものを都道府県知事又は児童相談所長へ通知すること。

2 児童相談所が第6条第1項の規定による通告又は児童福祉法第25条の7第1項第1号若しくは第2項第1号若しくは第25条の8第1号の規定による送致を受けたときは、児童相談所長は、必要に応じ近隣住民、学校の教職員、児童福祉施設の職員その他の者の協力を得つつ、当該児童との面会その他の当該児童の安全の確認を行うための措置を講ずるとともに、必要に応じ次に掲げる措置を採るものとする。

一 児童福祉法第33条第1項の規定により当該児童の一時保護を行い、又は適当な者に委託して、当該一時保護を行わせること。

二 児童福祉法第26条第1項第3号の規定により当該児童のうち第6条第1項の規定による通告を受けたものを市町村に送致すること。
→適切な機関に対しての通所等による指導。専門的な知識等を要しない支援を行うことを要すると認める者の市町村送致。専門性の高い支援は都道府県が、そうでない支援は市町村が行うための住み分けのための規定。

三 当該児童のうち児童福祉法第25条の8第3号に規定する保育の利用等(以下この号において「保育の利用等」という。)が適当であると認めるものをその保育の利用等に係る都道府県又は市町村の長へ報告し、又は通知すること。

四 当該児童のうち児童福祉法第六条の三第二項に規定する放課後児童健全育成事業、同条第三項に規定する子育て短期支援事業、同条第五項に規定する養育支援訪問事業、同条第六項に規定する地域子育て支援拠点事業、同条第十四項に規定する子育て援助活動支援事業、子ども・子育て支援法(平成二十四年法律第六十五号)第五十九条第一号に掲げる事業その他市町村が実施する児童の健全な育成に資する事業の実施が適当であると認めるものをその事業の実施に係る市町村の長へ通知すること。

3 前二項の児童の安全の確認を行うための措置、市町村若しくは児童相談所への送致又は一時保護を行う者は、速やかにこれを行うものとする。

(メモ)
児童相談所運営指針より、安全確認に関しては、48時間以内が望ましいとされている。又、安全確認は子どもを直接目視することが基本とされている。

(参考法令)
児童福祉法第25条の7第1項第1号
(市町村による通告児童等の送致)
第27条の措置を要すると認める者並びに医学的、心理学的、教育学的、社会学的及び精神保健上の判定を要すると認める者は、これを児童相談所に送致すること。
→第27条の措置とは、1号、2号、3号措置
※同条の第2項第1号、第25条の8第1号は第25条の7第1項第1号と同様の規定。第25条の8第1号は、主体を福祉事務所長とする。

児童福祉法33条第1項
児童相談所長は、必要があると認めるときは、第二十六条第一項の措置を採るに至るまで、児童の安全を迅速に確保し適切な保護を図るため、又は児童の心身の状況、その置かれている環境その他の状況を把握するため、児童の一時保護を行い、又は適当な者に委託して、当該一時保護を行わせることができる。
同条第2項
都道府県知事は、必要があると認めるときは、第二十七条第一項又は第二項の措置(第二十八条第四項の規定による勧告を受けて採る指導措置を除く。)を採るに至るまで、児童の安全を迅速に確保し適切な保護を図るため、又は児童の心身の状況、その置かれている環境その他の状況を把握するため、児童相談所長をして、児童の一時保護を行わせ、又は適当な者に当該一時保護を行うことを委託させることができる。
送致・・・児童の身柄を引き渡すこと。
通告・・・身柄を引き渡さず、情報を伝えること。

(児童相談所長が採るべき措置)
第26条第1項の措置
①1号、2号、3号措置を要する者の知事への報告。
②適切な機関に対しての通所等による指導。
例)児童相談所、児童家庭支援センター、児童福祉司・児童委員指導、一般相談支援事業者 等
③福祉に関する情報提供、調査・指導・支援を要す る者の市町村送致。
④知的障害者福祉司又は社会福祉主事による指導。
⑤保育の必要が認められる者を市町村長へ報告。
⑥児童自立生活援助が必要な者を知事へ報告。
⑦障害福祉サービスの提供が必要な者を市町村長へ報告。
⑧子ども子育て支援法により実施する事業での支援が必要な者を市町村長へ報告。

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