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1996年5月4日(土)《BN》

【道:前田 法重・佐々木 雅美・原田 公司・富田 剛・中尾 智史・本田 仁】
「あ、忘れてましたが湯布院に行ったのでお土産買ってきました」
 こう言いながら富田 剛は持参したバッグの中から菓子箱を取り出した。ここは居酒屋『道』。ゴールデンウィーク真っ最中だからなのか客足は少なめで、店内は落ち着いた雰囲気が漂っている。だがいつもと変わらず前田 法重メンバー達は当たり前のように集まって飲み会を行っている。昨日まで湯布院に旅行に行っていた富田は、今日の飲み会のことももちろん視野に入れていたので、きちんとお土産を買ってきていたのである。包装を外して箱を開けると、中には可愛らしいせんべいが並んでいた。
「ぽこあぽこっていうせんべいです。取り合えず自分が甘いもの苦手なのでせんべいにしました」
 お土産というのは本来渡す相手が喜ぶかどうかを考えてから購入するものであろうが、そんなことはお構いなしに富田は自分の好みでお土産を購入したようである。そのことがあまりにも予想通りで全員が苦笑しているが、それよりもわざわざお土産を買ってきたということに非常に違和感を感じている。
「わざわざありがとう。せっかくだからいただくことにするよ」
 こう言って前田が手を出してきたので、富田はせんべいを1枚取り出して手渡す。そしてその流れで佐々木 雅美、原田 公司、中尾 智史、本田 仁にも1枚ずつ手渡した。
「あ、なかなかうまい」
「ほんのり甘いですよね」
 一口食べた感想を前田が述べ、それに佐々木も味わいながら言葉を発した。せんべいとはいうが、いわゆる醤油味の頑固焼きみたいなものではなく、胡麻ベースのやさしい甘さのものである。全員がなかなかの好印象だったことに満足し、富田も1枚口に運び、そのおいしさに舌鼓を打つのであった。

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