見出し画像

2024年7月26日(金)《GB》

《晩酌はやめましたが、やめる前は仕事が遅いので晩飯と一緒でした。食って飲んで寝落ちは体に悪い》
【魔術師研究所:谷口 竜一・川島 くるみ・清水 弥生・白濱 貴浩】
「じゃあ引き継ぎ内容はこれぐらいで大丈夫かな」
「不安しかないです」
 膨大な量の資料やデータを丁寧に説明し続けていた清水 弥生が漏らした言葉を聞いて、川島 くるみは引きつった笑顔で返事を返した。ここは魔術師研究所白濱研究室。家庭の事情により今月で退所する清水の業務を川島が引き継いでいる最中である。この研究所は迷宮内の現象、特に魔術師や僧侶の魔法について研究が行われているところであり、中級魔法や上級魔法の研究では白濱 貴浩がその道のフロンティア的人材であった。ただ、魔術現象等については後輩の研究者に引き継いでおり、現在は今後の迷宮探索事業の予測と、第2迷宮探索終了時に見つかった謎の文書についての研究を行っている。ところで、これまで何度か業務の引き継ぎにここを訪れていた川島だったが、ついに本日清水が最終出勤日となるので、次からは白濱の補佐業務を自分が行わないと行けなくなる。実はまだ白濱とは軽く挨拶をしたぐらいの間柄であり、寡黙な雰囲気も相まって、業務そのものよりも白濱と上手くやっていけるかという点に心配を感じている。
「あのー、弥生さん。白濱さんってどんな方ですか?」
 業務的な引き継ぎが終わったとのことなので、気になっていることを尋ねてみる。
「え?どんな方、普通の方ですよ。普通の研究者って感じ。研究以外のことにはあまり興味がないので、仕事以外のことを話すことはあまり無いわ」
 思考の表情を浮かべながら清水が返事を返す。今まで結構長く一緒に働いてきたが、特に気にしたことがなかったので、改めて聞かれてどうなのかを考えてみたのである。
「そうなんですね。わかりました」
 とりあえず一緒に仕事をするのにやりにくい相手ではなさそうなので、少し安心した川島はホッとしながら返事を返した。ちなみに現在白濱は隣の部屋で何やら谷口 竜一と話をしているようであり、漏れ聞こえるところによると晩酌のつまみの話をしているようである。谷口は夕食と晩酌が一緒なので、夕食自体がつまみとなり、白濱は夕食とは別にしているので漬物などの軽い物で済ませているらしい。正直どうでも良い情報である。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?