2024年10月2日(水)《GB》
《さて71期試験の開始です。一般的に奇数期はレベルが低いのですがどうでしょう。まだ未知数。》
【冒険者組織運動場:夕陽 茜・楠本 千佐・楠本 静加】
「体力測定なんて久しぶりだな」
運動場に向かって歩きながら夕陽 茜は思わず言葉を漏らした。ここは冒険者組織北地区。運動着に着替えた受験生たちが運動場へと歩いて向かっている。本日から71期生の2次試験が行われており、1次試験を突破した30名は朝から採用試験館に集合している。そして先程まで全体オリエンテーションと、各職種に分かれた説明会が行われていた。この説明会はスケジュール通りに終了し、その後は体力検査が行われることになっている。そして、これが終われば採用試験の初日は終了となる予定だ。夕陽も朝から全体と魔術師の説明会に参加し、現在は運動着に着替えて運動場に向かっているところである。
「あのー、すいません」
後方から何か細い女性の声が聞こえてくるが、声をかけられているのは自分ではないと判断した夕陽はそのまま気にせず歩みを進める。するとしばらくして再度声が聞こえてきた。
「あのー、すいません」
どうやら自分に声を掛けられているようだと感じた夕陽は後ろを振り返ってみる。するとそこにはすごくおどおどした2人の女性がいて、こちらをじっと見つめてきている。見ればメガネをかけている2人の顔は全くと言っていいほど同じで有り、おそらく双子なのではないかと推測する。
「はい、何でしょう」
声かけに対してとりあえず返事を返す。すると、その女性の1人が意を決して言葉を発した。
「あの、お友達になってください」
いきなりこんなことを言われた夕陽は驚きの表情を浮かべる。今後冒険者として活動するためには人間関係も必要なので、友達になるのはやぶさかではないが、なぜいきなり自分なのかとの疑問は湧く。
「あ、はい。別に良いですよ。私は魔術師受験生の夕陽 茜です」
こう言いながら右手を前に出す。すると2人は嬉しい表情を浮かべながらお互いに見つめあっている。そして次の瞬間、片方の女性が夕陽の手を両手で握り閉めた後で話し始める。
「私は楠本 千佐です罠解除士受験です。そして妹が楠本 静加と言います。僧侶受験です。宜しくお願いします」
こう話した後で2人はペコリと頭を下げる。その時気づいたのであるが2人の背中に何かが存在している。
「もしかして、何かいる?」
この言葉を聞いて楠本姉妹は笑顔を浮かべ、そして千佐が言葉を発した。
「私たち、お仲間さんみたいです」
こう言った後で千紗と静加はその場にしゃがみ込み、夕陽の足下にいる狼に向けて笑顔を浮かべたのであった。
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