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1998年6月30日(火)

【戦士鍛錬場:宮崎 桃・福永 菜月】
「お疲れ様でしたー」
「お疲れー。はあ」
 模擬戦を終了し、宮崎 桃と福永 菜月はお互いに礼を行った。ここは午前中の戦士鍛錬場。本日もたくさんの戦士が鍛錬を行っている。先程から模擬戦を行っていた宮崎と福永であるが、模擬戦を終了し、休憩することにする。一緒にベンチまで向かい、座って休憩しつつ水分を摂ることにした。
「それにしても桃は相手するたびに強くなるわね」
「いやー、やっと菜月さんを少し本気にさせれる様になりましたよ」
 声をかけた福永は宮崎の言葉を聞いて、少しため息をつく。一緒に13期で冒険者になり、これまでたくさんの模擬戦をこなしてきた。実力的にはその当時から宮崎の方が上だったが、宮崎のちょこまかとした手数の多い戦術は福永の相手の動きを読む冷静な戦術とは相性が悪く、直接対決では福永がやや優勢だったのである。とはいえ、全体的な評価では福永よりも宮崎が上だったのは間違いない。
「本気というより、結構限界なのよね。そろそろ考えないといけないかなあ」
「えー、菜月さん。何言ってるんですかー」
 ふと口に出た言葉を聞いて宮崎が即時に突っ込みを入れる。13期で戦士になった時に宮崎は19歳。福永は28歳であった。それから3年が経ち、宮崎は22歳。今からまだまだ成長が見込める年齢である。しかし福永は31歳になっている。見た目は反則的に幼いので、宮崎と並んでいると同級生と間違われるほどであるが、明らかに体力的な成長は望むべくもなく、これ以上強くなると言うのは考え憎いのである。
「まだまだ菜月さん若いですよ。行けます行けます。さあ、鍛錬しましょう」
 そう言って宮崎は福永がの手を引いて模擬戦の場所へと向かう。やれやれという表情を浮かべて一緒に歩いていく福永だが、本心を言えばもう少し休憩がしたいと考えていた。元気いっぱいの宮崎と違い、自分はまだ少し回復ができていないのだ。ただ、戦士を続けるのであれば、自分を鍛え続けないといけない。そう考えた福永は息を整え、宮崎との模擬戦に集中した。

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