見出し画像

2024年3月23日(土)《GB》

《一緒に冒険者になろうよ〜!って誘ってたのに歯牙にも掛けなかった人がいきなり申し込んでると驚く》
【ゆめタウン光の森:富田 水無・有村 藤花】
「別に返すの大学始まってからでも良かったのに」
「いやいや、すごく面白かったからいろいろ話がしたかったのー」
 軽く笑顔を浮かべた有村 藤花の声に、富田 水無は満面の笑顔を浮かべて答えた。ここはゆめタウン光の森内にある喫茶店『ティーアンドベイク』。若い女性や貴賓のあるマダムなどがたくさん訪れて、午後のティータイムを楽しんでいる。本日富田は大学に少し用事があり、武蔵ヶ丘まで来ないといけなかった。そこでついでと言ってはあれだが、以前借りていてちょうど昨日読み終わってた本を返そうと思ったのである。そこで借主である有村に連絡をすると、特に予定があるわけではないということだったので、『ゆめタウン』に呼び出したのである。ちなみに富田と有村は文学部史学科のクラスメートであり、今年から入る研究室も同じ東洋史学科になることが決まっている。
「それにしてもすごく面白かった。藤花から借りる本は全部面白い」
「そう言ってもらうと貸甲斐があるわね。まあお互い東洋史研究室選ぶぐらいだし、センスが似てるのかもね」
 ケーキを一切れ口に運んで、満面の笑顔を浮かべながら発した富田の言葉を聞いて、有村は冷静に言葉を返して紅茶を口に運ぶ。相変わらずここで飲む紅茶は美味しく、ほっこりとした気持ちになる。この後も、富田がテンション高く貸した本についていろいろと話をしているが、ふと思いついたことがあり、有村が口を開く。
「水無。そういえば、新学期始まってからでも良いやと思って言ってないことが一つあるんだけど」
「えー、何?何かまた面白い本見つけた?」
 何気なく発言した有村の言葉を聞いて、目を輝かせながら富田は返事を返す。何か変な期待を持たせたことに少し引け目を感じながらも有村が口を開く。
「私、70期冒険者申し込んだから」
「あ、そうなんだーってえーーーーーー!!!!!」
 面白い本の話題ではないことはすぐに理解出来た富田は一旦軽く返事を返したが、その内容を理解した直後、店内に響き渡るような叫び声を上げたのであった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?