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1998年6月27日(土)

【道:前田 法重・前田 雅美・中島 一州・原田 公司・大塚 仁・中尾 智史・本田 仁】
「あの音はわかりやすいよな」
「バレバレっすね」
 笑顔を浮かべて言葉を発した前田 法重のコップにビールを注ぎながら本田 仁が答えた。ここは居酒屋『道』。本日も美味しい料理とお酒を求めて客がやってきている。先程までは満席でてんやわんやだった店内も今は少し落ち着いてきたので、おばちゃんも少しゆっくり出来ているようである。そこで、店を手伝っている前田 雅美はしばらく座敷に座って一緒に話を楽しんでいるのだ。
「リプレイだから揃う回数も多いですからね」
「ボーナスの音楽とかだとタイミングによるしね」
 ジャン玉を一切れつまみながら本田が言葉を続けて、それに中島 一州が感想を述べる。本日元々は予定があった前田だが、その予定がなくなったので、本田の携帯電話に連絡をしてみる。すると本田は出なかったが、すぐに折り返しがあった。そこで前田が何をしているかを尋ねると、本田は言葉を濁したが、その後ろから例の“テケレケレッテー”という潮騒のリプレイが揃う音が聞こえてきたのだ。前田は軽くため息をついて、どこで打っているのかを聞き、合流したのである。
「本田は潮騒好きやなー」
「別にそんなに好きってわけじゃないですよ。出るから打ってるだけです」
「かっけえ」
 素直な感想を原田 公司が口にし、それに本田が答え、大塚 仁が突っ込みを入れた。
「じゃあ、今日本田さんは勝ったんですね。もしかして今日は本田さんの奢りとかですか」
 期待に満ちた表情を浮かべた中尾 智史の言葉を聞いた本田は軽くため息をついて言葉を発する。
「今の話の流れだと一緒に前田さんも打ったってことになるよね。だったら勝った前田さんの奢りでしょう」
「俺勝ってねーし」
 このように突っ込んだ前田は目の前のコップのビールを空にし、立ち上がってトイレへと向かった。この後、結構遅くまで飲み会を続けたが、結局この日もいつものようにいつものような感じで勘定をしたのである。

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