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2024年5月11日(土)《GB》

《はるか昔に少しだけ喫茶店のマスターに憧れたことがあったなあ。憧れただけで何もしてませんが》
【AXIS:有村 藤花・結城 香純・富田 水無】

「あ、香純ちゃんいらっしゃい」
「えと、こんにちはです」
 店に入った瞬間、店内に響く富田 水無の声を聞いて、結城はぺこりと頭を下げて返事を返した。ここはゲーム&喫茶『AXIS』喫茶部。お昼を少し過ぎた時間であり、土曜日ということもあって、店内は落ち着いた雰囲気である。冒険者70期試験は昨日で2次試験が終了し、結果は月曜日の発表を待つだけとなっている。だが、結城は僧侶の中で1番目に課題をクリアしているので、合格しないとは考え辛く、おそらく合格は間違いないであろう。一応そのことを伝えるのと、ついでに昼食を食べようと思い、『AXIS』にやってきたのである。
「水無知り合い?見たことはある気がするんだけどなあ」
 店に入ってきた結城を見つめながら有村 藤花が口を開く。有村と結城は同じ熊大生であるが、学部も学年も違うので接点はなく、冒険者としても職業が違うので、全体説明会の時になんとなく見たかもしれないレベルなのである。
「そうなのよ。席一緒に良い?」
「あ、別に良いよ」
 まだ席に座る前だった結城を同じテーブルに呼んだ後、富田と有村が並んで座り、反対側に結城を座らせた。ちなみに富田は現在は店を手伝っているわけではなく、ただの客としてここにいる。
「紹介するね。私の友人で有村 藤花さん。今回の試験で罠解除士受けてるわよ。そしてこちらが結城 香純ちゃん。教育学部の1年生で今回僧侶を受けてます」
「あ、やっぱり冒険者だったんだ。結城さんって聞いたことある」
「私も有村さんの名前は聞いたことあります」
 丁寧に紹介した富田の言葉を聞いて、まず有村が言葉を漏らし、それに結城も続けた。冒険者試験では誰かが課題をクリアした時は職業関係なく情報が共有されるので2人ともお互いの名前は聞いたことがある。ただ、実際にきちんと会ったのは今が初めてだ。
「有村です。文学部の2年生です。よろしく」
「結城です。こちらこそよろしくお願いします」
 右手を出した有村であったが、すごく恐縮した結城がその右手を両手で握り、ブンブンし出したので思わず笑ってしまう。それを見て、富田も笑い出し、結城も乾いた笑い声を上げた。この後、しばらく一緒に過ごす中で、合格後の部隊編成の話になり、良かったら一緒の部隊になりましょうという話で盛り上がったのである。

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